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阿久悠 女遊びとは無縁の家庭人 深田太郎 100周年記念企画「100年の100人」

『また逢う日まで』『UFO』など数々の名曲を残した作詞家・阿久悠(1937~2007)。長男で作曲家の深田太郎氏が、父との一風変わった親子関係を語る。/文・深田太郎(作曲家)

深田太郎(筆者)

深田氏

あるテレビ番組の取材で「子供のころにお父さまからされたお話を聞かせてください」と訊かれ、とっさに思い出したのはこんな話だ。

「ある闘牛場の横に人気のステーキ屋がありました。その店の目玉は、たった今闘った牛のステーキを出すことでした。その日もお客が料理を今か今かと待ちわびていると、出てきたのは闘牛士の丸焼きでした」

ディレクターがカメラの前で必死に笑いを堪えているのがわかったが、なぜかテレビではオンエアされなかった。この話を阿久悠ファンの友人にしたら「すごい! 阿久さんさすが天才!」といっていたが、何のことはない、子供の扱いがわからなかっただけだろう。

阿久悠

阿久悠

生涯5000曲以上の作詞を手がけた父にとって70年代は特に濃密な時期だった。当時のエピソードをきくと、寝る間も惜しむぐらい最高に充実した祝祭空間だったことがわかる。

父と私が密に過ごしたのは1976年からの5年間だけである。私が11の時、父が伊豆の宇佐美に居を構えようやく家族生活が始まったが、今度は高校の時に私の方が家を出てしまった。

生涯距離のある関係だったと思う。でも今思えば息子から父への4つの信頼、または父を信頼する4つの理由があった。

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