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丸の内コンフィデンシャル〈財界インサイドレポート〉

日本の経済の中心地、東京・丸の内。敏腕経済記者たちが“マル秘”財界情報を覆面で執筆する。

★新会長の手腕

「財界総理」と呼ばれる経団連の中西宏明会長(日立製作所前会長)はリンパ腫が再発したため、6月1日の定時総会で交代。新会長には住友化学の十倉雅和会長が就任した。

任期途中での退任は初めての事態だが、経団連には新会長を選ぶ際、明確な基準がある。副会長経験者、出身企業で社長または会長、製造業出身であることの3つだ。

ポスト中西の候補者の条件を満たすのは、現職の副会長では、日本製鉄の進藤孝生会長とコマツの大橋徹二会長。副会長OBでは、三菱重工業の宮永俊一会長、トヨタ自動車の内山田竹志会長、そして十倉氏の計5人だった。

中西氏は十倉氏を「デジタル化と環境問題に造詣が深い」という理由で推薦。名誉会長(歴代の会長経験者)の了承を取り付け、十倉氏の次期会長が決まった。

住友化学が経団連会長を出すのは、故・米倉弘昌氏(2014年6月退任)に続いて2人目となる。十倉氏は、米倉氏の秘蔵っ子として経営企画などの要職を歴任。03年、三井化学との経営統合では交渉の最前線に立った。統合は白紙撤回となったが、米倉氏は十倉氏を重用し続けた。

米倉氏が経団連会長を退いた後、15年6月から4年間、経団連副会長を務め、19年5月から審議員会副議長に横滑りしていた。

米倉氏には安倍晋三・前首相を前に「アベノミクスは無鉄砲」と批判し、安倍氏を激高させたとの逸話が残る。その後、政権に復帰した安倍氏は、米倉氏を露骨に冷遇。経団連会長の指定席だった経済財政諮問会議の民間議員から米倉氏を外し続けた。

次に経団連会長に就いた榊原定征東レ元会長は、安倍政権との距離を縮めることに腐心。そして中西氏は、政権べったりの体質を軌道修正しようとしたが実現できなかった。

十倉氏は、「政権との良好な関係を維持したい」と述べるが、産業界をまとめ、経団連の存在感低下を食い止めることが先決かもしれない。

★エリートの正念場

ロッテホールディングス(HD)は6月下旬、驚きの社長交代に踏み切る。創業一族の重光昭夫会長兼社長が会長に専念する一方、新社長に招聘したのは玉塚元一氏だ。

今年59歳の玉塚氏は華麗なる経歴で知られる。旭硝子(現AGC)や日本アイ・ビー・エムを経て、98年に転じた先は「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング。オーナーの柳井正氏から社長に抜擢されたのは02年、40歳の時だった。

その後は05年にユニクロで同僚だった澤田貴司氏(現在はファミリーマート副会長)とともに投資会社「リヴァンプ」を設立。かと思うと、11年にはローソンに招かれ、3年後に社長へと昇格。直近はIT関連のデジタルハーツホールディングスで社長を務めていた。じつに上場企業3社のトップを渡り歩いた形だ。

ロッテと玉塚氏の縁は古い。05年にユニクロが韓国進出した際に組んだ相手は現地のロッテショッピング。また、リヴァンプが最初に手掛けた経営支援先は、ロッテHD傘下のハンバーガーチェーン「ロッテリア」で、玉塚氏は同社の取締役を一時務めた。

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