角幡唯介さんの「今月の必読書」…『快楽としての動物保護』
見出し画像

角幡唯介さんの「今月の必読書」…『快楽としての動物保護』

現代が生んだ人間と自然の歪んだ関係

今、私はグリーンランドの小さな猟師村に滞在し、イヌイットの友人と犬橇で網をしかけては海豹(あざらし)を回収する日々を送っている。もちろん海豹は人と犬の食料になる。農業の不可能なこの地で人類が生きてこられたのは海豹、海象(せいうち)、鯨等の海獣資源に恵まれているからだ。でも今は猟だけで“食う”ことはできない。なぜか? 要因の一つに近代的な動物保護の考えが先進諸国にいきわたり、昔のように毛皮が売れなくなったことがある。猟による現金収入の道が途絶え、猟師になる若者は激減し、今では犬橇での長期旅行技術も失われつつある。極北狩猟民の伝統は、まさに衰滅の危機にある。

本来、動物保護が目指すのは、人と自然との間に生じた歪んだ関係をあるべき姿にもどすことのはずだ。なのに何故、環境に適応して暮らしてきた彼らの生活や文化が脅かされなければならないのだろうか。

本書に記されるのは、そうならなければならなかった、その歴史的な必然性だともいえる。

本書は動物記で有名な作家シートン、写真家星野道夫、映画『ザ・コーヴ』という3つのテーマから人と動物との関係を考察している。

この続きをみるには

この続き: 909文字
この記事が含まれているマガジンを購読する
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に幅広いテーマの記事を配信しています。政治家や経営者のインタビュー、芸能人の対談、作家のエッセイ、渾身の調査報道、一流作家の連載小説、心揺さぶるノンフィクション……月額900円でビジネスにも役立つ幅広い「教養」が身につきます。

文藝春秋digital

月額900円

一流の作家や知識人、ジャーナリストによる記事・論考・ルポルタージュなどを毎日配信。執筆陣のオンラインイベントも毎月開催中。月額900円で記…

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
文藝春秋digital

記事へのご意見・ご感想をお待ちしています。「#みんなの文藝春秋」をつけてご自身のnoteにお書きください。編集部がマガジンにピックアップします。皆さんの投稿、お待ちしています!

ありがとうございます!
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に、一流の作家や知識人による記事・論考を毎日配信。執筆陣のオンラインイベントも毎月開催中。月額900円で記事読み放題&イベント見放題のサービスです。