西川美和 あさきゆめみて ハコウマに乗って27
何が驚いたって、大谷選手は一日に十二時間寝るらしい。子供時代の話ではなく、今も。大の大人が十二時間睡眠……ふつう、色々ムリ。でもあらゆる「ふつう」と「ムリ」をゆったりと払い除けながら未踏の地へ歩いていくのが大谷選手という人だった。ひょっとして彼は、あらゆる自信と立場を失ったこの国が最後の力を振り絞って産み落としたゴジラ、いやウルトラマンではないかと思えてくる。やがて沈む船に乗った私達にもうしばらく夢を見せたら、あのやさしげな微笑みを浮かべつつ、遠い星へ還っていくのではないか――いや、そうではないと思いたい。健全な環境と質の良い睡眠さえあれば、大谷翔平はまた育つのだと。
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