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セクハラ疑惑の新政務秘書官は菅首相の“今井2世”?|森功

安倍政権で進められた「官邸主導」の実態は、官邸の威光を背に霞が関を牛耳る「官邸官僚主導」だった。その体制は菅政権にも引き継がれた——。ノンフィクション作家の森功氏が、政治を牛耳る官邸官僚を徹底ウォッチ。

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 新年早々、驚きの人事があった。1月1日付で発令された首相の政務秘書官人事がそれだ。年を越えてなお感染者が爆発的に増え続けるコロナ禍にあって、菅義偉が自らの政務秘書官に財務省出身の寺岡光博(54)を充てた。菅事務所から出向していた前任の新田章文(39)が事務所に戻り、代わって財務官僚がそこに就いたことになる。政権発足3カ月あまりで政務秘書官を交代させるのはかなり異例だ。が、周囲を驚かせたのはそればかりではない。寺岡といえば、2年半前の2018年、会員情報誌「選択」連載《罪深きはこの官僚》シリーズで〈寺岡光博(官房長官秘書官) もう一人の 「無類のオンナ好き」〉(5月号)と報じられた曰くがあり、すぐさま霞が関からその手の声があがった。

「あのときは福田(淳一)財務事務次官のテレ朝の女性記者に対するセクハラ不祥事が起き、まだいるぞと「選択」が寺岡のことを書きました。寺岡のセクハラ被害に遭ったと噂された新聞の女性記者もいたようで、政務秘書官という目立つ立場になるとそれが蒸し返されるのではないかと取り沙汰されたわけです」(官邸関係者)

 現に松の明ける7日発売の週刊文春(1月14日号)がセクハラ問題を直撃し、当人は「そういう証拠があるんですか」と色をなして反論している。 霞が関では、なぜ今になって寺岡を政務秘書官に抜擢したのか、とクビを捻るムキも少なくないのである。

 首相の政務秘書官といえば、第二次安倍晋三政権時代の今井尚哉が強烈なインパクトを残した。政務における首相の日程調整を担う従来の政務秘書官は、首相のプライベートな部分や家族の面倒まで見る。したがって議員事務所の重鎮秘書が務めるパターンが多かった。立場上は霞が関の各省庁から派遣される5~6人の事務秘書官たちの上位にある。政務秘書官が首席秘書官、あるいは筆頭秘書官と称されるのはそのためだが、実際の政策については、霞が関から派遣された各省庁の事務秘書官たちが担ってきた。

 ところが今井は首相本人やファミリーのプライバシーを管理する役割に加え、多くの重要政策を安倍に授け、政府全体を動かしてきた。「総理の分身」と呼ばれたその理由は、文字どおり政府の舵取りからプライバシー処理にいたるまで、内閣総理大臣の頭脳として機能してきたからである。寺岡がそんな重大なポジションに就いたのだから物議を醸しだすのは無理からぬところなのだ。

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