見出し画像

短歌|永田和宏

この夏の死

限りなくこの夏に死にしクマゼミのなかのひとつが地にもがきゐる

この辺でもういいだらうと現(うつ)し身(み)の抜けたる痕(あと)が幹にすがれる

九〇万とふ死の数とほうもなき数の その数だけの悲しみをこそ

“It's people, not number”テドロスの言葉はすでにとほく忘れつ

笑はせてなんぼと今朝もテレビには学者らがゐてにぎやかに笑ふ

そこの君内職するのやめなさい WEB講義で言つてはいけない

歌人として期待されゐる場面だと知りつつ意固地に無言を通す

(2020年11月号)

ここから先は

0字
noteで展開する「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。同じ記事は、新サービス「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。新規登録なら「月あたり450円」から。詳しくはこちら→ https://bunshun.jp/bungeishunju

文藝春秋digital

¥900 / 月

月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に配信。月額900円。(「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。今後は、新規登録なら「…

「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了しました。今後は「文藝春秋 電子版」https://bunshun.jp/bungeishunju をご利用ください