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#101人の提言

文藝春秋digital読者の皆さまへ、編集長より最後のお願い【「文藝春秋 電子版」1年無料プランのご案内】《このキャンペーンは終了しました》

5月31日、「文藝春秋digital」はクローズいたします。 これまで「文藝春秋digital」をご愛読いただきまして、誠にありがとうございました。 先にもお知らせした通り、月刊文藝春秋のサブスクリプションは「文藝春秋 電子版」に一本化します。これまで「文藝春秋digital」をご愛読いただいた皆さまには、突然のお知らせになったことを、改めてお詫び申し上げます。 「文藝春秋digital」のサービスが終了しますと、6月から皆さまに最新記事をお届けできなくなってしまいます

東大よりハーバードという選択 松田悠介

 海外から米国を目指す学生は、10年前と比べ約2倍に激増している。ハーバード大における2012年の学部出願者数は3万4302人。2022年には6万1220人と、2倍近く増加し、合格率は6%から3%にまで低下した。世界中のエリートが繰り広げる競争は、グローバル化の進展とともに激化する一方だ。  私が代表を務める「Crimson Education/Crimson Global Academy」日本校では、年間150〜200人の受験生全員を海外の大学に合格させ、ハーバードにも毎

「塾歴社会」が生む虚しきエリート おおたとしまさ

 灘中学受験後、新幹線で帰京する車内で母親たちが中学に入ってからどの塾に通うのかを議論している。「鉄緑会だの平岡塾だののほか、聞いたこともない塾の名前も飛び出す」。過熱する中学受験をノンフィクション小説として描いた拙著『勇者たちの中学受験』での一幕だ。

教育再生のカギは基礎学力 隂山英男

 近年、秋に発表される小中学生の問題行動が深刻だ。小学校低学年から問題は増加しており、不登校は史上最多の24万人、いじめも史上最多の61万件(高校等も含む)。中学生の自殺は100件を越えて過去最高レベルに達している。特別支援学級の在籍者もここ10年あまりで倍増。この変化は2013年から始まり、増加の一途をたどっている。このデータは何を表しているのか。「脱ゆとり教育」の教科書に変わったのは、その前年の12年のことだ。それから10年の構造変化を考えてみたい。

英語教育は能力に応じて 平川祐弘

 古代から大陸の文化を学んだ島国日本人の第一外国語は、千数百年のあいだ漢文で、昔は中国人と会話する機会は少なかったから、教育は漢文古典の講読が中心となった。その様は西洋で青年の教育がラテン語古典講読が中心だったことと似ていた。通訳の身分で明治維新前に3回欧米に渡航した福沢諭吉は、西洋文明の偉大を痛感、漢籍を捨て英書を読めと主張、慶応義塾を開いて日本の「英学の父」となった。その時以来、英書講読が授業の中心となり、日本の第一外国語は英語、我国は言語的にも文化的にも「脱漢入英」した

女性研究者を増やそう 須田桃子

 教授クラスの女性研究者があまりに少ないことは、科学報道に携わる中でずっと気にかかっていた。  東北大学の梅津理恵教授(当時は准教授)が2019年、優れた女性科学者に贈られる猿橋賞の受賞会見で「正直なところ、女性の後輩にこういう道(研究職)を100%の気持ちで勧めるのはためらわれる」と述べたのを知った時、事態の深刻さを改めて認識した。女性研究者が少ないのは自由な選択の結果ではない。研究を続けにくい環境のせいなのだ。

AIに負けない読解力を 新井紀子

 近年、AI技術の発展が著しい。日常会話レベルだった機械翻訳が、論文執筆の「相棒」として活躍している。AIに無縁とされてきたアートの分野でも目を見張る進化を遂げている。歌人の俵万智氏を真似た歌を詠んで本人を驚かせたり、ドナルド・トランプ氏の肖像を、ゴッホ風、ピカソ風に描き分けたりする。  コロナ禍をきっかけにDX(デジタルトランスフォーメーション)も加速。冷凍食品大手の食品工場では、画像認識を搭載したロボットが鶏肉の小骨を取り除き、空港のカウンター業務は大幅にロボット化され

