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2021年6月の記事一覧

塩野七生「日本人へ」|窮極のソフト・パワー「知恵」

文・塩野七生(作家・在イタリア) 『21世紀の人と国土』と題した、ひと頃は日本の国土計画の「顔」のような存在であった故・下河辺淳(しもこうべあつし)の評伝(著者は塩谷隆英、発行元は商事法務)を読んでいて、そう言えば下河辺さんはよく言っていたな、と思い出した。それは次の一句である。 「われらが日本には、カネもなければ技術もない。だから、知恵を働かせるしかない」 この一句は、今の日本人には少々説明が必要かもしれない。“ひと頃”ならば日本は経済大国になっていたし技術もあったの

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藤原正彦「古風堂々」|英国紳士の嗜

文・藤原正彦(作家・数学者) 我が家に来たクリスマスカードはしばらく応接間の棚に並べて飾ることにしている。アメリカ時代のガールフレンドからのものもいくつか混じるが、ピチピチギャルだった彼女達も今や60代ということで女房も気にしない。埋み火の熱さまでは思いが及ばないようでありがたい。これらカードは春に箱に入れてしまう。先日整理しようと読み返していたら、女房の友達ピーターからのものがあった。ケンブリッジ大出身のこのエレクトロニクス専門家は、毎年家族の消息を写真つきで伝えてくれる

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旅の歌、人生の歌|きたやまおさむ

文・きたやまおさむ(精神科医・白鴎大学学長・作詞家) 私は専門が精神分析学で、最近それに学長という肩書が加わりました。しかしその前から副業が作詞家で、55年の間でプロが録音してくれた歌が400曲くらいはあります。 それで歌はどこで生まれるのかとよく問われるのですが、いつも「旅の途中で」というのが私の答えなのです。「百代の過客」と言った芭蕉をひくまでもなく、作品が旅で生まれるのは当たり前のことなのです。そして、多くの歌人や詩人が、旅の途中で名句を紡ぎ出してきたのです。 人

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腰痛探検家 コロナ禍篇|高野秀行

文・高野秀行(作家) エンドレスで続くコロナ禍で腰痛に苦しむ人が増えていると聞く。リモートワークのおかげで、極端な運動不足になったり、自宅にちゃんとしたデスクと椅子がないままパソコン仕事をしたりするかららしい。 かくいう私も三十数年来の腰痛持ちである。一時期は寝ても起きてもいられないほど痛み、整形外科からカイロプラクティック、鍼灸、リハビリ療法の一種であるPNF、謎のカリスマ治療師、心療内科、超能力(治療師が額からビームを出す)まで、ありとあらゆる治療にすがった。腰痛世界

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「転向」ではない「自己変革」の近現代史|保阪正康『日本の地下水脈』

「転向」というレッテル貼りではなく、「自己変革」という観点から、あらためて近現代史を振り返る。/文・保阪正康(昭和史研究家) 構成:栗原俊雄(毎日新聞記者) 「転向」の後ろ暗いイメージ 大正時代後期から昭和初期にかけて、共産主義勢力に対する弾圧は苛烈を極めた。そうした状況下の昭和8(1933)年、共産党幹部の佐野学と鍋山貞親が獄中から「共同被告同志に告ぐる書」を発表した。いわゆる転向声明文である。 共産党はコミンテルンの指導を受け、天皇制の打倒を目指していた。しかし佐野と

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連載小説「ミス・サンシャイン」#10|吉田修一

【前号まで】 昭和の大女優・和楽京子こと石田鈴の元でアルバイトをする岡田一心は、交際していた桃田真希との失恋から立ち直れずにいた。そんな折、一心は、鈴が戦後五十年の節目で行われたインタビューで、幼なじみの林佳乃子とともに長崎で被爆した体験を明かしていたことを知った。 ★前回の話を読む。 ★最初から読む。

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マンガ『大地の子』第28話 密告|原作・山崎豊子

第28話 密告 ★前回の話を読む。 ★次の話を読む。 ★最初から読む。 原作:山崎豊子 大正13(1924) 年、大阪市に生れる。京都女子大学国文科卒業、毎日新聞大阪本社に入社。昭和 32 年、生家の昆布商を題材にした処女長篇「暖簾」を書下し刊行。翌 33 年、「花のれん」で第 39 回直木賞受賞。同年退社、執筆に専念。主な著書に『白い巨塔』『不毛地帯』『二つの祖国』『大地の子』『沈まぬ太陽』など。平成 3 年に第 39 回菊池寛賞、 21 年に『運命の人』で第 63 回毎

