28枚の小室文書が晒した「眞子さまの危うさ」
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28枚の小室文書が晒した「眞子さまの危うさ」

小室さんの「勘違い」が令和皇室にもたらすものとは?

▼座談会出席者
江森敬治(毎日新聞編集委員)
片山杜秀(慶應義塾大学教授)
河西秀哉(名古屋大学准教授)
山口真由(信州大学特任教授・法学博士)

<summary>
▶︎
要するに、小室さんが公表した文書は「国民に向けての文章」ではない。国民にわかってもらおうとする文書ではない
▶︎小室さんの考える法律論と、日本社会に根づくより広義の“貸し借り”の感覚に決定的なズレがある
▶︎眞子さまが小室さんと結婚すれば、お二人はいずれ天皇の姉と義兄になりますから、どうしたって注目され続けます。象徴天皇制がこれからどうあるべきか、国民と皇室でもっとキャッチボールすることが必要

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(左から)江森氏、片山氏、河西氏、山口氏

「国民に向けての文章」ではない

江森 秋篠宮さまは昨年11月の誕生日会見で小室圭さんに対し、小室家が抱える金銭トラブルについて、「対応が目に見える形になる」ことを求めました。今回、小室さんが公表した28枚にわたる説明文書はその回答と言えるものです。

河西 私は、こんな論文調の文書が出てくるとは夢にも思いませんでしたね。正直な感想を言うと、学生の出来の悪いレポートを読まされた印象があります。私は象徴天皇制の研究をしているので、皇族が書かれた文章や記者会見の文章を読みますけれど、それに比べると「うーむ」という感じ。本文の前に「概要」が4ページもあってけっこう長い(笑)。もう、そこで挫折しそうになりました。さらに脚注が13ページもあるから、とにかく読みづらい。

片山 裁判の上申書のような印象ですね。私は思想史の研究をしていて裁判記録をよく読むんですが、この文書はそれによく似ている。

山口 私もそういえば、法律家の卵だった時に、背伸びしてこういう文章を書いたことがありました(笑)。一流の法律家を目指すなら、全体のストーリーや言い回しを含めて、改善の余地はありますが。

江森 大切なのは中身です。文書には、「私と眞子様の気持ち、そして結婚に対する思いに変わりはありません」とあります。しかし、残念ながら、文書公表後、世間の祝福ムードは高まっていません。

河西 要するに、これは「国民に向けての文章」ではないんですよ。国民にわかってもらおうとする文書ではない。

片山 この文書をステップにして金銭トラブルを解決したい、そして秋篠宮さまや宮内庁に結婚を認めてもらいたいというのがある。だから言質を取られない形で最大限弁明し、何もツッコまれない内容にしておきたい。何かを「伝える」文章ではなく、「守り」の文章だと。叩かれることを恐れている人間だったら、私でも同じように書くかもしれない。あまり好きな文章ではないですけど。

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秋篠宮ご夫妻

決定的な価値観のズレ

江森 経緯を振り返ると、眞子さまと小室圭さんの婚約が内定したのは2017年9月です。同年末に小室さんの母親と元婚約者の間に約400万円の金銭トラブルがあったと報じられました。秋篠宮さまは、2018年11月の誕生日会見で、「多くの人が納得し、喜んでくれる状況」にならなければ、婚約にあたる「納采の儀」は行えないと話しました。つまり、秋篠宮さまは、ずっと金銭トラブルの解決を求めてきました。

河西 だからこの文書では、小室さんがこの間何もしていなかったわけではなく、いつ元婚約者の方に連絡したか、いつ話し合いの場を持ったかなどが丁寧に説明されていたので、経過はよくわかりました。

山口 今回文書を出した目的として、「金銭トラブルと言われている事柄に関する誤った情報をできる範囲で訂正する」と書かれています。私はここにまず、「アレ?」と思いました。日本の国民の多くは、眞子さまのお相手に、正しさよりも優しさを、そしてコミュニティの常識を共有していることを期待していたのだと思うんです。

