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佐藤優のベストセラーで読む日本の近現代史 「日本共産党綱領(1961年)」(『日本共産党綱領問題文献集』所収)

ソフト路線化しても何も変わっていない日本共産党の本質

日本共産党を「その気」にさせたのは立憲民主党の枝野幸男代表だ。去年9月の国会における首班指名で、枝野氏は共産党に協力を申し入れ、共産党がそれに応えたことにより、野党政治の性質が変化した。日本共産党がこの出来事を極めて重視していることは同党機関紙「しんぶん赤旗」(2020年9月17日)の以下の記事からも明白だ。

〈日本共産党の志位和夫委員長は16日、党議員団総会後に国会内で記者会見し、同日の衆参両院本会議の首相指名選挙で新・立憲民主党の枝野幸男代表に投票することを決めた経緯について問われ、「先方から、首相指名での協力の要請がありました。私たちは、要請を受け、市民と野党の共闘の発展、野党連立政権の実現の意思表示として、枝野代表に投票します」と答えました。/日本共産党が衆参両院の首相指名選挙で1回目から他党の党首に投票するのは22年ぶりです。志位氏は「22年前は、先方から要請があって、当時の民主党の菅直人代表に1回目から衆参ともに投票したのですが、当時は、今のような野党共闘があったわけではありません。そのときは、『速やかに解散・総選挙をやる』ことが唯一の一致点でした。今回は、そのときとはまったく違う内容があります。枝野代表から、菅政権を倒し、政権交代を実現したい、そのための連携を強めていきたいということで、首相指名での協力の要請があったことを踏まえたものですから、私たちは非常に重要な前進だと思っています」と述べました〉

ここで重要なのは、日本共産党が「普通の政党」でないという事実を冷静に見据えることだ。評者が言う「普通の政党」とは、選挙を通じて政権獲得を目指す政党のことだ。共産党は革命政党だ。しかも権力者が平和的に共産党に政権を譲る場合は平和的方法をとるが、共産党政権の成立に武力によって抵抗するならば、非平和的方法、すなわち暴力革命も排除しないという「敵の出方論」をとっている。

暴力革命を否定していない

この関連で、鈴木宗男参議院議員(日本維新の会)が提出した質問主意書に対する6月11日付の以下の答弁書が興味深い。質問主意書に対する答弁書の見解は、閣議決定を必要とするので政府の立場を拘束する。答弁書には、〈日本共産党は、破壊活動防止法(昭和27年法律第240号)に基づく調査対象団体であり、また、同党は、日本国内において同法第4条第1項に規定する暴力主義的破壊活動を行った疑いがあり、同党のいわゆる「敵の出方論」に立った暴力革命の方針に変更はないものと認識している〉〈現在においても、日本共産党のいわゆる「敵の出方論」に立った暴力革命の方針に変更はないものと認識している〉と記されている。共産党は、「普通の政党」ではなく、暴力革命の方針をとる政党であるというのが政府の公式見解なのだ。

日本共産党は、2020年1月に第28回党大会を開催し、綱領を一部改訂した。そこでは目指す未来社会についてこう記している。

〈発達した資本主義国での社会主義的変革は、特別の困難性をもつとともに、豊かで壮大な可能性をもった事業である。この変革は、生産手段の社会化を土台に、資本主義のもとでつくりだされた高度な生産力、経済を社会的に規制・管理するしくみ、国民の生活と権利を守るルール、自由と民主主義の諸制度と国民のたたかいの歴史的経験、人間の豊かな個性などの成果を、継承し発展させることによって、実現される。発達した資本主義国での社会変革は、社会主義・共産主義への大道(だいどう)である。日本共産党が果たすべき役割は、世界的にもきわめて大きい。/日本共産党は、それぞれの段階で日本社会が必要とする変革の諸課題の遂行に努力をそそぎながら、21世紀を、搾取も抑圧もない共同社会の建設に向かう人類史的な前進の世紀とすることをめざして、力をつくすものである〉(『前衛』2020年4月臨時増刊「日本共産党第28回大会特集」)

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