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旬選ジャーナル<目利きが選ぶ一押しニュース>|須田桃子

【一押しNEWS】なぜ聖マリアンナ医大は「お咎めなし」なのか/3月25日、毎日新聞ウェブ版(筆者=牧野宏美)

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須田桃子(NewsPicks副編集長/科学ジャーナリスト)

自分がカバーする分野で大きな災害や事件が起きると、ただひたすらそれに集中し、全力投球で追っていかなければならなくなる。そんな経験をこれまでに何度かしてきた。

そうなると、普段であれば確実に取材していたであろう出来事やテーマに携わる余裕はなくなる。全力投球の期間が長引けば、いつしか報じるタイミングすらも逸してしまう。

新型コロナウイルス感染症の取材にかかりきりの今もまさにそうで、以前から気にかかっているそれ以外の複数の案件に取り掛かる余裕はないのが実情だ。

記者やジャーナリストの数は限られている。もしも、大半の記者が一つの事象に集中せざるを得なくなれば、幾多の大事な問題が伝えられないまま、あるいはその絶対量が足りず、理不尽に放置されたり、忘れ去られたりしてしまうかもしれない。それは明らかに、社会の損失だ。

新型コロナによる緊急事態の最中にあって、本来、もっと多くの報道があって然るべきだと思う問題は多々ある。その一つが、医学部の入試で女性や浪人生が不利な扱いを受けた問題だ。

2018年、東京医科大学に息子を裏口入学させた文部科学省局長の汚職事件をきっかけに、同大の入試で女性が一律減点されていた問題が発覚。文部科学省の調査で、国立1校、私立9校で「不適切」あるいはその「可能性が高い」試験運用があったことが判明した。

この中には、女性や浪人生の差別のほか、OBの子など特定の受験生や、地元出身者の優遇も含まれる。差別や優遇により、300人以上の受験生が不合格になったと言う。

計10校のうち唯一、不正を否認したのが聖マリアンナ医科大学だった。文科省の求めで第3者委員会を設置し、今年1月、女性や浪人生への差別があったとする委員会の報告書を公表した。それによれば、2015〜18年度の入試で、女性はほぼ一律に出願書類の点数が下げられ、現役生同士や同じ浪人年数同士で比較すると、最大80点もの差がつけられていた。

ところが、聖マリ医大はまたも「意図的ではない」と不正を否認。法令違反などの問題があれば不交付になるはずの私学助成金を、18年度に約22億円、19年度に約21億円と、いずれも満額で交付されている。

不正を認めた他の私学8校は、18年度に不交付または減額され、東京医大は19年度も含め2年連続で交付金ゼロだった。なぜ聖マリ医大だけが「お咎めなし」なのか。この疑問を追究したのが牧野宏美記者の記事だ。

関係各所の言い分が興味深い。私学への助成額を決めている文科省所管の事業団はジャッジを文科省に委ね、文科省大学入試室は、大学側に否認の合理的な証拠を示して説明するよう求めたが、未だに回答がないと言う。事実認定は「回答が来てみないと分からない」としつつ、回答期限は設けていないと明かす。事業団はさらに「これまで大学側が否認したまま不交付などを決めたというのは例がない」、つまり、事実認定は慣例的に自認を前提としてきたと説明する。開き直った大学の「逃げ得」になっている不可解な状況が浮き彫りになった。

記事中で、作家の北原みのりさんは「助成金カットを受け入れた他大学より悪質」「それを国が見過ごすのは、差別に加担したことになる」と指摘している。

入試差別の背景には、旧態依然とした医療現場の働き方や病院経営の厳しさなどの根深い問題がある。差別の「逃げ得」が許される社会では、そうした問題もまた、放置されうる。



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