福田達夫・武部新「魔の三回生」決起す
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福田達夫・武部新「魔の三回生」決起す

「党風一新の会」は選挙目あてじゃない。いまここで「悪名」を返上する。/福田達夫(自民党・衆議院議員)×武部新(自民党・衆議院議員)

自民党の現状に対する危機感

――岸田文雄氏が自由民主党の総裁戦を制し、この記事が出る頃には首相に就任しています。この総裁選へ大きな影響を与えたのが、当選3回以下の議員90名の「党風一新の会」です。まず、結成の動機について代表世話人である福田達夫さん、副代表の武部あらたさんに伺いたい。

福田 大きな動機は、やはり自民党の現状に対する危機感です。発表した趣意書にもありますが、地元でも、政権奪還から9年、政権運営が強引ではないか、国民の意識から離れた言動が散見される、などの批判が多くなった。総裁選の前に、数十人の議員とお話をしましたが、皆さん、「自民党はどうなっているんだ」「我々の声をちゃんと上に伝えているのか」という厳しいご指摘を、有権者から頂いていました。

武部 僕らは国対副委員長なので国会の閉会中も何度か顔を合わせていたのですが、そのたびに「いまの状況はキツいね」と。これは選挙がキツいという意味ではなく、事実の一部だけを切り取られた報道もあり、総理や党幹部の説明や話し方がよくないとか単純な理由で、私たちが一票一票、積み上げていった自民党への信頼感が崩れているのがキツい。皆、そう感じていました。

私たち中堅若手への不信感も感じました。「上の人に従っているだけなんだろ」などと、地元で言われてしまうわけです。

福田 そうした危機意識を共有する17人が8月26日に議員会館内で顔を合わせたのですが、最初から党の課題や政治改革など、私が以前から問題意識を抱いていた点について深い議論になりました。

正直に言うと、この日は党総裁選や衆院選が中心の近視眼的な話に留まると思っていましたが、ここまで質の高い議論ができるのなら、まとまって行動を起こしたほうがいい。そう思って会を結成しました。

福田氏

福田達夫(54歳)
祖父は元首相・福田赳夫、父も 元首相の福田康夫。2004年に11年勤務していた三菱商事を辞め、内閣官房長官だった父の秘書に。07年、福田康夫首相の誕生に伴い総理大臣秘書官。12年、康夫氏の後を継いで初当選。清和政策研究会(細田派)所属。

武部氏

武部新(51歳)
父は小泉政権で農水大臣、自民党幹事長を務めた武部勤。日本興業銀行を経て03年から父の秘書に。12年、勤氏の後を継いで初当選。志帥会(二階派)所属。

「魔の3回生」にも言わせろ

――お二人とも2012年の衆院選初当選組です。この代は、政権奪還の勢いに乗って自民党新人が大量当選したものの、不祥事が相次いだ「魔の3回生」と呼ばれています。

福田 「悪名は無名に勝る」と言われますが、その名前には本当に迷惑しています(笑)。

武部 地元の会合で「魔の3回生の武部新です」と、自虐ネタを口にしたこともありますよ(笑)。率直に言えば、当選同期は当初、119人いましたから、それだけ多いと色んな方がいます。でも残っている3回生79人は、我々が屋台骨とならなければコロナという国難を乗り越えられない、という意識がある。

福田 あまり知られていないかもしれませんが、3回生には優秀な人材が少なくないと思います。多くが政治以外の分野で10年ほどメシを食っているので、世間の常識も身についているし、専門性も高い。政権を奪われた2009年の選挙を経験している人もいます。あのときは「私は自民党です」と言えば、石を投げられるどころの騒ぎじゃなかった。その中で自民党候補として活動して、12年に2回目の選挙で当選した人たちははらがすわっています。

しかし、そうした有能な仲間が厳しい選挙区で当落線上にいるのに、「何人かは討ち死にしても仕方がない」との上層部の声を耳にして、きちんと一人一人を見ていないじゃないか、なにくそ、という悔しさも、会を結成した動機です。

武部 我われ3回生が一番、働いているという自負はあります。世代的に自民党の部会などの事務局長やプロジェクトチームの座長という立場になることが多いのです。党内の意見を取りまとめ、役所と折衝して……と、政策立案や、法案化をやらせてもらっています。でも先ほども言ったように、そうした活動は有権者やマスコミから見えない。

福田 政治と国民の関係をどう作っていくのかは大きな課題です。この会を、若手が情報発信できて、その構想を実現できるプラットフォームにしたい。「魔の3回生」という悪名をひっくり返したいですね。

――この会は、選挙に弱い若手が人気のある総裁を選ぶために集まったという見方がありますね。

福田 支持率が落ちたから総理を引きずり下ろすといった、みっともないことはしたくないですね。こっちは父のときに、それをされた方ですから。

武部 そこは一致していました。

福田 選挙に弱い人が集まって騒いでいると言わせたくなかったので、最初の意見交換には、前の選挙で比例ではなく選挙区で勝った選挙に強い議員を中心に声をかけました。

リーダーに求められるものは

――地元で聞く声はコロナ対策の不満が中心でしょうか。

武部 対策への具体的な不満というより、党の信頼性が問われていると感じます。緊急事態宣言が発令されて、解除されて、また発令という状況が続くと、「いつまでこんなこと繰り返すの」という不安と不満が生まれ、説明を求めて、その矛先が政府・自民党へ向かっている。

福田 こうした危機の時は政府として見通しを示すべきです。国会の委員会で政府に見通しを直接、質問してもお答えはないし、政府関係者と話をしても「見通しは難しいですよ」と。そりゃ、そうでしょう。世界中の誰も分からない中で試行錯誤しているのですから。

でも政府が分からないのなら、地方の経営者はもっと分からない。やはりリーダーが蛮勇をふるって、ワクチン接種が完了する時期や特効薬の実用化の目処めどなど、先行きを示さなければいけなかった。

ただ、政府が予測を誤ったとしても、与野党とも責めないという意識は共有しないといけませんが。

危機の時に大事なのはリーダーがメンバーを元気づけることです。「山があと3つ来るけど、一緒に越えよう。その先にはこういう希望があるから」と。もっと明るい言葉が必要だったのではないでしょうか。

――リーダーといえば、福田さんが会の代表になったのは、やはり人望があったからでしょうか。

福田 あるかね、そんなもの。

武部 あることにしておこうよ(笑)。真面目に言えば、やはりそうした空気は自然とありました。これまでも自民党では金権スキャンダルや政策への不信感などで党の支持が失われていったとき、若手が声をあげてきた歴史があります。遠くさかのぼれば福田赳夫先生が設立した党風刷新連盟もそう。

そうした歴史を知る私たちにしてみれば、今が声をあげるタイミングだと皮膚感覚で分かっていたけど、誰が声をあげても「応!」というわけではない。やはり福田さんが勇気を持って声をあげてくれたから、みんなが集まったのだと思います。

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福田赳夫

派閥をアップデートしたい

――「党風一新の会」は、総裁選を派閥一任ではなく、自主投票にせよと主張して流れを変えました。会として誰かを応援すれば、総裁選を左右できたのではないでしょうか。

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