コロナ出口戦略を急げ! 新浪剛史・武藤真祐
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コロナ出口戦略を急げ! 新浪剛史・武藤真祐

「ワクチンパスポート」「オンライン診療」。経済復興への道を緊急提言。/新浪剛史(サントリーホールディングス社長)✕武藤真祐(祐ホームクリニック理事長)

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新浪氏(左)と武藤氏(右)

在宅医療の機会が大幅に増えた

新浪 新型コロナの感染拡大から1年半余り、日本における目下の課題は、感染防止と経済活動をいかに両立させるかだと考えています。この重要性を私は、ずっと訴えてきました。それは、閉店や倒産の相次ぐ飲食業界の惨状を目の当たりにしてきたからです。政府は11月から行動制限の緩和をする方針で、ようやく本格的な経済活動の再開も見込めそうではあります。

今後、日常生活の回復に向けた出口戦略を進めるうえで、盛んに議論されている「ワクチン接種証明」や「オンライン診療」など新しい取り組みの導入が欠かせないはずです。今日はその辺りの事情について武藤先生とお話ししたいと思います。

武藤 新浪さんとは、もう10年以上のお付き合いになりますね。ちょうど私が、在宅医療診療所の「祐ホームクリニック」を立ち上げた頃です。

新浪 そうでした。色々な勉強会を通じて交流してきましたね。武藤先生は宮内庁で侍医を務められたり、マッキンゼーで経営コンサルを学ばれたりと異色の経歴をお持ちです。この10年は在宅医療の世界でも、いち早くオンライン診療を取り入れるなど活躍してこられた。

コロナ禍では、医療逼迫に陥った病院が入院制限をしたため、在宅医療の機会も大幅に増えたと思いますが、今後、政府が行動制限の緩和をすることについては、どのようにお考えですか。

すぐさま経済を回すべき

武藤 今回の緩和案は「ワクチン接種証明」や「PCR検査の陰性証明」により、県をまたいだ移動や大規模イベントの参加、さらには飲食店での酒類の提供も認めるものですね。そのため「再び感染拡大を招くことになるのではないか」と批判の声も挙がっています。

ただ一方で、ワクチンを2回接種した人の割合が9月末には国民全体の6割近くなり、欧米並みのレベルに達しましたし、新しい治療薬を使った治療体制も整いつつあって、実際に9月下旬の段階では自宅療養者の人数も減少傾向に転じています。第5波は落ち着いたと見るのが妥当でしょう。こうした条件を考えれば、11月からの行動制限の緩和はあってもいいものだと思っています。

新浪 むしろ私は、なぜ11月まで待たなければいけないのか大変疑問に思っているくらいです。例えば、今年1月~5月の飲食店の倒産件数のうちコロナ関連は約半数を占めており、業態別で見ても「酒場・ビヤホール」の倒産が圧倒的に多く、その6割がコロナ関連です。本当に皆さん大変な思いをしています。

米国の感染症対策の権威であるファウチ博士は1時期、ワクチン接種の推奨と万全な感染対策による飲食店の営業再開を容認していました。日本はワクチン接種の進展とともに重症者数は大幅に減少しており、医療体制も改善しています。しかし、政府のコロナ対策分科会は欧米と異なる対策を講じており、どのような科学的根拠をもとに判断しているのか、その理由がよく分かりません。「国民の生活を守らなくては」という意志が欠けていると思います。

10月からすぐさま、飲食や旅行などの制限を大幅に緩和し、経済を回す必要があると思います。その前提として、ワクチン接種証明もしくはPCR検査の陰性証明の提示によって、飲食店であれば、22時頃まで酒類の提供を含めて営業を許可しても良いのではないでしょうか。

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ファウチ氏

武藤 ただ、制限を緩和するにあたって、気をつけるべき点があるのも事実です。例えばデルタ株の毒性の強さもその一つでしょう。デルタ株には大きく3つの特徴があって、感染力が非常に強く、基本再生産数が従来株は2.5なのに対して5~8もある。また致死率も従来株の1.5~2倍も高いと言われている。

もう一つ恐いのは、デルタ株の場合、ワクチンを打った人も打ってない人も他人への感染力が同じだということ。これはエビデンスもあるのですが、つまり、ワクチンを打った人自身はコロナに罹らなくとも、媒介して他人にうつすリスクは、打っていない人と変わらないのです。さらに、最近では「ミュー株」や「カッパ株」など、次々と新しい変異株が日本に入ってきている。こうした状況を考えると、やはり十分注意する必要があります。

新浪 おっしゃる通りで、ワクチン接種の普及よりも、コロナの変異株が現れるスピードの方が速いですよね。しかし、だからこそ用心してマスクをつけ、手洗いをするという基本的なことを絶対に忘れてはいけない。行動制限の緩和にあたっては、この1年で蓄積してきた予防の知恵というか、方法論をみんなで、何度でも確認することは重要だと思います。

武藤 ちょうど昨年の秋にGoToキャンペーンを活発化し、それをきっかけのようにして第3波が訪れた経緯と重ねて、今回このタイミングでの制限緩和には慎重な意見も出ています。ただ、この1年でワクチン接種率も上がり、人々の行動様式も変わっているわけで、昨年とは明らかに状況が違いますよね。

「山梨モデル」を参考に

新浪 そうです。例えば飲食店に関して、従業員がマスク着用を徹底し、来客数を全体の6割以内に抑え、テーブル同士の間隔を空け、さらには人と人とのあいだにアクリル板の仕切りを置く、そういった安全策も、この1年で培ってきたものです。自治体も安全策をガイドラインとして定めていますから、きちんと遵守しているお店には、夜の時間の営業も認めるべきです。

ただ、ここで一つ申し上げたいのは、「正直者が馬鹿を見てはいけない」ということ。つまりガイドラインを守っているお店でも、対策を怠っているお店と同じように一律に扱われて閉店を強いられ、多くの人が廃業に追い込まれている状況があるのも事実です。今後、緩和をするにしても、そのようなことは絶対にあってはいけない。

武藤 なるほど。

新浪 私がこの話をする時にいつも例に挙げるのが「山梨モデル」です。山梨県には「やまなしグリーン・ゾーン認証」制度というものがあり、飲食業や宿泊業が営業するにあたって、感染症予防対策に関する数十個の基準を設け、それらを遵守しているかどうか、県の職員が抜き打ちで検査するという内容です。

行動制限の緩和にあたり、行政はルールや基準を決めるだけでなく、それらが遵守されるよう指導すべきだと思います。手間はかかりますが、そうしたことを実践し、国や自治体が「経済を回復させる」という強い意志を持つことが肝要です。

武藤 山梨モデルは東京をはじめ他の自治体でも参考になりますね。

新浪 ちなみに行政について言えば、米国を見ると日本とスタンスが異なり、経済が勢いよく復興していることに驚きます。経済が低迷し、デフレに戻っていく日本に比べ、欧州も含め海外は、すでにインフレに対してどう対処していくべきかについて熱い議論をしているのです。

日本の今の状況は看過できません。このままでは、日本はコロナを理由に行動しない風潮が蔓延してしまい、それがゆえに新しい発想でリスクを取って何かに挑戦しようとする“アニマルスピリット”が、ますます減退してしまいます。

写真③飲食店に立ち入り

飲食店への立ち入り検査

ワクチン接種証明による差別

武藤 一方で、ワクチン接種証明書を早くから取り入れ、制限緩和を実施している海外の国では、様々な問題が起きているとも聞きます。証明書の偽造や、証明書を持っていない人への差別もあるようです。

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