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霞が関コンフィデンシャル<官界インサイドレポート>

日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関。日々、官公庁を取材する記者たちが官僚の人事情報をどこよりも早くお届けする。

★「長男接待」に揺れる総務省

菅義偉首相の長男らによる接待問題で激震の総務省。処分された幹部11人はいずれも旧郵政省系職員だ。なかでも谷脇康彦総務審議官(昭和59年入省)は減給処分となり、次官就任は遠のいた。

谷脇氏は課長時代に携帯電話の競争活性化を進めた。通信事業者と組む融和派幹部から嫌われ、花形の通信畑から、内閣官房の小所帯「情報セキュリティセンター」に追い出された。だがツイッターやインスタグラムまで試す進取の精神を持つ谷脇氏は郵便局にデジタル化を迫る有識者会議も立ち上げた。菅首相は手腕を買っているが、減給処分で昇任は1年半、不可能だ。

更迭された情報流通行政局の秋本芳徳前局長(63年)は、片方やっただけでもエリートと呼ばれる通信と放送の政策課長を両方こなした「超エリート」。谷脇氏の次のトップと目されていたがこれも不透明に。代わって登板の吉田博史新局長(62年)は通信の政策課長や人事を仕切る秘書課参事官も歴任した。地上放送デジタル化を長年担当しテレビ局にも知己が多いが、茫洋とした風貌から「考えが読めない」と敬遠する向きも。山田真貴子内閣広報官(59年)の夫でもある。

同局の湯本博信前審議官(平成2年)は、消費者行政など泥臭い分野を歩み、放漫経営のNHKに改革を迫った実力派。今回、同期の藤野克審議官に代わられた。その藤野氏は通信関連法規の解説書も著した「通信の人」。能吏ながら部下への当たりが強く主要ポストを逃してきたが、「挫折を経て丸くなった」(後輩職員)という。「放送のエース」井幡晃三放送政策課長(5年)らも減給処分を喰らい、受信料値下げと改革を迫られていたNHKが陰で大喜びしている。

接待発覚時、総務省は「利害関係者とは知らなかった」とトボケた。「知りながら御馳走になったが許認可に影響はない」と正直にいったほうが傷は浅かったかもしれない。安倍晋三政権時代に内閣総務官としてモリカケ問題等に対応した頃のクセが抜けない原邦彰官房長(昭和63年、旧自治省)の初動の戦略ミスだと怨嗟の声が渦巻く。

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★組織プレーで支える

財務省が菅内閣を目立たない形で支えている。太田充事務次官(昭和58年、旧大蔵省)を中心とする、この役所らしい組織プレーだ。

首相官邸の総理室には寺岡光博政務秘書官(平成3年)、大沢元一秘書官(7年)が座り、内閣官房には藤井健志官房副長官補(昭和60年)がいる。菅首相の信任が厚かった前任副長官補の古谷一之公正取引委員長(53年)に比べ、腕力不足を懸念する向きもあったが、上司である杉田和博官房副長官(41年、警察庁)との関係も良好とされる。

本省に目を転じても、野田佳彦首相秘書官を務めた太田次官をはじめ、官邸経験組が多い。やはり野田内閣時代に官房長官秘書官だった宇波弘貴主計局次長(平成元年、旧大蔵省)、菅首相が官房長官当時の秘書官、矢野康治主計局長(昭和60年)が予算編成ラインを固める。

もう一人、新川浩嗣総括審議官(62年)が要の位置を占める。新川氏は安倍首相秘書官を終えて官房付だったところ、昨年11月の予算編成真っ只中という異例の時期に前任の阪田渉財務総合政策研究所長(63年)から交代した。茶谷栄治官房長(61年)はどちらかといえば荒事が苦手なタイプなため、安倍官邸で今井尚哉氏(57年、旧通産省)や佐伯耕三前秘書官(平成10年)ら個性派とも上手く付き合い、政策を実現してきた新川氏への期待は大きい。

官邸、内閣府、本省と組織をまたいで時の政権を支えるものの、かつての「最強官庁」の面影は薄い。

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財務省

★ワクチンと経産省

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