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【半藤一利×池上彰】昭和史から学ぶリーダーの条件|東工大・池上ゼミの特別授業公開

歴史探偵が若者たちに歴史を学ぶ意義を伝える/半藤一利(作家)×池上 彰(ジャーナリスト)

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▶︎「ヤルタ会談」ほど人々がそうあって欲しいと期待した方向に、歴史は進まないことを教えてくれる出来事はない
▶︎理想とするリーダーに必要な条件は6つ。まず大事なことは「自分自身で決断すること」
▶︎日本人が資料というものを大事にしない民族であることは、今も昔もずっと変わらない
出典:文藝春秋2018年8月号

「若い方にはいろいろ伝えたいことがある」

池上 私は教鞭を執っている東京工業大学で、現役の学生や卒業生たちと定期的に読書会を開いています。前回は半藤さんの『世界史のなかの昭和史』(平凡社)を取り上げました。この本は、スターリンやヒトラー、ルーズヴェルトにチャーチルといった第二次世界大戦時の指導者を中心にして、彼らの決断や行動が、昭和の日本にどのような影響を与えたのかを描いたものです。

この本を読書会で取り上げた理由は、歴史は暗記もので苦手だと考える学生が多いからです。現在、高校では世界史は必修科目ですが、日本史はそうではありません。そこで、読みやすい歴史書を取り上げて日本史、特に近現代史をきちんと学ぼう、と考えたのです。

ことの次第を新聞のコラムで書いたところ、それを読んだ文藝春秋の編集者から「半藤さんを読書会にお招きして、学生と対話をする機会を作ってはどうですか」との提案がありました。本の著者に会って直接質問ができれば、学生たちにも大きな刺激になると考え、「ぜひやりましょう」と二つ返事でお受けしました。

半藤 皆さん、こんな厚い本を読んでもらって今日は有難う。実は、講演会のたぐいは全部お断りしているんです。ただ今回は10人くらいの学生さんを相手に質疑応答を中心にするというので、「若い方にはいろいろ伝えたいことがある」とお引き受けしました。私は東工大とはほとんど縁がないんですが、大学時代にボート部の選手として、全日本選手権でいっぺんだけ戦ったことがある気がします。私のチームの方が断然強かった。もちろん勝ちました(笑)。その程度のご縁ですが、よろしくお願いします。

20180710BN00024 トリム前

卒直な質問に2人が答えた

一同 よろしくお願いします。

池上 では、まず半藤さんから、なぜこの本を書くことに至ったのかですとか、書きながら考えたことなどを話していただきましょう。

半藤 冒頭から恐縮ですが、この本は最初の計画通りにいかずに途中で原稿用紙に鉛筆でシコシコ書くのを止めてしまったんです。本当は第二次世界大戦の終戦までを描こうとしましたが、寄る年波には勝てずくたびれてしまって、日米開戦で鉛筆を置いてしまいました(笑)。私は昔から日本の政府や軍部が、なぜ早い段階で戦争終結を決断できなかったのか、疑問に思ってきました。驚かれる人も多いのですが、あの戦争で死んだ日本人は、軍人、民間人全部合わせて約310万人もいます。そのうち100万人以上は、昭和20年に死んでいるのです。

日本政府や軍部が何を考えていたのかは、文藝春秋の社員の時代に、存命だった当事者に片っ端から話を聞いて、『日本のいちばん長い日』、『聖断』などの本にまとめました。一方で、アメリカやソ連が、どう行動したのか書きたいと思い続けてきました。そして87歳になって、『世界史のなかの昭和史』の筆を執ったのです。

ヤルタ会談が教える歴史の皮肉

半藤 今日は、まずこの本で書こうとして書けなかった、「ヤルタ会談」についてちょっとお話ししようと思います。終戦間際のこの会談を巡る動きの中に、歴史の面白さや歴史を学ぶことの意味が凝縮されています。私はよく「歴史は皮肉なものである」と書くのですが、人々がそうあって欲しいと期待した方向に、歴史は進まないことをこれほど教えてくれる出来事はありません。

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