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西川美和 イッツ・マイターン ハコウマに乗って 第24回

 ついに順番が回ってきた。十一月のある晩〇時過ぎ。書いていた原稿の筆がピタリと止まった。よくあることだ。年々歳は重ねているのに、体や脳は子供のように正直になる。だけどその晩のずん、と重い眠気は覚えのないものだった。頭にモヤがかかり、泥沼で車輪がスタックするように、世間をすべなく憂うばかりの駄文が重なった。「だめだこりゃ」と匙を投げた。喉が少しいがらっぽかった。

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