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「幼い女児は、親に言えないからバレない」わいせつ魔から届いた21通の手紙

ルポ『つけびの村』が話題を呼んだフリーライターの高橋ユキさんが、「事件」を通して現代の子どもたちを取りまく「危険」を綴る。

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女児15名に対してわいせつ行為

 ある匿名掲示板内に『こども大好き』というカテゴリがある。ここは、純粋にこどもを愛する親達が書き込みを行う場所ではない。小児性愛者が集まる場所だ。ダークウェブのように特別なブラウザなど用いる必要はなく、誰もが閲覧できるサーフェイスウェブ上にいまも存在する。

 現在45歳の池谷伸也は、この掲示板で出会った“仲間”たちと『BAND』というアプリに移行し、交流を深めながら、リアルでは当時居住していた札幌市や東京都内で4歳から8歳の女児15名に対し、4年にわたり計23回のわいせつ行為を続けてきた。

 私が池谷と文通を始めたのは、東京地裁立川支部で彼の裁判員裁判が行われていた昨年7月ごろになる。公判では全ての罪を認め、スーツにマスク姿で、当時の葛藤も語っていた池谷は、被告人質問で検察官による激しい追及を受ける場面が多々見られた。

池谷「北海道から東京に引っ越すにあたり、こういうことはやめようと思っていた。やっぱり、しちゃいけないと思ったんで、その気持ちを、いいほうに切り替えるために……」

検察官「でもやっちゃったんでしょ! 警察には行こうと思わなかったんですか?」

池谷「Aさんの時点では思わなかったですね」

検察官「やめるつもりないじゃない! 自分でやめられると思ったの?」
池谷「……」

 自身の衝動を抑えるため出所後に通院する旨述べた際も「何の役にも立たないんじゃないですか」と検察官に嫌味な質問をされ「そういう言い方をされてますが! わたしは毎日多くの薬を飲んでいるんです!! 病気じゃないんですか!」と声を荒げて反論する。感情の起伏を露わにする様子を見て、手紙を出すことを決めた。

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「真実を話すのには、別に抵抗は有りません」

 刑事裁判での被告人の“オフィシャル”な発言は、本心がオブラートに包まれていたり、または建前の場合がある。あるいは刑事責任を少しでも軽くしたいという思いから、辻褄の合わない弁解を行う場合もある。法廷で検察官に厳しく追及を受け、時に不機嫌になりながらも、できるだけ全てを話そうとしているように見えた彼には、手紙や面会で“もっと正直なところ”を話してくれるのではないかという期待があった。そして彼は、私のそんな身勝手な期待に応えてくれた。

〈私は、真実を話すのには、別に抵抗は有りません。ただ今は、色々と心労が溜り、何も手につかない状態でおりましたので、うまく書けるかは分かりませんが、頑張ってみます〉(2020年8月2日 最初の手紙 原文ママ)

 池谷は気持ちのアップダウンが激しかった。公判で検察官や裁判員、裁判官らに質問をされた直後からは、しばらく気持ちが落ち込む。家族と連絡を取り合った後なども、同じように落ち込む様子を見せ、手紙の枚数も、頻度も減る。それでも約半年にわたり、私の質問に答え続けた。

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