それなのに、小室さんの文書は「僕は優秀なんだ、こんな反論もできるんだ」と徹頭徹尾、自分の正しさを訴えている。

片山 繰り返し「借金を踏み倒した事実はない」と訴えていますね。解決金を払ったらどうかという意見に対しても、解決金を払ってしまうと、「私や母は借金を踏み倒そうとしていた人間だったのだということになります」とかなり強い調子で反論している。「これは、将来の私の家族までもが借金を踏み倒そうとした人間の家族として見られ続けるということを意味します」というわけですが、将来の家族とは眞子さまですね。眞子さまの名誉のためにもお金を返さないと言われても……。

河西「切実に名誉の問題」とも書いています。でも、国民が知りたかったのはそこではない。少なくとも小室家が家計の苦しい時に元婚約者から400万円の提供を受けたのは事実なわけです。はじめに元婚約者の方に対する感謝の気持ちが一言でも書いてあれば、その後の説明の受け止め方も変わると思うのですが、その一言がないんです。

江森 通して読んでも、小室さんの感謝の気持ち、誠意が伝わってきません。

山口 小室さんの考える法律論と、日本社会に根づくより広義の“貸し借り”の感覚に決定的なズレがあるんだろうと思いますね。小室さんの主張を大まかに整理すると、元婚約者の方から母に対する婚約破棄は一方的なもので、母側に慰謝料請求権があるはずだ。ところが、元婚約者から「返してもらうつもりはなかった」と言われたことを以て、母はその請求権を放棄し、それと同時に、元婚約者が持っていたかもしれない金銭の返還請求権もなくなったというものです。

確かに、小室さんの主張は、法律論としてありえないではないですが、日本社会に今も残る“貸し借り”の感覚には合わないのです。苦しい状況を助けてもらった恩に対し、何らかの形で「お世話になりました」と報いるべきという感覚は、前近代的と言われながらも、広く社会に浸透しています。これまで、どうも“日本的”とされる価値観と、個人主義的な小室さんの価値観にズレがあるんじゃないかと懸念がありましたが、今回の文章でそれが決定的になった。このいかんとも埋めがたい溝について、この文書はある種の最終通告のようにも思いました。

小室さんも「もらいっぱなし」

片山 この文書で、金銭トラブルに小室さん本人が関わっていたこともはっきりしました。文書では、元婚約者の方が小室さんの母親の求めに応じて圭さんのICUの「授業料」としてお金を渡していて、小室さんもそれをもらったことを認めている。実際には、そのお金は授業料として使わずに、「すべて私の貯金と奨学金で賄っています」と否定していますけれど、つまり、母親だけでなく小室さん自身もお金をもらいっぱなしになっていることを認めているわけです。カリフォルニア大学ロサンゼルス校へ留学した際も、元婚約者から200万円を送金してもらったまま返していないことも認めている。

ここで忘れてはいけないのは、小室さんのお母さんと元婚約者の間には、「愛の問題」が当然あったはずだということです。「愛」があれば多少のお金の貸し借りもうやむやになる。でも愛がなくなれば貸し借りの問題が浮上してくる。今になって、いくら互いに「貸した」「貰った」と主張をしたところで、そこは当事者の「愛」の問題だから、真相は藪の中。誰にもわからないことに、我々がこんなにも付き合わされているのか、とふと思ってしまいました。

江森 主張を繰り返すだけでは、金銭トラブルの解決にはなかなか繋がらないと思っていました。そこへ、文書を出して4日後、今度は解決金を元婚約者に支払う意向だ、と小室さんの代理人弁護士が明らかにしました。小室さんの対応はちぐはぐな感じがします。

