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コロナ下で読んだ「わたしのベスト3」 本の中を旅する|原田マハ

新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、春先に発出された緊急事態宣言下における移動の自粛要請は、作家という肩書きでなければいっそ「旅人」と名乗りたいくらい旅好きの私にとっては痛恨であった。ならば本の中を旅しようと思い立ち、読書に勤しんだ。しかし私はこんな時に旅がテーマの本を選んだりするほど素直ではない。旅の本を読めば出かけたくなるだけだ。ということで、手始めに昔むかし読んだ日本文学の古典を読み返してみることにした。

『お目出たき人』を読みながら、私は何度もひとりで笑い声を立て、「ちょっとなんで!?」と本に向かって呟いてしまった。人と会えないから文庫との対話である。が、文庫相手に思わずリアクションしてしまうほど、本作には110年前の青春のリアリティがあり、今読んでも新鮮で、とてつもなく面白かったのだ。語り手である「自分」が鶴という女に恋をして、勝手に夫婦になる妄想を繰り広げる。結局失恋に終わるのだが、無謀なほど自己中な主人公が最後には可愛く思えてしまう。

『陰翳礼讃』は耽美派として知られる谷崎潤一郎が日本美の真髄を「陰影」に寄せて解いてみせる美学の書である。昭和8年の段階で、西洋化する日本の生活に危機感を覚え、警鐘を鳴らすつもりで書いたのかもしれない。コロナ禍が世界中に蔓延する中にあって、日本は人口過密なのに感染者数が一桁違う。それはなぜなのかと、世界が日本の生活習慣を学ぼうとしたこの1年。その秘密の一端が本書で明らかにされている。

日本文学の古典から打って変わって、まさしく今読むべき一冊として『コロナの時代の僕ら』を選んだ。欧州で感染が拡大し始めた当初、物理学者で作家のパオロ・ジョルダーノがイタリアの新聞に連載した短くも的確なコロナにまつわるエッセイがいち早く本にまとめられ、世界的なベストセラーとなった。率直かつ明快に「コロナ前の時代にもう戻るつもりはない」と。共感したのは私ばかりではあるまい。

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