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鹿島茂 ついに創刊 菊池寛アンド・カンパニー⑬

その伏線となる2つの事件があった/文・鹿島茂(フランス文学者)

★前回を読む。

 大正9年は『真珠夫人』の大成功で菊池寛が富と名声を得た年として記憶されるが、詳細年譜をひもとくと、その前後に大正11年暮れの「文藝春秋」創刊という菊池寛最大の「事件」の伏線となるような2つの「小事件」が目に入ってくる。

 1つは大正8年8月18日から「大阪毎日新聞」に中編「友と友の間」を連載したことである。なぜ「事件」かというと、それはこの作品が第四次「新思潮」の1つの総括となっているからだ。つまり、「友と友の間」は、後に久米正雄の小説『破船』にちなんで「破船」事件と呼ばれるようになった久米正雄と松岡譲という同人同士の恋の鞘当てを客観的な観察者として描いた作品であり、「第一次菊池寛 アンド・カンパニー」たる第四次「新思潮」の解体の過程が記されているのだ。

左から 久米正雄、松岡譲、芥川龍之介、成瀬正一(第四次『新思潮』発刊時 大正5年) ©文藝春秋

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