河西 あれ、名誉の問題はどうなったの? と思いましたね。今回の文書で私が変だと思ったのは、一昨年1月に公表した文書に触れ、「(金銭トラブルを)『解決済みの事柄であると理解してまいりました』という表現は、現在完了形ではなく過去完了形としての表現として書いたものです」と書いている箇所です。自分は解決済みの問題とは主張していないのに、世間が勝手に誤解したと主張しているんですよね。それでもう一度、前回の文書を読み返したのですが、小室さんが言う通りには読めない。ひと言、「誤解を招いてごめんなさい」と書けば良いのに、「間違っているのはあなたたちだ」と読めるような文章を書いてしまう。ここは象徴的で、小室さんは読んだ人がこぶしを挙げたくなるように書いてしまうんです。

片山 少しでも隙を見せると徹底的にやられるという過剰なまでの被害者意識を持っているのではないですか。たぶん元婚約者に対しても、そういう姿勢だから行き違いを続けてきたんだろうと思います。

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眞子さまは小室家側に立った

江森 この文書が発表された翌日、秋篠宮家を補佐する皇嗣職大夫が、眞子さまは小室さんと金銭トラブルについて話し合い、今回の文書も相談のうえで公表したと説明しました。小室さんが文書に記した「元婚約者の方とお互いの認識についてきちんと話し合い、ご理解を得たうえで解決する」という対応方針には、眞子さまの意向も反映されていたといいます。そのうえで、眞子さまは「いろいろな経緯があったことを理解してくださる方がいらっしゃればありがたい」というコメントまで発表された。

私がそれを知って感じたことは、眞子さまが小室家側に立ってしまったということです。これはすごく心配です。眞子さまは内親王という重い立場なのです。小室さんと話すよりも、まずはご自分の両親とよくよく話し合ってもらいたい。そして、内親王としてどう対応すべきかを考えなければいけません。眞子さまの対応に首をかしげざるを得ません。

河西 今のお話はすごく重要だと思います。昨年11月に出された眞子さまの文書を読んだ時にも、「眞子さま大丈夫かな」と不安に思ったんです。特に違和感を覚えたのは、「天皇皇后両陛下と上皇上皇后両陛下が私の気持ちを尊重して静かにお見守りくださっている」と書いた部分でした。まるで天皇皇后、上皇上皇后を盾にご自分の主張をしているように読めてしまう。眞子さまは結婚すれば現行の皇室典範では将来の天皇の姉であり、小室さんは天皇の義兄になるわけだから、眞子さまが小室さんに話して立場の重さを理解してもらうべきなのに、自分までもが皇室の立場を使ってしまっている。

愛の力のなせる業

山口 私たちがこの問題を危惧するのも、個人の資質だけじゃなく、皇室という家のお話が絡むからですね。私の研究分野である家族法の観点で言えば、結婚が家同士の「身分」の領域から個人同士の「契約」へと向かう流れがあります。例えば、結婚して姓が変わることは、自分の帰属先が実家から婚家に変わることを示しています。つまり、夫婦同姓は、最後に残る結婚の身分的な意義の象徴なわけです。ですから皇族だって、個人の意思のみに基づいて結婚するんだって言われると、確かに憲法にもそう書いてある。でも一つ引っかかるのは、この結婚に身分の要素はないですかというところ。眞子さまは結婚によってはじめて身分から解放され、小室さんには、本人が意図しているかは分からないですけれど、いかんともしがたいステイタスの向上が、結婚とともに付いてくる。お二人は個人としての結婚を主張するけれど、皇室という日本で最高の身分にフリーライド(ただ乗り)しているんじゃないの? というモヤモヤが残ります。

河西 2人がその点にどこまで自覚的なのかがわからない。ロミオとジュリエットみたいに燃え上がってしまって、周りが見えていないように前々から感じますね。

片山 これは結局、「愛の問題」ですよ。今は引き合う力が強くて、両親や国民、皇室関係者の意向も聞こえないから、暴走しているように見える。愛の力のなせる業です。

山口 いろいろ厳しいことも申し上げましたが「若さゆえ」とも思うのです。昔、私も別れを切り出した恋人に、12枚の手紙を書いて「別れないで」と迫ったことがあったなと思い出しました……。

