三人の卓子

三人の卓子<読者と筆者と編集者>【全文公開】

読者と筆者と編集者の「三人」が自由闊達に語り合う投稿コーナー。

年金、徹底討論を

 先日、七夕の笹を見かけたので近寄ると、「年金を減らさないで」という短冊がかかっていました。金融庁の報告書が巻き起こした騒動で、多くの国民が自身の年金について気にかけていることでしょう。

 8月号に掲載された徹底討論『年金崩壊 すべての疑問に答える』を読んで、年金制度を再構築しなくてはならないと、強く思いました。討論に参加していたのは、与野党の議員、金融庁委員の方々です。

 平成の時代、国民の間の貧富の差が拡大しました。公的年金だけでは生活できないという人が増えてきたのは確かです。

 それについては、金融庁の報告書をまとめた委員の1人でもある駒村康平さんが「委員として反省をしているのは、低所得者層への目配りが欠けていたことです」とおっしゃった。全体的に、正直で、公平な議論でした。

 年金制度は非常に重要な問題で、今回のように政争の具になってはなりません。与野党・有識者を交えた会を発足させ、今後について徹底的に話し合っていくべきだと思います。非常にタイムリーな記事で、勉強になりました。(熊本県 三隅康資 67歳 無職)


心無い言葉

 近年、政治家でも経済人でも、思慮深い人が減ってきたように思います。浅はかな発言をし、ネット上や新聞・テレビの報道で袋叩きにあう、という現象をよく目にするようになりました。今年は政治家の数々の失言が話題になりました。

 言葉や行動はその人や集団の格を表す。8月号に掲載された石破茂氏による『自民党「参院選ネトウヨ冊子」に怒りが湧いた』を読んで、改めてそう感じた次第です。

 6月中旬に、自民党に所属する全国会議員の事務所に、自民党本部から一斉に冊子が送られてきたそうです。そこには〈トンデモ野党のご乱心〉〈野党の低レベル〉など、野党に対する誹謗中傷の言葉がたくさん並んでいたということでした。

 それに対する石破氏の次のような考えには、非常に共感を覚えました。

「野党の議員に対して挑発、罵倒、冷笑、揶揄などをするのは非常に恐ろしいことです。なぜなら、彼らの後ろにはその議員に一票を投じた国民がいるからです」

「言論空間で大切なことの1つが『フェアネス(公平さ)』だと私は考えています。与党であれ、野党であれ、保守であれ、革新であれ、いかなる思想的立場でもフェアであることが自由な言論の大前提です」

 政策についての批判ならよいでしょうが、冊子の内容を精査すると、非常に心無い言葉ばかりです。最近はセクハラ・パワハラ・マタハラなど、他人に向かって心無い言葉を投げかける「ハラスメント」が問題となっています。政治の世界にもその風潮が蔓延しているのではないだろうかと思います。

 石破さんの発言を受け流すことなく、これから政治家の方々には思慮深く発言・行動していただきたいです。(宮城県 伊藤紀子 85歳 ボランティア)


まあまあふうふう

 8月号に掲載されていた八千草薫さんのがん闘病手記『ちょっとだけ無理をして生きたい』を読みました。八千草さんのチャーミングな人柄が表れていて、読んでいて心地よい気持ちになるインタビューでした。

 2017年に乳がん、2018年にすい臓がん、2019年には肝臓がんが見つかり、闘病生活は大変なものだろうとお察しします。

 ですが、その生活の中での八千草さんの暮らし方、心のあり方はとても素敵なものでした。

 八千草さんは、今は亡きご主人・谷口千吉さんによく「馬馬虎虎」という言葉をかけられていたそうです。その言葉について、こうおっしゃっていました。

「これは中国の言葉で、『まあまあふうふう』という読み方をするのだそうです。本来は『いい加減な』とか『やっつけに』という意味があるようですが、私達夫婦は『良い加減』という解釈で使っていました。肩に力を入れすぎず、ほどよく生きる、といったニュアンスになるのでしょうか」

