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2023年3月の記事一覧

名門洋品店の友に捧ぐ くろすとしゆき

 ことし1月、長年の畏友である白井俊夫が、泉下の人となった。享年85。その名前を知る者は、相当なファッション通であろう。

王羲之はなぜ愛されるのか? 鍋島稲子

「これぞまさに書聖。こんな字が書きたい!」  2013年に東京国立博物館で開催した特別展「書聖 王羲之(おうぎし)」のスタッフとして名品に触れてはや10年、この春、東京国立博物館との連携企画20周年で、ふたたび王羲之の展覧会を実施することになりました。  彼の書は、ためつすがめつ眺めるたびにググッと引き込まれます。

感染症と人間の自由 山本太郎

 国内で感染が確認されて3年、政府は新型コロナウイルス感染症を5類へ移行することを決定した。この3年間、「感染症とは何か?」「それに対して医療は何ができるのか?」といったことを、医師として、研究者として考えてきた。  新型コロナウイルスがパンデミックを引き起こしたとき私たちが最も驚愕したのは、100年以上も前と変わらない「隔離」しか有効な対策がないという事実であった。各国は人々の行動を制限し、こぞって都市を封鎖。しかし感染拡大を止めることはできず、そうした対策に、多くの人が

門外不出の回顧録 橋本五郎

 私と尾山宏読売新聞論説副委員長が聞き手を務め、北村滋前国家安全保障局長が監修した『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社)が出版された。安倍政治の大きな特徴は「親安倍」と「反安倍」がくっきりと分かれているところにある。熱烈な安倍ファンの存在に加え、安倍さんの衝撃的な事件の記憶が生々しいだけに版を重ねるだろうとは思っていたが、予想をはるかに超える反響に驚いている。  安倍さんへのインタビューは首相を辞任した直後の2020年10月から翌年10月まで18回、36時間に及んだ。この間、

三浦しをん ゆびさきに魔法21

保阪正康 日本の「原爆開発」秘話 日本の地下水脈30

 戦後長らく「科学技術立国」として世界をリードしてきた日本の地位が、急激に凋落している。半導体に代表されるハイテク産業は欧米どころか中国・韓国の後塵を拝し、基礎研究の分野でも目立った業績が出てこない。海外の大学や研究機関への頭脳流出も進んでおり、今後日本からはノーベル賞受賞者が出なくなると危惧する科学者も少なくない。

西川美和 おめでとう ハコウマに乗って26

 地元に戻って近所を歩いていると、小学校の校門の脇に「おめでとう! バレーボール部・全国大会優勝」という横断幕が掲げられていた。人気(ひとけ)のない往来に立ち止まった私は「まさか」と呟いた。私はこのバレー部のOGだ。いや、「OG」だなんて大きな顔ができる立場ではない。万年補欠だったし、チームの寝首を掻くようにして裏切った過去があるのだ。

【本日開催!】話題の「小説『20160118』」、今後の展開は? 鈴木おさむ×新谷学「小説SMAPと芸能界とテレビの未来」ウェビナー

ご好評いただいていた、著名人が“生で本音”を語る「文藝春秋digitalウェビナー」は、その舞台を「文藝春秋 電子版」に移して、さらに充実しています。 本日4月13日には、放送作家の鈴木おさむさんをお迎えして、オンライン生番組「小説SMAPと芸能界とテレビの未来 編集長が聞く! 第2回」を配信します。 新番組「編集長が聞く!」の記念すべき第2回。文藝春秋編集長である新谷学がゲストをお迎えして、“生で本音”のトークをお送りします。 鈴木おさむさんが発表した「小説『2016

船橋洋一 ウクライナ戦争の勝ち方 新世界地政学139

 ウクライナ戦争は、1年経っても決着がつかない。ウクライナの国民の英雄的な戦いは同国東南部でのロシア軍の占領を半分以上、崩壊させたが、ロシアはさらに軍を動員、投入し、消耗戦、持久戦に持ち込む構えである。朝鮮戦争は1950年6月、北朝鮮の侵略で始まったが、休戦協定が結ばれたのは1953年7月、3年にわたる消耗戦だった。ソ連は戦争を長引かせることで米国、さらには中国を疲弊させようとした。

清武英利 パブリック・エネミーズ 記者は天国に行けない15

1 東京・秋葉原に本社を置く「日本農業新聞」は、日本唯一の日刊農業専門紙で、JA(農協)グループの機関紙として30万部近い部数を誇っている。  通称「日農(にちのう)」。専門紙といっても、従業員225人を擁し、内閣記者会や農林水産省の農政クラブなど33の記者クラブに記者を送り込む有力紙である。特に農水省では、記者の数でも情報量でも他紙を圧倒する存在だ。  あるとき、農政クラブで「次の首脳人事では無駄な競争を避け、不戦協定を結ぼうではないか」と一般紙記者から談合を求められた

北村滋 総聯+民団「統一計画」 外事警察秘録9

 朝鮮半島にルーツを持つ「在日コリアン」による2つの団体を、外事警察はそれぞれ全く異なる目で見てきた。北朝鮮の強い影響下にあり、破壊活動防止法(「破防法」)で調査対象団体に指定されている「在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)」については、人事や北朝鮮政権との関係性等をはじめとする動向を注視している。だが、警察庁外事課長だった私は2006年、在日韓国人のための団体で韓国政府との結びつきの強い「在日本大韓民国民団(民団)」で起きた当時の団長による朝鮮総聯への異常な接近と、それを阻止し

伊藤彰彦 逸脱者たちの未来──「歴史の闇」は「新しい倫理」に生まれ変わるか 仁義なきヤクザ映画史 最終回

 1980年代後半、バブル経済の隆盛とともにヤクザ社会は肥え太っていく。一方、東映ヤクザ映画は『極道の妻(おんな)たち』以外に新機軸を見つけられず、低迷した。そしてバブル崩壊後の92年に施行された「暴力団対策法」は、ヤクザ社会とヤクザ映画にともに決定的な打撃を与えた。  脚本家の笠原和夫は、ヤクザ映画を書かなくなった理由を、2002年に刊行された『昭和の劇 映画脚本家笠原和夫』(笠原和夫、荒井晴彦、絓秀実共著)でこう語っている。  現代劇として「経済ヤクザ」を描くなら、四

鹿島茂 菊池寛帝国が崩壊? 菊池寛 アンド・カンパニー16

 関東大震災から帝都東京が復興するスピードと合わせるように、菊池寛と「文藝春秋」は急速に立ち直った。大正13年4月号では発行部数2万部に達し、同年1月から4カ月分の利益総計1589円のうち700円を原稿料未払いの寄稿家に分配するという余裕まで生じた。  騎虎の勢いに乗った菊池寛は7月特別附録号の巻頭で「文藝講座」という新企画をぶち上げる。これは1カ月1円20銭なりの会費を納入すれば毎月2回講義録が配布され、6カ月で講義終了という形式の通信講座だった。大日本雄弁会講談社の講義

徳川家康を暴く 磯田道史× 徳川家広