片山 私は「愛」については、きっと山口さんの10分の1も経験がない(笑)。そういう人間が言うのもなんですが、好きなものはしようがない。他者の介在には限度がある。あとでダイアナ妃のように不幸になったらと心配する向きもあるかもしれないけれど、現段階では余計なお世話ではないでしょうか。

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ダイアナ妃

平成皇室の「人間らしさ」

河西 この結婚問題は2人の問題にとどまらず、皇室全体に大きな影響を与えそうなところが心配です。片山さんはどう見ていますか。

片山 戦後の皇室は「日本国民の鏡」たろうとし、皇族が如何に市民感覚をなぞれるかに比重をかけてやってきたのではないですか。そして、戦後の恋愛の一理想は、家に縛られない自由恋愛でしょう。皇族の数が少ないのと、付随する物語がかなり特異なので悪い目立ち方をしますが、基本は現代日本の恋愛の平常運転の域内をなぞる事例で、戦後の皇室のありようの想定内の出来事とも言える。国民も皇族の自由な姿を長年、望んできたのでは? 

河西 確かに近年は、皇室がますます我々に近づいてきて、国民の鏡になっているところはあります。一方で、その逆のことをしてきたのが、平成の皇室でした。例えば、上皇ご夫妻は被災地訪問を繰り返し、道徳的な姿を見せてきた。その姿を見た国民は、「政治家はだらしないけれど、皇室はなんて素晴らしいんだ」と思った。そういう意味では、平成の後半に皇室の権威が強化され、より一層国民は畏敬の念を抱きました。そこに小室さんのような人が出てきたから、「私たちと同じじゃないか」と思って反発するんですよね。

片山 平成の天皇と皇后の徳の高さは、国民と対等であろうとする人間らしさを喚起していたと思います。その生き方は戦後民主主義の理想的価値、人権や自由や家からの解放の精神ともつながっている。一般社会では親の同意なく結婚するケースはいくらでもある。いかなる愛も尊重されねばならない。戦後の皇室は「開かれた皇室」でしょう。開かれて日本国民の普通となるべく違わないように演出される皇室の姿が求められてきたと思います。国民がいまさら皇室だけは違うと思おうとしても、一種の手のひら返しのようなもので。でも、これだけ強い反発が起きるのだから、国民の願望はそちらにあるのでしょうね。

自由恋愛とはだいぶ違うかもしれないけれども、上皇ご夫妻も「軽井沢のテニスコートの恋」で結ばれ、戦後的恋愛像を演出なさった。眞子さまと小室さんもその現代的変奏でしょう。やや極端ですが。いずれにせよ、ここまで来ると、なるたけ寛容な態度でお見守りするということではないですか。そしていざというときはお救いし、お助けする。

江森 結婚は当人同士の意思を尊重すべきだという意見は分かります。しかし、眞子さまは、一般国民に比べて自由が制約され、窮屈な環境で暮らしている内親王なのです。片山先生の言葉を、内親王という重い立場の眞子さまにそのまま素直に当てはめてよいかどうか疑問です。「国民と共にある皇室」と、言われます。皇室にとって国民の敬愛と支持が何より大切なのです。多くの人が2人の結婚に不安を感じているとしたら、いろいろ考え直す必要があるのではないでしょうか。

河西 現在の皇室典範では、今後、皇位継承が秋篠宮家に移ります。平成後半の皇太子家は、雅子さまのご体調の問題や、愛子さまの不登校の問題を抱えていて、一時は廃太子と言う人がいたくらい支持を落とし、皇室全体の将来が危ぶまれました。ところが、ある時点から天皇家と秋篠宮家はシーソーのようにその評判が逆転した。それは秋篠宮さまが娘さんをコントロールできていないとか、紀子さまが側近たちに厳しいとか……ネットの反応を見ていると、「皇室は令和で終わればいい」と書き込んでいる人もいるくらい。人々の支持を失っている方に皇位の継承が移るとなると、象徴天皇制なるものの支持基盤そのものが失われる可能性があると思います。

