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星野博美 歴史の重さを直視する

文・星野博美(ノンフィクション作家)

 人生の岐路において、進路を大きく変えさせられた本がある。『香港世界』(山口文憲著、河出書房新社)だ。
 
 それまで私は「中国少女」だった。人民服を好み、共産主義者を惨殺するギャングと、漢奸(かんかん)(外国の侵略者に通じた売国奴)を暗殺する抗日グループが闊歩した1930年代の上海に憧れ、シルクロードの風景に心奪われる、思想性ゼロの10代だった。中国へ行きたい。そんな思いを募らせていた頃にこの本と出会った。

 星野博美氏

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