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文藝春秋digital

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#文藝春秋2023年5月号

文藝春秋digital読者の皆さまへ、編集長より最後のお願い【「文藝春秋 電子版」1年無料プランのご案内】《このキャンペーンは終了しました》

5月31日、「文藝春秋digital」はクローズいたします。 これまで「文藝春秋digital」をご愛読いただきまして、誠にありがとうございました。 先にもお知らせした通り、月刊文藝春秋のサブスクリプションは「文藝春秋 電子版」に一本化します。これまで「文藝春秋digital」をご愛読いただいた皆さまには、突然のお知らせになったことを、改めてお詫び申し上げます。 「文藝春秋digital」のサービスが終了しますと、6月から皆さまに最新記事をお届けできなくなってしまいます

武田徹 「シン」の意味を探る 新書時評

 日本語の接頭辞の仲間に最近加わったのが「シン」だ。発案者はアニメ映画監督の庵野秀明。『シン・ゴジラ』『シン・エヴァンゲリオン』のヒットで新しい用法をすっかり定着させてしまう。

「日本の保守とリベラル」宇野重規さんインタビュー 著者は語る

「思った以上に難しいテーマでした」

今月買った本 綿矢りさ

誰かの選んだ本

レベッカ・ウラッグ・サイクス著、野中香方子訳「ネアンデルタール」

彼らも最新技術を備えた人間だった ホミニン(ホモ・サピエンス以外の絶滅した人類)というのは、どうにも気になる存在だ。初期のホモ・サピエンスは、きっと面白い体験をしたにちがいない。どこか知らない土地に旅して、そこで暮らす別の人類種と出会う。そのときどんなやり取りがあったのか。なかでもネアンデルタール人は別格の存在だ。最近(4万年前)まで生きていたのに、なぜか消えてしまった隣人には、そこはかとない悲しみとロマンが漂い、他人事とは思えないのである。

ミシェル・ビアール著、小井髙志訳「自決と粛清 フランス革命における死の政治文化」

「不逮捕特権」の歴史「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない」。日本国憲法第五〇条だ。不逮捕特権の定めである。起源は大革命前後のフランスにあるだろうか。本書はそこを掘り下げる。誠実な研究である。

松浦寿輝「香港陥落」

美酒美食とシェイクスピア、そして戦争 小説の舞台は、第二次世界大戦勃発前の香港。戦争の近づく気配は濃厚ながら、香港はまだイギリス領である。そこで知り合った、元外交官の谷尾、通信社勤務のイギリス人リーランド、香港の貿易商である黄。それぞれ40代、50代、30を少し出たばかりと年齢は異なるが、3人で会っては酒を飲み、おいしい料理を食べ、あれこれと語り合うのが習慣になっている。3人ともがシェイクスピアを好み、会話の端々に台詞の引用がちりばめられる。

最相葉月「証し 日本のキリスト者」

千頁の霊的花束 初詣や七五三、お墓参りや法事など、さまざまな節目にあたって私たちは神社・仏寺に足を運ぶ。宗教は日常と地続きだ。だが「信仰」について語ろうと言われたら、笑ってやり過ごすか、カルトを連想して身構えてしまうだろう。「信仰」の本来の姿を知るのは難しい。

三浦しをん ゆびさきに魔法22

保阪正康 山本五十六は何と戦ったのか? 日本の地下水脈31

 連合艦隊司令長官で海軍大将だった山本五十六の死から、まもなく80年が経とうとしている。

西川美和 あさきゆめみて  ハコウマに乗って27

 何が驚いたって、大谷選手は一日に十二時間寝るらしい。子供時代の話ではなく、今も。大の大人が十二時間睡眠……ふつう、色々ムリ。でもあらゆる「ふつう」と「ムリ」をゆったりと払い除けながら未踏の地へ歩いていくのが大谷選手という人だった。ひょっとして彼は、あらゆる自信と立場を失ったこの国が最後の力を振り絞って産み落としたゴジラ、いやウルトラマンではないかと思えてくる。やがて沈む船に乗った私達にもうしばらく夢を見せたら、あのやさしげな微笑みを浮かべつつ、遠い星へ還っていくのではないか

船橋洋一 韓国の精悍な自信外交を歓迎する 新世界地政学140

 先月16日の韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と岸田文雄首相との首脳会談は、前任の文在寅大統領時代に慰安婦問題と徴用工問題をめぐって史上最悪となったと言われる日韓関係を正常化させる上で大きな一歩となった。

京極夏彦 病葉草紙 第四話 蟯虫 中編

         中

清武英利 朝駆けをやめたあとで 記者は天国に行けない16

1 駆け出しのころは、来る日も来る日も書いていた。取材した記事が翌朝の新聞に掲載されるのが嬉しくて、夢中で書いた。新聞による権力監視と社会正義の追求を心から信じ、1日に十数人に会った。次から次へと大勢に話を聞いて、頭の芯がぼんやりとしてしまう“人酔い”というものがあることを知った。  やがて、自分の記事が人を傷つける場合があることに気づき、周囲を見渡せるようになった。「これは書くな」「あの取材はやめておけ」と告げられるようになった。記事をめぐる上司との口論が増えた。