三人の卓子

三人の卓子<読者と筆者と編集者>【全文公開】

歴史を学ぼう

 10月号の総力特集「日韓断絶」は、我々に日韓関係を読み解くための多角的な視点を提供してくれた。

 現在の「日韓断絶」の淵源は、日本は「華夷秩序」の縁にかろうじて浮かんでいる蛮族であるという、韓国人の優越感なのだろう。日本人を蔑んで叩くことを通じ、日本への複雑な感情を解消しようとする。

 だが韓国人は、今日の日本を「蛮族」と侮ることはとてもできないことを知っている。それだけに、韓国人の間にはやり切れない感情が鬱積しているのだと思う。

 文在寅大統領は、国中から猛反対を受けるなかで、疑惑の渦中にある曺国を法相に任命した。大統領は反日を煽ることで、この件の追及から逃れようとしているのだという。

 一方の日本でも、一部の雑誌などが生産的とは思えない嫌韓論を展開している。こうやって、いたずらに国民やマスコミが騒げば、日本政府は外交の判断を歪めかねない。

 このような状況の中で、「日韓断絶」を克服する解決策を見出すことは容易なことではないだろう。

 このたびの特集で考えさせられたことは、平凡ではあるが、国民の一人ひとりが日韓の歴史を学び直すことが必要だということである。

 歴史認識の違いは払拭できなくても、その差異を理解することは出来るだろう。回り道であっても、他に特効薬はない。

 これとあわせて日本政府は、内外の政府公館を通じ、世界に誤解を与えないよう、日本の立場を積極的に発信してほしい。(東京都 泉信也 82歳 無職)

ある患者の言葉

 10月号で特集「がん医療の新常識」を読んだ。なかでも映画作家・大林宣彦さんの『大林宣彦「余命3カ月宣告から3年生きた」』という記事が面白かった。

 大林さんが主治医から聞いた話によると、米国の研究で、楽天的な人ほど薬がよく効くということが分かったのだという。

 大林さんは肺がんで余命3カ月だと宣告されたものの、常に前を向いて自分の未来を信じながら治療を続け、そのまま3年も生きていらっしゃるという。非常に説得力がある体験だ。

 3年ほど前、私は20日間の入院生活で、ある患者から話を聞く機会を得た。彼は末期がんと医師から告知され、抗がん剤で治療中の身だった。「この薬が効かなくなったら免疫が下がって、癌が生きる。医者は科学の力を信じるけれど、己の生命を決めるのは、もっと目に見えない精神的な何かがあると僕は信じるよ」と、強い瞳で明るく笑って言った。

 今回の記事を読みながら、彼の言葉をふと思い出した。今も、あの患者が元気で前向きに生きていることを切に願う。(東京都 小林浩子 50歳 家事手伝い)

高校野球の新しい風

 10月号に掲載された鈴木忠平氏による『ダルビッシュ有「僕は日本へ提言を続ける」』は、高校野球の新しい展開を見たようで興味深かった。

 今年の甲子園で大注目だった岩手県立大船渡のエース・佐々木朗希は、163キロのスピードのボールを投げ、国内のプロ野球球団、米大リーグも獲得を狙う逸材だったという。

 しかし地方大会の決勝戦で、監督・國保陽平は佐々木の出場を許さず、私立花巻東に大差で敗れた。監督によると連投により故障の危険があり、選手の未来を考えてのことだったという。

 この件に対するダルビッシュが語った「佐々木君の未来を守ったのは勇気ある行動」という言葉はたちまち拡散されていき、様々な議論を巻き起こした。張本勲などは、ダルビッシュの意見に真っ向から反対した。

 その様子を筆者は次のように表す。

「昭和と平成、アナログとデジタル、精神主義と合理主義。ふたりの舌戦は佐々木問題についての世代間ギャップを代表する格好となり、この対立構図に多くの人が意見を寄せることでさらに白熱していった」

 この議論が巻き起こる状況こそが、ダルビッシュが望んだ展開だったのだろう。このような一石の投じ方は、同調よりも活発な議論が尊重されるアメリカで活躍している野球人ならではだった。