国民にできることは

片山 結婚するのも離婚するのも人間の自由であって、あくまで当事者の問題。皇室は別という考えが先行して干渉主義的になるのはどうも現代人の態度とは思われない。「王冠を賭けた恋」のエドワード8世のような人が英国王室に出てもらっては困ると言っても、出るときは出る。日本の皇室にも自由な方は出る。

ですから、私はお二人の意思を尊重して、金銭トラブルを解決し、少しでもソフトランディングするようにしてあげるしかないと思います。問題は、それを国民がどれだけ許容し寛大に振る舞えるか否か。日本人にとって試練だと思いますよ。皇族の減少も含め、いろいろな意味で、いま、「皇室の危機」が訪れているのではないですか。

江森 いまの片山先生の意見にはちょっと異論があります。「皇室の危機」とサラッとおっしゃったのですが、私は普段、国民が皇室に対して無関心でいたことも問題なのではないか、と思うのです。

というのも私が思うに、この問題は、そもそも眞子さまが早く皇室を出たい。皇室を出て一般国民と同じ様な自由な生活がしたい、というところから出発していると思います。婚約内定会見の発言を見ると、眞子さまはすごく結婚に前のめりです。「お付き合いをする人は結婚を考えられる人でありたい」。これを聞いて、私は違和感を覚えました。何でそんなに結婚をあせらなければいけないのか。いろんな人と恋愛して、より素晴らしい相手を見つけてからでも遅くはないと思うのです。

一方で、眞子さまに私たち国民と同じような自由があるのかと思うとそうではありません。自由に恋愛することも難しいのでは。まずは、眞子さまが暮らしやすい、伸び伸びと生活できる環境を考えて差し上げることが大切ではないかと思います。

国民は皇族の方々に負担ばかり押し付けて、あとは無関心でなかったのか。「皇室の危機」と言う前に、もっともっと国民から眞子さまたちに寄り添って、彼女たちの本音に耳を傾ける努力をすべきだと思います。私たちのやるべきことは、まだたくさんあります。

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4年前の婚約内定会見

退位の意向が突きつけたもの

片山 でも、国民が何もして来なかったとは私は思わないんです。戦後の皇室は国民とともにあり、国民の側も常に皇室に関心を持って、皇室に憧れたり、何かあれば大変だと心配してきた。これからの皇室において考えなくちゃいけないことはたくさんあって、今ここまで来ている恋愛に関しては、分けて考えてもいいのではないか、ということです。

河西 お二人とも正しいと私は思うんです。日本国憲法は皇族と国民とでは完全に建てつけが違っていて、国民にはさまざまな自由が保障されていますが、皇族には職業選択の自由はないし、恋愛の自由もあるようでない。戦後70年間、この建てつけの違いは少しずつ埋められようとして来た。でも、その溝が厳然としてあることに改めて気づかされたのが、平成の天皇が退位の意向を滲ませた時でした。天皇も人間なんだと当たり前の事実を突きつけられました。眞子さまも同じことを訴えていると言えなくはない。

片山 天皇自ら「やめたい」とおっしゃったことは決定的だったと思います。年を取ると国民との相互信頼を保つためのパフォーマンス能力が保てぬから退きたいと言われたのでしょう。これは終身在位を定めた明治以降、はじめて天皇のありようを根底から覆しました。この上皇のなさりようを見て、天皇ご夫妻は「二人一緒に」という令和流を模索され、秋篠宮家では自由を巡る問題が起きている。連鎖している。

河西さんがおっしゃるように、皇族がだんだん普通の人間に近づいてくるのに対し、それを温かく迎える国民がいるという「美しいドラマ」が長く続いて来た。でも、本当に皇族が普通人になってしまったら、天皇の存在価値を巡る議論についに行き着いてしまうでしょう。「美しいドラマ」の許容度を超える現象が起き始めていることを私は「皇室の危機」と言っているのです。そこで国民の度量が試されるのです。

