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保阪正康『日本の地下水脈』|疫病とファシズムの足音
昭和史研究家の保阪正康が、日本の近現代が歩んだ150年を再検証。歴史のあらゆる場面で顔を出す「地下水脈」を辿ることで、何が見えてくるのか。第一回のテーマは疫病とファシズム。明治以降、猛威をふるったコレラやスペイン風邪。日本の疫病対策は“軍事”に収れんする形で進んでいた。/文・保阪正康(昭和史研究家)
保阪氏
疫病の歴史的教訓を振り返る明治以降の近現代史を振り返ると、日本という国家が形成される過
”東大女子”のそれから|#1 中野信子さん(脳科学者)
日本の大学の最高峰「東京大学」に初めて女子が入学したのは1946年のこと。それから74年――。本連載では、時代と共に歩んできた「東大卒の女性たち」の生き様に迫ります。第1回は、脳科学者の中野信子さん(1998年、工学部応用化学科卒業)にお話を伺います。/聞き手・秋山千佳(ジャーナリスト)
中野信子さん
――中野さんが東大を選んでよかったと思うことはありますか。
中野 面白い人たちに出会えたの
連載小説「李王家の縁談」#7 |林真理子
【前号まで】
韓国併合から十一年経った大正十年(一九二一)。佐賀藩主の鍋島家から嫁いだ梨本宮伊都子妃には、方子という娘がいた。伊都子妃は奔走の末、韓国併合後に皇室に準ずる待遇を受けていた李王家の王世子、李垠と方子の婚約にこぎつけた。そして、一年の結婚の延期を経て方子は懐妊する。
★前回の話を読む。
大正十年は、伊都子(いつこ)にとって大きな不幸と大きな幸せが訪れた年であった。
六月十八日
森絵都さんが今月買った10冊の本
遠いどこかの話緊急事態宣言の発出後、都内では多くの書店がコロナ対策のために休業し、大変なことになっている。営業が再開されたら、給付金10万円はぜんぶ本に使おう。そう胸に期し、とりあえず買い溜めてあった本を捲りつづける日々だったが、これが、なかなか頭に入ってこない。小説より奇なる現実に翻弄されて読書に集中できない。暇しているはずの世間の人たちがあんまり本を読んでくれない理由がなんだかわかる。が、それ
もっとみる完全失業率、自殺者数…第二波到来の「損失シナリオ」|三浦瑠麗
★前回の記事はこちら。
※本連載は第33回です。最初から読む方はこちら。
ウイルスとの共存 前回は、日本における新型コロナウイルスの三つの感染シナリオを出しました。そもそも、ウイルスは人や動物に寄生しないと生きていくことができません。ウイルスなりの生存戦略をとっているのでしょうが、強毒性だと宿主をすぐに殺してしまうし、感染力が弱すぎると増殖できない。ふつうの風邪のコロナウイルスは、人をほとん
コロナ「検査・追跡・待機」で国民の不安を解消。これが最大の景気対策だ!
日本経済の未来は「不安感の払拭」にかかっている。政府の「基本的対処方針等諮問委員会」メンバーの経済学者が明かす、日本経済復活への道程とは。/文・小林慶一郎(東京財団政策研究所研究主幹)
小林氏
財政で支えなければ5月25日、全国で緊急事態宣言が解除されました。私は5月中旬から、政府の「基本的対処方針等諮問委員会」の一員として、他の3人の経済学者と共に解除の是非について議論に加わっています。私た