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霞が関コンフィデンシャル「チーム岸田、厚労省への苛立ち、総務省の匿名幹部…」

日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関。日々、官公庁を取材する記者たちが官僚の人事情報をどこよりも早くお届けする。

★「チーム岸田」の結束力

岸田文雄政権の発足から3カ月あまり。政権運営に安定感が出始めたが、最大の理由は官邸による内閣・党・霞が関に対する丁寧な根回しにある。

とりわけ木原誠二官房副長官と嶋田隆首相首席秘書官(昭和57年、旧通産省入省)が両輪となる「チーム岸田」の存在が大きい。

筆頭の嶋田氏のもとにあつまった首相秘書官は宇波弘貴(平成元年、旧大蔵省)、中込正志(同、外務省)、中嶋浩一郎(同、旧防衛庁)、荒井勝喜(03年、旧通産省)、逢阪貴士(04年、警察庁)、中山光輝(同、旧大蔵省)の六氏。

異例なのは財務省が2人の秘書官を送り込んだことだ。菅義偉前首相時代の秘書官は厚労省出身を含めた6人であり、現在は財務省が厚労省枠を奪った格好となっている。

それには理由がある。

「チーム岸田」のエース格である宇波氏。実は、嶋田氏に口説かれ、首相秘書官に就いたのだが、その際宇波氏は「妻が病弱なため外遊には同行できない、それでも良いなら」と条件を出した。外遊する財務官僚を確保するため、枠が2つになったわけだ。

菅前首相がコロナ対策で厚労省不信を募らせたのは周知の事実だが、実は岸田氏もまた同省不信が根強い。木原、嶋田氏ら側近と進めた秘書官人事で、「厚労省ゼロ、財務省2人」で問題ないとの意向を示していたという。

その「チーム岸田」の成果といえば、昨年11月に米製薬大手メルクの日本法人MSDと新型コロナの飲み薬「モルヌピラビル」160万回分の契約を結んだことだ。契約の2週間前、宇波氏が、バイデン政権がメルク社から「モルヌピラビル」190万回分を確保したとの情報をキャッチ。すぐさま厚労省の頭越しに直接交渉し、契約に至ったというのである。

★厚労省への苛立ち

官邸スタッフを送り込めなかった動揺を隠せない厚労省。岸田政権の発足に際し、実は、厚労省は新型コロナ対策のため首相秘書官候補に旧厚生畑から数名リストアップしていた。なかでも宮崎敦文氏(平成3年、旧厚生省)は首相側近の「必要条件」とされる開成高校卒で同省サイドが自信を持って候補に挙げた。

しかし結果は前述したとおり。官邸は厚労省出身秘書官を廃し、財務省で厚労担当の長い宇波氏が登用された。

とはいえコロナ対策の実働部隊として厚労省の役割は小さくない。「第6波」をにらみ昨年11月に政府が取りまとめた感染対策の「全体像」策定では、菅政権の首相秘書官だった統括調整官の鹿沼均氏(02年、旧厚生省)が厚労省側の責任者を務め、うるさ型の医師会などとの調整を担った。

準備が進む3回目のワクチン接種。前任の河野太郎氏とは打って変わり、堀内詔子ワクチン担当相はお飾りも同然の体。健康局予防接種室を中心とした厚労省が実務を一手に担う。自治体との調整だけでなく、米モデルナ社をはじめとしたワクチン製薬会社との困難な交渉を仕切るのは健康局審議官を務める宮崎氏だ。「結局、官邸は、厚労省には意思決定に関与させず、決定事項を忠実にこなせという姿勢だ」(厚労幹部)。

一方、厚労省への冷たい視線がいわれなきものだとも言えない。12月には、「オミクロン株」感染者が空港検疫をすり抜け、その濃厚接触者がサッカー天皇杯を観戦していたことも判明。厚労省が精度の劣る抗原検査頼みの水際対策を頑として変えないことに対し、かねてから専門家から懸念の声が上がっていた。

「経済対策を打っていこうという大事な時期に何をやっているのか。厚労省は肝心な場面で保健所や医療機関に物を言えない」とは官邸幹部。今後のコロナ対策は夏の参院選に直結しかねず、厚労省への苛立ちを募らせる。

河野太郎 (1)

河野氏

★響き渡る怒声の矛先

新型コロナのオミクロン株への警戒が強まった昨年12月。首相官邸の一室で連日、怒声が響き渡っていた。

声の主は藤井健志官房副長官補(昭和60年、旧大蔵省)。水際対策を担う厚労省の担当者に対し、「帰国者の待機施設を早く確保しろ」と圧力をかけ続けていた。

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