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【新連載】EXILEになれなくて #1|小林直己

2020年10月23日、EXILE/三代目 J SOUL BROTHERSリーダーである小林直己さんによる新連載「EXILEになれなくて」が始まります。生い立ちからEXILEとの出会い、LDHという組織の秘密、そしてコロナ禍に直面するエンターテインメント産業……三代目 J SOUL BROTHERSが活動10周年を迎える今年、直己さんが内に秘めた熱い思いを綴ります。組織の中で自分の夢を叶える方法とは――。ご愛読をよろしくお願いいたします。

コロナによって見つめ直したこと まえがきに代えて

 EXILEになれなくて、僕は道を探し続けた。

 2020年10月、全てが変貌を遂げてしまった社会を見渡して思う。マスク、消毒、自粛。これまで描いていた未来は、もうここにはなくなってしまった。だだっ広い空間に、一人取り残されたような気がして、無力さに飲み込まれそうになる。踏ん張って、ただ立っているだけ。今はそれでいい、と自らの背中を支えながら、この突風が過ぎるのを待つ。目が開くことができない、それほどの砂嵐の先にあるはずの、新たな未来を見つめながら。そして、気づいた。

——人生の優先順位が変わった。

 今年は、LDH PERFECT YEAR 2020と題した、史上最大の祭りが繰り広げられる予定だった。発表していただけでも168公演、その後の未発表のものを含め、約300万人を動員する予定だった、LDHアーティスト総力を挙げたプロジェクトが、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で中止になった。

 僕も参加していた、年始から行われていたEXILEのドームツアー。その最終公演は、急遽当日に中止が決まった。昼過ぎに発出された大規模イベントの自粛要請を受け、グループ、そして社内の緊急ミーティングが行われ、来場者とスタッフの安全を最優先した結果だった。あの日から、どのアーティストの興行も、開催が次々と見合わされ、なだれ込むように緊急事態宣言が発令された。僕は自宅待機の日々となった。誰もが予期せぬ2020年の幕開けに、僕たちは、なすすべもなく飲み込まれていった。

 エンタテインメントは平和産業である。衣・食・住が保障された後にようやく必要とされるもの。もちろん、日々に活力を与え、時に命を救い、言語や文化、国境を超えて届くはずのものだが、その順番はまぎれも無い事実である。この状況下において何よりも参ったのは、パフォーマンス、つまり、伝える行為そのものができなくなったことだ。音楽、舞台、芸術に関わる人全てが、同じような悩みを抱えただろう。特にダンサーである僕は、この状況下では無力だった。ある国の文化相が「アーティストは生命維持に必要な存在」と発言したが、ダンスを見ただけで、お腹が膨れることはない。

 この未曾有の事態は、この瞬間だけでは終わらない。たとえウイルスの脅威が収束した後でも、世界規模でこれから何年もかけて、全ての分野において影響を引き起こしてくるであろう。一時期は、都市封鎖によって経済が止まり、工場や農作業もストップした。果たして、どのように経済を再生していくのだろうか。ニュースでは力を持った国々の覇権争いが垣間見え、小国・日本の行く末を案じてしまう。

 生活は、変わってしまった。

***

 僕の名前は、小林直己(コバヤシ・ナオキ)。アーティスト・グループである、EXILEと三代目 J SOUL BROTHERSのメンバーであり、後者のグループではリーダーも務めている。また、俳優としても活動を行なっている。所属事務所はLDH JAPANだが、この会社には、演者として参加する前から、スタッフとしても所属している。その後、2009年にEXILEに加入した。ある時期、一気にEXILEメンバーが増えたことを覚えている方もいるだろう。そう、あの中にいた一人である。

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