山口 私は昭和の終り頃に生まれて、皇族の方たちが生身の人間であるということを頭では理解していましたが、それを深く考えたことはなかったし、考えたくはなかったというのが正直なところです。ですから眞子さまが持っている生々しい人間味が私たちの感情をあわ立てているところはあるかもしれません。法哲学者の井上達夫先生は、「天皇陛下は最後の奴隷」と言っていましたが、天皇は国民のために祈り続け、奉仕し続けてくれる存在だとなんとなく思っていたツケが、ブーメランのように返って来ているのですね。

内親王たちの本音は

江森 いま、安定的な皇位継承を議論する政府の有識者会議が開かれています。制度ですので、入れ物の話が多いと思いますが、大切なのは中身だと思います。内親王さまたちやご両親たちの声を十分に聞くという視点が抜け落ちてないかと心配です。今回のご結婚問題しかり、女性・女系天皇や女性宮家問題も、その当事者は、愛子さま、眞子さま、佳子さまという3人の内親王たちです。いくら制度について議論したところで、内親王たちが早く窮屈な皇室を出たいと考えていたとしたら……。

私たち主権者である国民は、彼女たちの本音を、ほとんど知らないのではなかろうかと危惧しています。日ごろから、国民の間で議論をして、眞子さまたちが暮らしやすい環境などを考えて差し上げることが大切ではないかと思います。

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提供:宮内庁

土壇場で道を開く日本

片山 私は非常にクラシックな考え方かもしれませんけれど、憲法や皇室典範をいじれば、つまり仕組みを変えれば、うまく行く、安心できるという議論にはどうも懐疑的なのです。皇族、宮家、皇位継承者を増やすとか、そういう工夫をすれば安定軌道に戻せると思っている人も多いと思うのです。けれど、日本の歴史を振り返ると、本当に切羽詰まっていないところで制度をいじっても、逆にうまく行かなくなることが多い気がするのです。

河西 それはどうしてですか。

片山 私の興味で申すと、たとえば陸軍の酒井鎬次将軍は、戦前に欧米を見習って、日本に戦争指導のための実権ある会議体を作る研究をした。ところが結論は、「日本では、そんなものは作らないほうがいい」。結局、本当に困るところまで行かないと、立場を超えて本気で考えて合意が取れないのが日本の政治文化ということです。そこまで行かないうちに仕組みをいじっても混乱を招き、将来に禍根を残すだけだと。事実、意思決定のシステムを曖昧にしたまま、土壇場まで陸軍も海軍も文民も四分五裂して勝手をして、御聖断で解決したのが終戦でしょう。

行くところまで行ったときに不思議とたちまち落ちるところに落ちる。右の頭山満もリベラルの長谷川如是閑も、日本論となると不思議とそういう話になる。私もそこが日本らしさの肝だと思う。現在の有識者会議を批判する訳ではないのですが、皇室の建てつけを変えるよりも、皇族のために本当に親身になれる侍従を付けて離さないとか、皇族の仕事について国民が考え直すとか、畏れ多い話ですが皇族の倫理について内々の教育を見直すとか、構造改革の努力を積み重ね、本当の土壇場で自ずと最善の道を開く。それが日本です。

山口 今後はどうなるんでしょう。みなさんは、眞子さまは無事に小室さんと結婚されると思いますか。

江森 結婚の行方は正直言って分かりません。一つは、このコロナ下では、アメリカにいる小室さんも帰国が難しいでしょう。多くの国民が大変な思いをしている中で、おめでたい結婚の話を進めてよいものなのかどうか。「国民と苦楽を共にする」という皇室のあり方から見て、どうなのかという思いもあります。

河西 私は、例えば、解決金を支払う折にでも、小室さんが自分の口からご説明するのが良いのではないかと思います。文書だとどうしてもきつく感じる。丁寧に説明する姿や質問に答える誠意を見せて、少しでも受け止め方が変わる人もいると思います。そうなれば「納采の儀」をして、正規のプロセスでご結婚する道もあるのではないでしょうか。

