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丸の内コンフィデンシャル〈財界インサイドレポート〉

日本の経済の中心地、東京・丸の内。敏腕経済記者たちが“マル秘”財界情報を覆面で執筆する。

★白馬の騎士が現れても

ネット金融大手のSBIホールディングス(HD、北尾吉孝社長)から事前協議なしで一方的にTOB(株式公開買い付け)を仕掛けられた新生銀行(工藤英之社長)。SBI以外の株主に新株を無償配布してSBIの影響力を殺ぐ「有事型」と呼ばれる買収防衛策の導入を決議するなど抵抗戦に打って出た。

ただ防衛策発動には11月にも開催される臨時株主総会での過半数の賛同が必要となる。TOB開始時点でSBIはすでに新生銀株の約2割を握る大株主。21.79%を保有する国は議決権行使を見送る公算が大きく、そうなると自ずとSBIの比重が増して防衛策可決は怪しくなる。SBIを完全に撃退するにはSBIに代わる友好的スポンサー(ホワイトナイト)を見つけ出せるかどうかが鍵だ。

すでに今年6月頃から「白馬の騎士」探しを模索してきたのは、定時株主総会でSBI側が工藤社長ら4人の取締役選任議案に反対票を投じるなど、SBIとの関係がさらに悪化したためだ。

新生銀がまず白羽の矢を立てたのはソニーグループ(吉田憲一郎CEO)とセブン&アイ・HD(井阪隆一社長)。とりわけソニーはリーガルリスクからスルガ銀行買収を断念した直後だっただけに「一時は乗り気だった」(事情通)という。ただ両者ともにネックとなったのが「エル」ブランドで新生銀が展開する消費者金融事業。うっかり“サラ金”などに手を出せば自社ブランドが崩壊しかねないというわけだろう。

そんななかメガバンク関係者らの間で新たな「白馬の騎士」候補と目されているのがイオン(岡田元也会長)とオリックス(井上亮CEO)。ともに傘下に銀行をはじめカードや小口金融などの事業を抱え「新生銀との親和性が高い」(三菱UFJ銀行幹部)からだ。新生銀傘下にはオリックスの祖業であるリース事業を手掛ける中堅リース会社、昭和リースもある。

もっともどこが白馬の騎士になろうとも手を焼くとみられるのが新生銀の抱え込んでいる公的資金の返済問題。一部は6年に自力返済したものの、なお3490億円が残る。SBIは最終的に新生銀を非上場化したうえで国保有株を買い取る腹案を描いているとされるが、「コストがかさむ」(金融筋)との見方も。TOBの行方とともに先行きは不透明だ。

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★白熱する首位争い

中国の不動産大手、恒大集団の経営危機で動揺を見せた東京株式市場で脱炭素関連銘柄に注目が集まり、三菱商事(垣内威彦社長)が久々に浮上した。

三菱商事は9月、米アマゾン・ドット・コム(アンディ・ジャシー新CEO)と組んで太陽光発電の調達網を構築すると発表。またカナダで燃料用アンモニアの生産について英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(バンブルーデンCEO)と提携することで合意していた。

三菱商事だけでなく、大手商社の業績は資源高を追い風に過去最高水準で推移している。2021年4~6月期の連結最終利益は、伊藤忠(岡藤正広CEO)、三井物産(堀健一社長)、丸紅(柿木真澄社長)、住友商事(兵頭誠之社長CEO)の4社が四半期ベースで最高を更新した。

なかでも三井物産は、22年3月期の最終損益を4600億円の黒字から6400億円に上方修正。6000億円を突破すれば商社業界で初となる。これまでの最高額は三菱商事が19年3月期に叩き出した5907億円だ。

伊藤忠は5500億円と期初予想を据え置いたが、6000億円を見据えている。

三井物産、伊藤忠、三菱商事が三つ巴で6000億円の大台で最終利益を競い合うという構図が予想される。商社リーグの利益のトップ争いは熱を帯びてきた。

株価トップを走る三菱商事は22年春には垣内社長が交代する。ポスト垣内は中西勝也常務執行役員電力ソリューショングループCEOが本命で、竹内修身常務執行役員石油・化学ソリューショングループCEO、戸出巌常務執行役員自動車・モビリティグループCEOと続く。

「中西クンで決まりだろう」(三菱グループの最高首脳)との下馬評が聞こえてくるが、中西氏の本命視は、やはり脱炭素が守備範囲だからだ。

★波乱含みのガチンコ勝負

大阪・兵庫を地盤とする関西スーパーマーケット(福谷耕治社長)の買収劇は、阪急阪神百貨店などを運営するエイチ・ツー・オー(H2O、荒木直也社長)と首都圏のディスカウントスーパー、オーケー(二宮涼太郎社長)のガチンコ勝負に発展した。

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