新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として 厚生労働省 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

ロックダウンに近い外出制限を自らに課した日本人の“盲点”とは|三浦瑠麗

★前回の記事はこちら。
※本連載は第31回です。最初から読む方はこちら。  

 緊急事態宣言が全国で明けて、3週間がたちました。弊社(山猫総合研究所)では、前回行った意識調査と同じく、第2回調査(全国の18歳以上の男女2051人を対象に回答を収集、年代別に回答者数を割り付けたうえで、最新の年齢別人口に基づき割り戻しを行った)を実施し、人びとの新型コロナウイルスに対する受け止め方や、経済状況、消費意識などを探ってみました。

 政府は、人びとに7~8割の行動削減を求めました。人びとはどれだけ自粛をしていたのでしょうか。緊急事態宣言下の生活はどのようなものだったのでしょうか。

スクリーンショット 2020-06-16 13.20.46

緊急事態宣言中の外出や外食について

 調査結果によれば、緊急事態宣言中、普段通り外出をしていた人は1割以下にとどまりました。実に9割以上の人びとが外出を減らしていたというのが実情です。さらに、外出を7、8割以上減らしたと答えた人の割合は、6割を超えました。外食については、さらに極端な結果が出ました。ほとんど外食しなかったと答えた人は9割に迫り、ランチを含めて週に2回以上外食していたと答えた人はわずか3%でした。

 帝国データバンク発表の飲食業の4月の売り上げは、居酒屋チェーンをはじめ会社によっては9割以上減という、いまだかつて体験したことのない落ち込みを経験しました。日本の人びとは、強制力のない緊急事態宣言下であるにもかかわらず、ほぼロックダウンに近い外出制限を自らに課していたことが分かります。

 とりわけ外出を自粛していたのは、若年世代です。下のグラフからは、年代が上がるに従って、行動削減が緩くなっていることが窺えます。男性と女性では女性の方が自粛している傾向にありました。

 テレビや新聞の報道、専門家会議の説明では、リスクが少ない若年層が外に出かけてウイルスに感染し、気づかずに人に移して蔓延させるというトーンの注意喚起が多かったのですが、実際には、より外出を自粛していたのは若年層だったということです。

スクリーンショット 2020-06-16 13.21.08

 緊急事態宣言中の外出(男女別・年代別)

こうした年代によるばらつきはあるものの、いずれにせよ日本の人びとの自粛の度合いは際立っており、ある種の公共心と自制心の高さを示しているといえるのかもしれません。日本人の自粛の度合いはロックダウン中の主要国並みに及んでいたということは確かです。

 しかし、そこには感染拡大防止策からのみ見ていては分からない、盲点としてのリスクが存在します。日本は、宣言解除後にも相変わらず消費者心理が冷え込んでおり、不安が先行して経済が回復しにくいということです。この観測は、これまで日本のエコノミストが予想してきた経済の落ち込みをはるかに上回る経済被害が生じるということを意味しています。

 調査では、消費をめぐる人びとの意識を探りました。緊急事態宣言が解除されたあと、買い物や外食などはどのようにするつもりか尋ねたところ、普段通り買い物に出かけると答えた人は僅かに14%であり、普段通り外食に行くと答えた人も7%でした。まだ買い物に出かける気にならないと答えた人と、必要な範囲ですると答えた人を足し合わせると、9割に迫る勢いです。緊急事態宣言解除後も、消費の戻りは非常に鈍いであろうことが予想されます。

 年代別に見たところも、消費意欲に大きな差は生じていませんでした。新型コロナウイルスに関してリスクの低いと考えられる若年や中年などの層の消費も、このままではなかなか戻ってこないということが予想されます。

スクリーンショット 2020-06-16 13.21.38

今後の買い物や外食について(年代別) 

 また、県外移動の自粛要請が近々解除されますが、旅行の再開についても人びとは非常に慎重な態度を貫いています。旅行の自粛はしなくてよいと答えた人は1割未満にとどまり、半年以内に国内観光の需要が回復する兆しは見せていません。最近では、海外からのインバウンド需要が壊滅的なので、旅館ホテル・観光業を救済するため、国内観光でその穴埋めをしようという声が上がっていますが、いままでの国内観光の需要さえまともに回復するとは思われないような厳しい雰囲気が見えてきました。

スクリーンショット 2020-06-16 13.22.24

 緊急事態宣言解除後の買い物や外食について

 日本は新型コロナウイルスの第一波を乗り切りました。しかし、経済や人々の生活にとって、コロナ危機が始まるのはこれからです。次回は、第二波が想定される中で、人びとはどのような意見を持っているのかを取り上げたいと思います。

★次週に続く。

■三浦瑠麗(みうら・るり)
1980年神奈川県生まれ。国際政治学者。東京大学農学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科修了。東京大学政策ビジョン研究センター講師を経て、現在は山猫総合研究所代表。著書に『日本に絶望している人のための政治入門』『あなたに伝えたい政治の話』(文春新書)、『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『21世紀の戦争と平和』(新潮社)などがある。
※本連載は、毎週月曜日に配信します。
【編集部よりお知らせ】
文藝春秋は、皆さんの投稿を募集しています。「# みんなの文藝春秋」で、文藝春秋に掲載された記事への感想・疑問・要望、または記事(に取り上げられたテーマ)を題材としたエッセイ、コラム、小説……などをぜひお書きください。投稿形式は「文章」であれば何でもOKです。編集部が「これは面白い!」と思った記事は、無料マガジン「# みんなの文藝春秋」に掲載させていただきます。皆さんの投稿、お待ちしています!

▼月額900円で『文藝春秋』最新号のコンテンツや過去記事アーカイブ、オリジナル記事が読み放題!『文藝春秋digital』の購読はこちらから!

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

記事へのご意見・ご感想をお待ちしています。「#みんなの文藝春秋」をつけてご自身のnoteにお書きください。編集部がマガジンにピックアップします。皆さんの投稿、お待ちしています!

ありがとうございます!
33
シェアしたくなる教養メディア。100年近くの歴史がある総合月刊誌「文藝春秋」が、あなたの人生を豊かに彩るコンテンツを毎日お届けします。

こちらでもピックアップされています

文藝春秋digitalオリジナル無料連載
文藝春秋digitalオリジナル無料連載
  • 287本

“文藝春秋の顔”というべき筆者たちによる「文藝春秋 digital」オリジナル無料連載をまとめました。三浦瑠麗、門井慶喜、中野信子、出口治明、森功、辻田真佐憲、野口悠紀雄、西寺郷太、麻生幾の各氏が交代で執筆します。

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。