ノーベル賞をとるためには 本庶佑

 2022年8月、文部科学省の科学技術・学術政策研究所による、ある調査結果が話題となりました。調査では、2018〜20年の3年間で科学誌に掲載された自然科学の論文数を分析。注目度の高さを示す「Top10%補正論文数」において、日本は世界12位に転落しました。  ただ、日本の科学研究の衰退は今に始まったことではありません。大元を辿ると2000年代初頭、戦後最大の不況が日本を襲ったことで、多くの企業が自社内の研究所を続々と閉鎖しました。彼らは自社での研究開発を諦め、もっぱらアウ

医師会権力闘争の不毛 辰濃哲郎

 2022年5月下旬、中川俊男日本医師会会長(当時)が訪ねた先は自民党元幹事長の二階俊博氏。退任理由を聞かれた中川氏はこう答えた。 「前任者です」  すると同席していた二階氏の側近、林幹雄氏が呆れた様子で呟いた。 「政治より怖いな」――。

おひとりさま用の介護制度を 上野千鶴子

 2000年に介護保険制度ができたとき、やった! これはわたしのためにできたんだ、と思いました。それまで家族に頼れないおひとりさまは、最期は病院か施設の片隅でひとり寂しく、というのが相場でした。ですが他人様におすがりしてもよいという選択肢が登場したのです。  介護保険は利用者中心を謳っていますが、その実、家族介護の負担軽減が政策意図であり政策効果であったことは事実です。成立当初の高齢者の子との同居率は49.1%、夫婦世帯まで含めれば8割を超えていました。65歳以上の者のいる

いじめの定義がわからない教師たち 尾木直樹

 いじめの問題は、いまだに学校現場に深く根を張っています。2021年度に認知された件数は、小・中・高等学校、特別支援学校をあわせて約61万5000件となり、過去最多を記録しました。このうち命の危険や不登校につながった疑いのある「重大事態」の件数は約700件です。最近はタブレットが一人一台になり、スマホも普及したことで、SNSを通じた事案も増えています。  2021年2月に、北海道旭川市で女子中学生が亡くなった事件は記憶に新しいですが、いじめによって自ら命を絶つ子供も少なくあ

中高年がセックスを楽しむための7か条 今井伸

 人間の三大欲求は、食欲、睡眠欲と性欲です。三大欲求を満たして生活することは、幸せな生活の第一歩でもあります。そして、どの欲求にどのくらい重きを置き、どの程度満たすと幸せなのかは人それぞれです。食欲にしても睡眠欲にしても、老若男女で千差万別、十人十色だということはなんとなくおわかりいただけると思います。  では、性欲に関してはどうでしょうか。「高齢者のセックス」というと、「高齢者がセックスをするなんて気持ち悪い」とか、なんとなく否定的な見解をお持ちの人が多いのではないでしょ

町医者パラダイスは亡国の道 丸花耕吉

 東大・京大の合格者ランキング上位校に異変が起きている。一言で言えば、成績の良い子が医学部に行きたがる。その結果、地方の大学の医学部への進学が増えているのだ。関西のある進学校では、卒業生の約半分、理系クラスでみれば7割超が医学部進学だという。

ブラック保育根絶に向けて 三宅玲子

 保育園の信頼を根底から覆す事件が全国で噴出している。2022年、静岡県裾野市の私立認可保育園で明らかになった虐待は、3人の保育士の逮捕と園長の刑事告発、裾野市担当部長の更迭、さらに市長の責任問題にまで発展。逮捕された保育士の一人は「コロナ対応で忙しくストレスを感じていた」と話したという。同様の虐待事件は富山県や鹿児島県の保育園でも発覚した。2021年と2022年には、福岡県と静岡県で、送迎バスに置き去りにされた園児が熱中症により死亡した。