片山 でも、記者会見をやったら、逆の反応が起きる心配もありますよ。文書なら時間をかけて書けますし、読み手によっていろいろな解釈ができますが、会見ではその場の受け答えになるので。余計なお世話ですけど(笑)。正規のプロセスではないとしても、私はもう静かに降嫁していただくしかないと思います。

小室さんのアピール力

山口 これは私の勝手な想像ですが、晴れてご結婚となれば、お二人はニューヨークで暮らしたいと思っているんだろうなと思います。でも現実は厳しいですよ。ニューヨークでそれなりにセキュリティがあるマンションで体面を保って生活していくためには年収数千万円くらい必要です。小室さんが弁護士になっても、これほどの年収を稼ぐのはそう簡単ではありません。

一方で歴史の浅いアメリカにおいて、「ロイヤル」はものすごく価値がありますから、2人はもてはやされるかもしれない。メーガン妃が「サセックス・ロイヤル」を商標登録しようと考えたのは、そういうアメリカ社会をよく知っているからです。ニューヨーク社交界でセレブとしての地位を獲得して、華やかな交友を広げることを考えてらっしゃるのかもしれませんね。

江森 でも、皇室のあり方から遠ざかれば、ますます反発を招きかねません。

山口 小室さんはニューヨーク州弁護士会主催のコンペで準優勝しています。論文の表題は「社会的企業のためのクラウドファンディング法改正の可能性への課題と示唆」。これはセンスがいいです。ホットイシューであるクラウドファンディングと社会的企業を選び、かつその論文をニューヨークの実務家主催のコンペに出すのもセンスがある。表を使ってとてもトレンディにまとめる力もある。ただし、思索を突き詰めて真実にたどり着く、または、多大な資料を労力を惜しまずに読み込むというタイプではないかもしれません。際立ったアピール力というのが、他を補ってあまりある彼の才だとすると、自分を評価してくれるコミュニティにばっちりハマれば、成功する方だと思います。

私が心配なのは、万が一結婚生活がうまく行かずに離婚した場合です。元皇族を経済的に支えるセーフティネットが果たして眞子さまに残されているのか。これだけみんなが小姑みたいに心配して反対して、それでも結婚を選ばれた後、社会は彼女に戻る場所を用意してあげられるのか、それだけの寛容さが私たちの社会にあるのかが心配です。

江森 私が取材した範囲ですけれども、結婚して民間人となった眞子さまが、離婚しても秋篠宮家に戻ることはできません。戻る家はないのです。秋篠宮も名乗れません。姓もどうするのでしょうか。国民と違う点が多いのです。ですから眞子さまを国民と同じように考えて、軽々に「駄目なら離婚すればいいのだ」と、言って欲しくないのです。とにかく、眞子さまが幸せになる方法を今、真剣に考えてもらいたいと思います。

眞子さまが幸せになる選択を

片山 言わずもがなですけど、それはやっぱり、結婚しないほうがいいということですか?

江森 眞子さまには幸せになっていただきたい、ということです。それに尽きます。その意味からも、結婚相手をより慎重に考える必要があると思います。そしてご両親とよく話し合って欲しいのです。眞子さまは頑なにならずに、「結婚のチャンスはまだある」と、もっと柔軟に考えていただきたいと願うばかりです。

河西 眞子さまが小室さんと結婚すれば、お二人はいずれ天皇の姉と義兄になりますから、どうしたって注目され続けます。象徴天皇制がこれからどうあるべきか、国民と皇室でもっとキャッチボールすることが必要であることは確かでしょうね。

片山 私は皇室が存続してゆくには、小室さんのような存在も織り込める力が必要と思います。つまり柔構造ですね。そうでなければ、この世界的に価値観の多様化する時代に耐えられますまい。真に揺れないためにいつも揺れている。それが柔構造でしょう。もちろん皇室だけが柔らかくてもしようがない。結局、国民が柔らかくなれるか否か。そこに尽きてくるのではないでしょうか。

(写真=iStock.com)

文藝春秋2021年6月号|小室文書が晒した「眞子さまの危うさ」

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