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ソフトバンクの後継者、暗号資産業の苦境、ペイロール覇権争い、DHC身売りの今後 丸の内コンフィデンシャル

日本経済の中心地、東京・丸の内から、“マル秘”財界情報をくわしくお伝えする。

★ついに後継者現わる?

 ソフトバンクグループ(孫正義代表取締役会長兼社長)が11月11日、9月期の連結決算を発表。最終利益が1290億円の赤字となった。

 アリババグループ・ホールディング(ダニエル・チャンCEO)の株式を売却し、再評価益4兆6000億円を計上すると発表したが、最終赤字から脱せなかった。

 最大の要因は、中核事業のビジョン・ファンドが経営不振に陥ったことだ。4―6月期に四半期ベースで過去最大の3兆1627億円の赤字を計上している。

 さらに投資家を驚かせたのは、孫氏が30分ほどの冒頭挨拶のみで引っ込んだことだ。これまで孫氏は直接、投資家に対し、自説を滔々と語ってきたが、今回、後藤芳光最高財務責任者(CFO)に詳細な業績報告を委ねた。

 後藤氏は2000年にソフトバンクに入社。財務畑を中心に歩みCFOに上り詰め、福岡ソフトバンクホークスの社長も兼務する。

 安田信託銀行(現みずほ信託銀行)の行員だった後藤氏は、1997年に同行が経営危機に瀕すると、光通信に転職。しかし、その光通信も経営危機に陥った。苦境にあった後藤氏を拾ったのが、安田信託銀行元会長で、当時ソフトバンクの取締役だった笠井和彦氏だ。2013年に笠井氏が亡くなると、後藤氏はメインバンクであるみずほフィナンシャルグループ(FG)との窓口となり、ソフトバンクの財務戦略を担ってきた。

 みずほFG元会長、佐藤康博氏は、FG社長時代から孫氏とのホットラインがあったが、その間を取りもっていたのも後藤氏である。

 ここにきて後藤氏が前面に出てきたことは何を意味するのか。気の早い市場関係者の間では「孫氏は後藤氏を後継者と考えているのでは」との声も聞かれる。今回の後藤氏の登壇は、少なくともメインバンクとの関係強化を投資家に強く印象付ける効果があったことだけは確かだ。

★暗号資産業の苦境

 米暗号資産交換業大手・FTXトレーディングの経営破綻が、日本の暗号資産関係者に大きな打撃を与えている。

 大谷翔平など名だたる著名人を広告塔に起用したFTX(創業者サム・バンクマンフリード氏)は、今年3月に日本の同業を買収し、日本市場へ参入。ビットフライヤー(関正明代表取締役)やコインチェック(蓮尾聡社長)など交換業大手の一角に食い込むのか注目されていた。

 ところがFRB(米連邦準備理事会)の利上げによる景気冷え込みなどによって夏場以降、暗号資産相場は低迷。そこに追い打ちをかけるように、FTXのずさんな顧客資産の管理が発覚する。暗号資産は再び「冬の時代」に入り、FTXの日本法人については債務弁済のため売りに出される見通しだ。

 FTXの破綻は、NFT(非代替性トークン)など暗号資産の派生ビジネスにも大きな影響を与えた。NTTドコモ(井伊基之社長)は11月、アクセンチュア(江川昌史社長)などと連携して暗号資産の交換やトークン発行などの共通機能を提供する新会社を設立、最大で6000億円を投資すると発表した。七月には博報堂(水島正幸社長)がスタートアップと組み、カルビー(伊藤秀二社長)が提供するNFTゲームの開発・運営を支援するとしていた。「ウェブ3」と呼ばれる次世代ウェブビジネスの領域に日本の大企業も熱を上げていたが、FTXの破綻で、いきなり出鼻をくじかれた格好だ。

 最も苦しいのは暗号資産の流動性が命となる交換業だ。前出の大手に加え、MIXI(木村弘毅社長)が大株主のビットバンク(廣末紀之社長)やGMOコイン(石村富隆社長)なども競合にひしめくが、合併・集約は待ったなしだ。

 ところが、トップクラスのビットフライヤーは、創業者兼筆頭株主である加納裕三氏の意向で、3年間で4度も社長が代わる異例の事態だ。

 コインチェックは6月、創業者兼副社長だった和田晃一良氏が取締役を退任したが、内部体制の不備などが指摘される。FTX同様、ガバナンスの弱さを露呈し、業界の信頼回復は遠のくばかりだ。

★銀行業界の逆襲

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