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名品探訪 「未来を刻む時計」

ひとつの小宇宙のように、はてしなく長い時を刻み続ける機械式時計。時代を超え、世代を超えて、これからの100年を共にできる名品を紹介する。
/構成=山下英介、写真=川田有二、スタイリング=石川英治(Tablerockstudio)、モデル=カレン・オスカー

Patek Philippe(パテック フィリップ)
究極のミニマリズムを表現したマスターピース「カラトラバ」シリーズの最新作は“クルー・ド・パリ(パリの爪)”と呼ばれる装飾が施された、ベゼルの繊細さに陶然とさせられる名品。手巻きのカラトラバには珍しいサファイヤクリスタル・バック仕様なので、美しいムーブメントも楽しめる。手巻き、ホワイトゴールド、ケース径39㎜。6119 ¥4,136,000(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター☎03-3255-8109)

 腕時計が誕生し、普及をはじめてからおよそ100年が経つ。そしていま我々は、それがただ時を計測するだけではないものだと気づき始めた。日々進歩する機械は、だからこそすぐに時代遅れになるはずであるのに、機械式腕時計は1世紀前と同じ構造で動く。毀(こわ)れて打ち捨てられるでもなく、職人の手によってかならず直る。

 腕時計が自分たちよりも長く生きることは、羨みを生まない。むしろその永らえかたに、自分がいなくなった後すら望んでしまう。「この腕時計はあいつに継がせよう」と考えることの、なんと甘美なことか。時間は積層して月日に、年に、そして時代となる。いま腕時計が測るのは、繰り返してきた過去を治癒しながら超えていく時代、向かう未来そのものだ。だからこそ、いい腕時計が必要なのである。

ジャケット¥134,200、パンツ¥93,500、シャツ¥34,100/以上トム ブラウン(トム ブラウン 青山☎03-5774-4668) タイはスタイリスト私物(以下同)

地球はどうして回転するの? 時計の針はどうして動くの? 小さな紳士はかんがえた。

Rolex(ロレックス)
1956年に初のカレンダー付き腕時計として誕生した、「デイデイト」のプラチナ製の新作は、なんとフルーテッドベゼルにプラチナを採用! アイスブルーのダイヤルはその証だ。新しい製造工程によって実現した清冽な泉のような輝きと、手首にずっしりと伝わる確かな重量感を堪能してほしい。自動巻き、プラチナ、ケース径40㎜。オイスター パーペチュアル デイデイト 40 ¥7,531,700(日本ロレックス☎0120-929-570)

Breguet(ブレゲ)
往年の懐中時計を彷彿させるミニマルなケースや、グラン・フー・エナメルという技術を用いたダイヤル、そしてブレゲの代名詞であるエレガントなブレゲ数字と、ブルースティール製のブレゲ針。まるで時代を逆に巻き戻したかのような、古典的な美しさを湛えた唯一無二のモデル。1775年に創業した工房ブレゲならではの、伝統工芸品としての価値がここに凝縮している。自動巻き、18Kローズゴールド、ケース径40㎜。クラシック7147 ¥2,893,000(ブレゲ ブティック銀座☎03-6254-7211)

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