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2021年2月の記事一覧

マンガ『大地の子』第20話 消息|原作・山崎豊子

第20話 消息「これから私はまた中国に戻ります。もしも何かできることがあればすぐご連絡ください」。勝男(陸一心)とあつ子の消息をたどろうとする実父・松本耕次だったが……。

武田徹の新書時評|専門家に委ねてはならない「原子力」

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。 専門家に委ねてはならない「原子力」菅義偉首相は就任後の所信表明演説で2050年までに脱炭素社会を目指すと述べた。気になるのは実現の方法だ。経済活動の規模を維持しつつ炭素排出量を大幅に減らすには原発の利用が現状では有力な選択肢とならざるをえないが、東日本大震災後、原発に関しては賛否が厳しく対立している。政府は原子力をどう使うつもりなのか。その利用範囲を軍事にまで広げる野心がもしあれば話は安全保障にも及んで更

『ロッキード』著者・真山仁さんインタビュー

『ハゲタカ』シリーズなどで知られる人気作家・真山仁さんがロッキード事件を扱ったノンフィクションだ。「なぜ小説家がノンフィクションを書くのか?」「なぜ今さらロッキードなのか?」という誰もが抱く疑問も、600頁に迫る“超弩級”の大著を読み終えた後には、自ずと氷解していることだろう。関連書籍がすでに無数にあるなかで“全体”を初めて俯瞰したことで“事件の真相”に迫った書だ。これも、むしろ当時の時空間から“距離を置いた今”だからこそ、“ノンフィクション専門の作家ではない”からこそ成し得

草の根の東京ビエンナーレ|小池一子

文・小池一子(クリエイティブ・ディレクター) 東京は神田、末広町というめでたい旧名のある町に私の今の美術現場はある。かつては受験競争の名門として知られたという練成中学が閉校となり、その後に千代田区の文化施設として現出した「アーツ千代田 3331」で、私は長年の美術活動のアーカイブ資料と格闘している。 2018年の初めに、3331のディレクターである友人、中村政人が私の部屋に来て宣言したことから全ては始まった。東京ビエンナーレをやろう、と。先に「現出」した文化施設と書いたが

「カメラのキタムラ」“何も買わなくても出られる店”が国内1000店チェーンになれたワケ

ファウンダー名誉会長の北村正志は語る。「捨てる神あれば拾う神ありです」と。/文・樽谷哲也(ノンフィクション作家) <summary> ▶︎カメラキタムラのオフィスはフリーアドレス制。社長でさえ所定のデスクと椅子はない ▶︎北村は渥美俊一が主宰する「ペガサスクラブ」の会員になり、チェーンストアへの挑戦を始めた ▶︎創業者の北村は、君臨すれども統治せずという姿勢を貫いている こんなときだから記念写真を 国内に類例のない稀有(けう)な写真専門店チェーンである。「カメラのキタムラ

数字の科学 1億年前のホタルが放った光の波長|佐藤健太郎

サイエンスライターの佐藤健太郎氏が世の中に存在する様々な「数字」のヒミツを分析します。 1億年前のホタルが放った光の波長=548nm書店の児童書の棚を眺めていると、いつの時代も高い人気を誇るのは、やはり恐竜の本のようだ。その姿形もさることながら、遠い昔に滅んで、誰も真の姿を見ることができないというのもロマンをかきたてる。 そうした図鑑を手にとって驚くのは、そこに描かれている恐竜の復元図が、我々が子供の頃に見たものと、全く違っていることだ。ゴジラのように尻尾を地面につけて直

丸の内コンフィデンシャル<財界インサイドレポート>

日本の経済の中心地、東京・丸の内。敏腕経済記者たちが“マル秘”財界情報を覆面で執筆する。 ★スキンヘッドの社長候補伊藤忠商事は4月1日付で石井敬太専務執行役員が社長最高執行責任者(COO)に昇格する。鈴木善久社長(COO)は代表権のない副会長、岡藤正広会長(CEO)は続投する。鈴木氏は3年で交代となるが、「岡藤さんは鈴木社長に物足りなさを感じていた」(伊藤忠幹部)。 83年入社の石井氏は早稲田卒のラガーマン。化学品部門の出身で、エネルギーや化学品部門のトップを務めており、