 記事からは、八千草さんが日々を丁寧に、でも頑張りすぎず暮らしている様子が伝わってきました。周囲の植物や動物に、愛情をかけられているのも素敵です。

 私自身の話になりますが、夫とは結婚して53年になります。現在の私達は共にがんを患っており、夫婦であり“がん友”でもあります。私たちも「まあまあふうふう」を合言葉に、日々を楽しんでいきていければと思います。(東京都 吉田正子 72歳 主婦)


血管を元気に

 歳をとるにつれ、食生活が体にどのような影響を及ぼすのかが気になってきました。昨今では不正確なデータや情報が多く、そのまま信じていいのか非常に不安な気持ちになります。

 8月号の津川友介氏による『血管を守る「卵、肉、魚」の食べ方』を読みました。病気や老化現象の多くは「血管の不調」によってもたらされる、それゆえ血管を若々しく保てば、あらゆる病気を遠ざけ、見た目も若々しくいられると紹介されており、視界がひらけたような思いがしました。

 タンパク質は、血管を丈夫にするだけではなく、血管の拡張を促進し、健康に保つ効果があると報告されているそうです。津川氏はエビデンスに基づいてタンパク質を格付けされており、その中でも「納豆」が上位にランクインしていて感動しました。

 というのも、育ち盛りの青少年時代を戦争中の食料不足で過ごした私達の世代は、手ごろな値段で容易に手に入る納豆を、日常的に口にしていたからです。「今日もまた納豆か」と思いながら食べていた、あの毎日を送っていたからこそ、私の現在があるのではないでしょうか。

 津川氏の記事を参考にしつつ、これからも健康に生きていきたいと思います。(東京都 若井田典子 90歳 主婦)


昭和の大スター

 8月号の特別企画「昭和魔人伝」の中の『美空ひばり 天才と任侠の「不死鳥伝説」』を面白く読んだ。世紀の大スターである美空ひばりの裏面史を知り、驚愕した次第だ。

 母親の喜美枝はステージママの先駆けで、ひばりとは「一卵性母娘」と呼ばれていたことは記憶にあった。しかし、ひばりが男と一緒に泊まるときも、母親を加えて3人で「川の字」になって寝るほどまでとは。小林旭との結婚のときでもそのスタイルを貫いたというのだから、「そんなことが現実にあるのか」と心底びっくりした。

 世田谷区上野毛、ひばり・旭の新居となるはずだった豪邸を見にいったことがある。昭和51年頃だったと記憶している。2人が離婚してからずいぶん経っていた。

 案内してくれたタクシー運転手が「こんな豪邸に住むことなく別れるとは、もったいない。何があったんでしょうか」とつぶやいていたが、同感だった。当時は、離婚の背景にある事情は知る由もなかった。

 今回の記事で、奇妙な親子関係について詳しく知ることが出来て、腑に落ちた次第だ。(大阪府 稲葉哲 71歳 無職)


鹿児島での思い出

 8月号掲載の「蓋棺録」で、陶芸家・14代沈壽官のご逝去を知った。1年ほど前、私は彼のもとを訪ねていたのだった。

 昨年秋、退職祝いの旅行先として、長年の夢であった鹿児島県日置市美山の窯を、妻と共に訪ねた。そこは、司馬遼太郎の作品で私が最も好きな『故郷忘じがたく候』の舞台である。この小説は、14代沈壽官がモデルとなっている。読むたびに涙が出そうになる箇所がいくつもある。

 氏の生き様を知り、感銘を受け、人生について考えさせられた。それだけに、いつか現地を訪ねてお会いし、何かしら感じるものがあれば幸せだろうなと思っていた。

 残念ながら、現地で直接お会いすることは叶わなかった。だが、静謐とした作業場の様子、展示室での受付の方の丁寧な応対に、非常に心地のよいものを感じた。

 後日届いた愛蔵本の表紙を開くと、直筆で書かれた言葉が目に留まった。「土に祈り 火を畏れて」と書いてあった。また、添え状には「大切に読んでいただきうれしく思っています」と書かれていた。

 今号での追悼文を読み、それらの思い出が蘇ってきた。また、文章には氏の人生が滲み出ており、執筆されている方の姿勢に好感を持った。今宵は氏の窯で購入した酒器で妻と酒を酌み交わしながら、言葉の意味を静かに味わいたい。(愛媛県 織田吉和 67歳 無職)

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