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【ダイジェスト版】小泉悠×千々和泰明「南部奪回の行方は? ウクライナ戦争の『終わらせ方』」

 文藝春秋digitalのオンラインイベント「南部奪回の行方は? ウクライナ戦争の『終わらせ方』」が、2022年9月9日に開催されました。

 2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、どのような停戦の落としどころがありうるのか。防衛研究所主任研究官の千々和泰明さんと東京大学専任講師の小泉悠さんの二人が、侵攻開始から半年が経過した今、戦争の『終わらせ方』をテーマに議論しました。

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 対談は現在の戦況の分析から始まりました。8月24日、ゼレンスキー大統領はクリミア半島奪還を目指すことを明言。これについて千々和さんは「朝鮮戦争のときは、国連軍も中国軍も勝ち進んだところで攻撃を止められずにお互いに犠牲を増やしてしまった。まったく同じでないにしろ、ゼレンスキーがクリミアの武力奪還をどこまで想定していて、どれくらい慎重に進められるかが、ウクライナ側の犠牲の大きさを左右するひとつの重要なポイントとなる」と分析。勝ち進んだ側が戦争を止めるひとつの条件には政治目的の達成があることを踏まえて、小泉さんは「プーチンが目的として掲げた『ウクライナの非ナチ化』は、ウクライナの政体を滅ぼすことを意味するので、ロシア側には政治目的の面で妥協の余地がないように思える。そうである以上、ウクライナ側も妥協ができない。今は幸いなことに第三次世界大戦や核戦争には発展していないが、政治目的の強度という意味では非常に激しい戦争になってきている」と見解を述べました。

 千々和さんは月刊「文藝春秋」2022年8月号に寄稿した「ウクライナ戦争の終わらせ方  プーチンとゼレンスキーが見据える『出口』とは」でも戦争の終わらせ方について言及しています。それは「現在の犠牲」と「将来の危険」のバランスによって、落としどころが決まるというものです。小泉さんは「千々和さんの著書を開戦後に読み返して気づかされた」ことがあるとして、「当初はロシアが簡単に勝ってしまうと思われていたが、現実にはロシアとウクライナは拮抗した戦いをしている。さらにプーチンは世論を気にする指導者なので戦争における損害受忍度が低く現在の犠牲の比重が大きい。逆にウクライナは世論が抗戦を支持しているため損害受忍度が高い。開戦当初には予想されていなかった番狂わせが起きている」と語りました。戦争初期に想定された形とはちがう戦争の終わり方が現れ始めているのかもしれません。

 この日の対談ではロシアとウクライナの戦況にとどまらず、核抑止の面から考える東アジアの軍事的状況や、日本の国防や平和憲法、自衛隊の継戦能力についてまで、幅の広い議論が展開されました。これからの世界や日本を考える上で非常に示唆に富むイベントの全容は、ぜひ以下の対談フル動画でご確認ください。

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