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萩原さちこ 城が危ない

文藝春秋digital
文・萩原さちこ(城郭ライター・一般社団法人城組代表理事)

全国には、3~4万の城跡がある。そのほとんどが、南北朝~戦国時代に築かれた城だ。一般的に連想される、姫路城や彦根城などは江戸時代につくられた城。天守も石垣もない、観光地化されていない城が無数にあるのだ。

こうした名も知れぬ城が深刻に直面しているのが、保存・整備活動の難しさだ。

前提として、国指定の史跡であっても維持・管理費は潤沢ではなく、世界遺産の姫路城でさえ例外ではない。昨今は災害対策に莫大な予算が求められ、広大な敷地内の整備費や石垣の補強・補修費などの捻出はますます厳しくなるだろう。中世の城の実情は言うまでもなく、整備が行き届かないどころか、放置され朽ち果てていくケースも多い。

全国的に、中世の城の多くは、地元の高齢者を中心とした有志の保存会が手弁当で支えてくださっている。私は城の魅力と価値を伝えるべく、全国の城を取材し執筆・講演することを生業としている。そのため自治体や保存会の方と話をする機会も多いのだが、よく目の当たりにするのは孤軍奮闘する様子。しかも、どの保存会もほぼ同じ悩みを抱えている。

「価値ある歴史遺産ならば、後世に残さなければ」という純粋な想いが原動力だが、史跡整備の経験や知識は乏しくすべて手探り。会費を活動資金として、機材を購入し草刈りに励む。統括する組織がないため相談相手が見つかりにくく、問題があっても解決の糸口が掴めない。立場の異なる自治体との連携も簡単ではないし、後継者問題を嘆くものの次世代のことまで考える余裕はなさそうだ。これでは疲弊し、先細る一方だろう。

また残念ながら、専門的見地からすると望ましくない活動事例も少なくない。歩きやすいようにと悪意なく遺構を壊して遊歩道をつくり、整備の記念にと土壌に悪影響を及ぼす桜を植えてしまう。景観の改善を求めて木を大胆に伐採した結果、防風機能が失われ土壌崩れを引き起こしたケースもある。せっかくの善意や行動力も、専門的な知見やプロセスを伴わなければ意に反した結果を招きかねない。

現実問題として地元の有志に頼るしかないが、何かサポートできないだろうか――。たどり着いた改善策の1つが「情報の共有」だ。

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