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メッシ「書かれざる真実」 宮下洋一


子供の頃から欲望を犠牲にし、「神」となった男の光と影/文・宮下洋一(ノンフィクション作家)

 リオネル・アンドレス・メッシ・クッチティーニ。通称、メッシ。35歳にして、ついに伝説のサッカー選手になった。唯一、成し遂げることができなかったワールドカップ(W杯)を制し、数ある世界大会の全タイトルを手に入れた。背番号10は、そして「神」になった。

 11月22日、メッシ率いるアルゼンチンはいきなり、サウジアラビアに1対2で逆転負けした。メッシが「最後のワールドカップになる」と仄めかしていた大会で、格下を相手にまさかの黒星発進となった。

W杯を制したメッシ ©時事通信社

 決勝トーナメントどころか、グループリーグ敗退の可能性さえ囁かれ、世界中のサッカーファンが望んだアルゼンチン代表の優勝、いや、メッシの優勝に黒雲が垂れ込めたようだった。ところが私は、この幕開けを目にした途端、確信した。

〈メッシは、この大会を制する〉

 スペイン北東部バルセロナに居を構える私は、メッシが所属していたFCバルセロナが黄金期を迎えた2008年から、彼が退団する2021年までの13年間、約10万人を収容するカンプノウ競技場の記者席へ、日本のスポーツ紙や通信社の欧州通信員として、頻繁に足を運んだ数少ない日本人の一人だった。

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