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ハコウマに乗って|なつのけはい|西川美和

なつのけはい都内在住8歳の甥が、スマホ越しに『ズッコケ3人組』を音読してくれる。 「すごい早いから、聞いてて」 まるで見習い落語家の「じゅげむじゅげむ」。早口すぎて内容も面白さもさっぱりだ。こんな朗読じゃ先生にも褒められないだろう。あくびを噛み殺しつつしみじみ思う。正月も大型連休も親族で集まれなかったけど、無双のネット回線がある。電話代の無駄だからもうやめなさい、と言わなくていい時代。豊かなものだ。 「だけどそんなスピードで読んだんじゃすぐ読む本がなくなるでしょ」 「

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【オンラインイベントレポート】継承される創業者精神—「経営」の原点と「成長」の源流を辿って—【文藝春秋 リーダーズフォーラム 2021】

2021年4月28日(水)、文藝春秋が主催する『文藝春秋 リーダーズフォーラム 2021』『継承される創業者精神  ~「経営」の原点と「成長」の源流を辿って~』がオンラインで開催された。登壇したのは、その卓越した経営手腕で〝リゾート再生請負人〟と呼ばれる星野リゾート代表・星野佳路氏と、事業拡大・事業継承において関係者全員が幸せになる〝友好的M&A〟を日本に根付かせようと努力を続けているM&Aキャピタルパートナーズ代表取締役社長の中村悟氏。1500人を超える視聴申し込みがあった

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囲碁棋士・一力遼——「宿命」を背負った二足の草鞋

「宿命」を背負いながら、二冠を手にした男の肖像。/文・北野新太(報知新聞記者) <summary> ▶︎2021年の囲碁界は動乱期を迎えている。王者が頂点に君臨し続ける中、次代の旗手たちも勃興している。21歳の芝野が王座、23歳の許家元が十段、そして23歳の一力が碁聖、天元の二冠を持つ ▶︎一力は東北地方のブロック紙である河北新報社の東京支社編集部に在籍し、現役の新聞記者として勤務する横顔を持つ ▶︎将棋界との最大の相違点は、国際棋戦が存在すること。中国、韓国との覇権争いに

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立花隆|二つの「空しさ」——『文藝春秋』での連載「日本再生」最終回

文・立花隆(評論家) 本稿は『文藝春秋』2019年5月号に掲載されたものです。立花さんは、長年にわたり『文藝春秋』の巻頭随筆で連載「日本再生」をお書きになってこられました。故人を偲び、連載の最終回を特別に掲載します。立花さんのご冥福を心からお祈りいたします。 長年にわたって続けてきた、この巻頭随筆を、今月号をもって終えることにした。 最終回、何について書くか迷ったが、二つの「空しさ」について書いておきたい。一つは、哲学の空しさについてであり、もう一つは、大英帝国の空しさ

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【対談】鈴木保奈美×有働由美子「自分をごまかすのはもうやめた」

news zeroメインキャスターの有働さんが“時代を作った人たち”の本音に迫る対談企画「有働由美子のマイフェアパーソン」。今回のゲストは、俳優の鈴木保奈美さんです。 鈴木さん(左)と有働さん(右) 「東京ラブストーリー」の頃よりも50代の今がもっと楽しい有働 あれっ、髪型変えました? インスタグラムを拝見していますが、ショートヘアのイメージのままでした。 鈴木 結べるようになってきて、今撮影中のドラマでもこの「ちょんちょこりん」ヘアでやっています。 有働 ちょんちょ

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ルクソール西岸「失われた黄金の町」|矢羽多万奈美

文・矢羽多万奈美(エジプト考古学者) この4月、エジプト南部のルクソール西岸で、古代の町が発見された。ルクソールは古代都市テーベと言われ、「古代都市テーベとその墓地遺跡」として世界遺産に登録されている。発見された町の東にはアメンヘテプ3世の葬祭殿(メムノンの巨像)があり、北西には黄金のマスクで知られるツタンカーメン王が今も眠る「王家の谷」がある。 発見したエジプト人考古学者チームの発表によると、この町が成立したのは約3500年前。日本でいえば縄文時代後期にあたる。エジプト

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ミスターが感じた「銅メダルの重み」|短期集中連載「長嶋茂雄と五輪の真実」最終回

短期集中連載「長嶋茂雄と五輪の真実」の最終回。悲願の金メダルではなかったが──。苦痛で一瞬、顔が歪んだ。/文・鷲田康(ジャーナリスト) ※第2回を読む。 エースを襲ったアクシデント 「思ったよりボールが(自分の身体の)内側に入って目を離してしまいました」 西武・松坂大輔はその瞬間をこう振り返った。 2004年8月17日。アテネ五輪野球の日本代表は、アテネ郊外にあるエリニコ・オリンピック・コンプレックス内のメイン球場で、金メダルへの最大のライバルとなるキューバとの試合を

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