連載小説「李王家の縁談」#15 |林真理子

【前号まで】 昭和八年(一九三三)十二月二十三日、東京にサイレンが鳴り響く。天皇家に世継ぎが生まれたのである。待望の男児誕生に日本中が万歳三唱の声を合わせた。歓喜に身を浴しながらも、かつて娘を朝鮮の王世子のもとへ嫁がせた梨本宮伊都子妃は、朝鮮、中国と日本との関係悪化の報道に触れ、戦局を案じていた。 ★前回の話を読む。

「ミューズ細胞」の再生医療革命——脳や心臓を修復する細胞が買える日が来る

心筋梗塞で心臓が弱まった人が拍動を取り戻し、脳梗塞で麻痺や認知などの障害を負った人が健常の生活を取り戻す——そんな製剤が開発されようとしている。/文・森健、秋山千佳(ジャーナリスト) <summary> ▶︎損傷した細胞を新しい細胞に置き換える。ミューズ細胞は人間の身体を修復するのが仕事 ▶︎ドナーの細胞でも培養すれば製剤として使えることがわかった ▶︎ミューズ細胞はALS(筋萎縮性側索硬化症)の進行を遅らせる効果があるとマウス実験で確認された 心筋梗塞の後遺症に特効薬

菅官邸の中枢に陣取る財務官僚たち|森功

安倍政権で進められた「官邸主導」の実態は、官邸の威光を背に霞が関を牛耳る「官邸官僚主導」だった。その体制は菅政権にも引き継がれた——。ノンフィクション作家の森功氏が、政治を牛耳る官邸官僚を徹底ウォッチ。 ★前回はこちら。 ★最初から読む。 ■森功(もり・いさお)   1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。出版社勤務を経て、2003年フリーランスのノンフィクション作家に転身。08年に「ヤメ検――司法に巣喰う生態系の研究」で、09年に「同和と銀行――三菱東京UFJの闇」で

【連載】EXILEになれなくて #18|小林直己

第三幕 「三代目 J SOUL BROTHERS」という運命* ★前回はこちら ★最初から読む 五場 J SOUL BROTHERSの歴史〈1991 - 2008〉  1999年、EXILE HIROを中心に、EXILE 松本利夫、EXILE ÜSA 、EXILE MAKIDAIを擁するダンス・アンド・ボーカルグループ、J Soul Brothers(以降、初代)が結成された。ボーカルをダンサーが囲うフォーメーションで、ダンサブルな楽曲をパフォーマンスし、歌と音楽だけで

霞が関コンフィデンシャル<官界インサイドレポート>

日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関。日々、官公庁を取材する記者たちが官僚の人事情報をどこよりも早くお届けする。 ★“剛腕”の後始末 “官邸ポリス”の頂点に君臨する杉田和博官房副長官(昭和41年、警察庁入庁)は、用意周到に松本光弘警察庁長官(58年)と斉藤実警視総監(60年)の体制で東京五輪を迎えるシフトを組んできた。この1月の人事では、栗生俊一前長官(56年)に冷や飯を食わされた面々が要職に復活。官房長時代から5年に及ぶ栗生氏の“圧政”の軌道修正が図られている。

スガーリン独裁が内部崩壊 「菅降ろし」へのカウントダウンが始まった【赤坂太郎】

支持率回復のための弥縫策は外れるばかり……「憲政史上最長最強の剛腕官房長官」で「危機管理のプロ」などともてはやされたのは、わずか4カ月前。首相の菅義偉自身がマスコミを操縦して作り上げた虚像は、永田町雀も驚くほどあっけなく崩壊しつつある。 菅は自民党史上初の無派閥出身の首相でもある。だが、コロナ対策が後手に回って内閣支持率が暴落すると、その無派閥が最大の弱点に転じている。「菅には40人もの無派閥の中堅・若手が付いている」と喧伝されたが、それぞれが菅と個別に結び付いているだけで

保健所長会会長の告白「追い詰められた保健所の悲鳴を聞いてほしい」

〈保健所は地域における健康危機管理の拠点ですが、医療機関や消防警察などと異なり、通常の職員体制は24時間交代制ではないにもかかわらず、災害時に準じた対応を余儀なくされています〉 〈感染者が増加する地域においては、対応の重みづけや優先順位を定めて業務の軽減化を行わなければ、保健所体制が崩壊する〉 年末年始の“感染爆発”に至る前の12月8日、こう危機感を露わにして、厚生労働大臣宛に「新型コロナ対策における緊急提言」を提出したのは「全国保健所長会」だ。 保健所は、全国に469