 高校野球に新しい風が吹くのはいいことだと思う。ただ、私はなぜ、國保監督があそこまで佐々木を守ろうとしたのか、少し納得できない部分もあった。

 10月号を読み進めると、「旬選ジャーナル」で神田憲行氏が、この件で文章を寄せていた。それを読んで驚いたのだが、佐々木選手は東日本大震災で父親を亡くし、祖母も亡くし、祖父は今も行方不明のまま。母親が女手一つで3人の息子を育てているのだという。

 万全の状態で彼をプロに送り出したい、という國保監督の気持ちも納得できた。(福岡県 早田三重子 72歳 主婦)

「れいわ」を読み解く

 10月号掲載、ノンフィクションライター・常井健一氏による『れいわ新選組・山本太郎の研究』を読みながら、約30年前、当時高校生だった山本氏が「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の人気コーナー「ダンス甲子園」に出演していたことを思い出した。その後のことはあまり覚えていないが、俳優としてそれなりに活躍したらしい。

 それがいつの間にか、無所属で参院選で当選していた。時折、予算委員会で歯切れのよい質問をしていたことを覚えている。

 常井氏は、山本氏は若き日の菅直人氏にそっくりだと分析する。菅氏は草の根の地道な運動が土台にあり、時の政権とは対極にある象徴的な候補を立て、カンパとボランティアで支持を広げた。その手法が似ているのだと述べている。

 驚いたのは、れいわの「音」へのこだわりだった。演説会場にはプロ仕様の音響ミキサーを置き、山本氏の声を耳あたりの良い音質に瞬時に調整してから、超高性能スピーカーを通して聴衆に届けるのだという。

 常井氏の記事からは、山本氏の特異さが見えてきた。果たしてどこまで伸びるのか。今後も見守りたい。(兵庫県 鷲尾孝二 79歳 無職)

「なつぞら」の名台詞

 草刈正雄さんのインタビュー『「なつぞら」は役者冥利に尽きる作品です』を読みました。「なつぞら」でのおじいちゃん役を拝見して、ハンサムでスタイルがいいなとすっかりファンになっていたので、9月末でドラマが終了するのは寂しいです。

 草刈さんは大女優である沢村貞子さんからこう言われたといいます。

「あなた二枚目だからね。人の3倍は腕を上げないと、この世界からいなくなっちゃうよ」

 イケメンは努力しなくても仕事は来るのでは……? と感じましたが、その後「氷河期」を経験した時期もあったそう。活動の場を舞台に移してそこで場数を踏み、徐々に他のお仕事も増やしていかれたそうです。そのお話は、「なつぞら」での名台詞である「ちゃんと働けば必ずいつか報われる日が来る」と重なる気がします。

 草刈さんを見ていると、これまでの人生で体験されたことを全て自分の「力」にして、キラキラと輝いていらっしゃるのを感じます。次はどんな活躍をされるのか、楽しみな俳優さんです。(福島県 斉藤ゆきえ 35歳 会社員)

災害とキャッシュレス

 10月号で成毛眞氏の『「Suica」が最強のキャッシュレス決済だ』を興味深く読んだ。

 成毛氏はキャッシュレス決済について、スマホのアプリを使ったQRコード決済よりも、「Suica」を使用しているという。決済が速い、というのが主な理由だ。私はスマホユーザーでないこともあって、キャッシュレス決済は交通系電子マネーを使用しているので、我が意を得たりという思いで読んだ。

 1つ気づいたことがある。スマホ決済は、災害における停電時に支障が出る恐れがあるのではないだろうか。スマホは消費電気量が多く、最新機種であっても、数時間おきには充電しなければならないからだ。

 9月には台風15号の影響で、千葉県を中心に広範囲で停電が発生した。停電している地域では当然スマホも使えず、役所等で充電しなければならない。

 中国では広くスマホ決済が普及しているから日本でも広めるべきという意見もあるが、仮に日本で普及していたとして、今回のように広範囲に停電が起きてしまったら、スマホの充電が切れて、決済に支障が出る恐れがある。それに対して、プリペイド式の交通系電子マネーは充電が不要で、災害の多い日本の実情にあっていると言えると思う。(東京都 永作肇 44歳 会社員)

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