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佐藤優 創価学会指導者の思想はいかに形成されたか 『完本 若き日の読書』池田大作 ベストセラーで読む日本の近現代史114

 日本の政治や社会を分析する際に創価学会が果たしている機能を無視することはできない。創価学会を支持母体とする公明党が連立与党を構成している。そのため創価学会が権力の一角を担っているという見方がある。この見方は間違っていると評者は考える。創価学会は、権力をとらずに世界を変える、すなわち一人一人の人間革命によって、宿命転換を宇宙的規模で行うことを考えているのだ。これは世界宗教であるキリスト教の考え方とよく似ている。チェコのプロテスタント神学者ヨゼフ・ルクル・フロマートカ(1889〜1969年)が強調していたことであるが、キリスト教的国家、キリスト教的政治は存在しない。しかし、キリスト教徒が担う政治は存在する。同様に創価学会的国家、創価学会的政治も存在しない。しかし、創価学会員が担う政治や国家(司法、立法、行政)は存在する。キリスト教徒でも創価学会員でも、政治や公務を担うときは、その領域でのルールに従う。ただし、価値観の根本には自らの信仰がある。このような人々が、政治や公務を担うことで、権力の濫用を権力の内側から防ぐことができるようになるというのが政教分離が確立した近代国家における宗教人の国家観、政治観なのである。

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