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エルンスト・H・ゴンブリッチ著 中山典夫訳「若い読者のための世界史 改訂版」

文・原田マハ(作家)

美術史家が語る歴史物語

 もう13年もまえのことになるが、『楽園のカンヴァス』の執筆取材のためにパリに長逗留したことがある。そのとき、スーツケースに詰め込んで持って行ったのがエルンスト・H・ゴンブリッチの『美術の物語』。人類と美術が足並みをそろえてともに発展してきた1万年以上にも及ぶ長大な美術史を展観する名著だ。何しろ長い長い歴史の本だから重量が半端なく、海外へ持ち運ぶのにはまったく向かない本だったが、どうしても持って行きたかった。なぜかといえば、私が仮寓に定めたアパルトマンは、ルーヴル美術館から徒歩5分の好立地だったので、この本に登場する文化財や作品の本物をすぐに見に行けたから。そして実際にそうしたわけだが、後にも先にもあんなに豊かな読書体験はない。——と思っていたら、ゴンブリッチの名著『若い読者のための世界史』の改訂版が出た。これはもう、ワクワクしないわけにはいかない。

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