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藤沢周平 中国でも共感を呼ぶ理由

2022年9月に「中国の直木賞」とも呼ばれる魯迅文学賞(翻訳文学部門)を、藤沢周平(1927〜1997)の『小説の周辺』が受賞した。今なお多くの読者に愛され続ける理由を、長女の遠藤展子氏が語る。

藤沢周平 ©文藝春秋

 父の作品は12冊が中国語に翻訳されていますが、そのうち唯一のエッセイが賞をいただきました。高度成長期が終わり、日本が豊かになった頃の作品です。地方から都会に出てきた人々が故郷を思い、子供時代の親兄弟や友達との思い出を懐かしむ話に、中国の方々も共感してくださったのだと思っています。

 父はサラリーマンの日常や、会社内での上司と部下といった立場からくる悲哀を、設定を江戸時代に移して描いています。その理由を、「現代社会でそのまま書くと生々しすぎるので、時代小説にして日常を描いた方が市井の人々の気持ちがよく書けるから」と話していました。人間関係は昔も今も変わらないわけで、父の小説がこんなにも長く読み続けられる理由のひとつは、ここにあるのではないでしょうか。

遠藤展子さん ©文藝春秋

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