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2019年11月の記事一覧

新天皇・雅子皇后の素顔「雅子皇后の『おもてなし』」

令和の時代、日本が「普遍主義の中の多文化共生」「普遍的価値と伝統文化の両立」というメッセージを国際社会へ発信する時、新天皇・雅子皇后のおふたりは、日本にとっての“最高のソフトパワー”となる――。/文・西川恵(ジャーナリスト) 上皇后から引き継がれたおもてなし 今年5月下旬、皇居前にあるパレスホテルに、色とりどりの花を見事にアレンジした花束が、都内の花屋から届けられた。ホテルの担当者は大事そうに受け取ると、それをスイートルームのある上階に運んだ。廊下の前で警備員がチェックする

赤坂太郎<政界インサイドレポート> 台風が狂わせた安倍の「解散」シナリオ

東京・赤坂は政界の奥座敷と呼ばれる。昼は永田町にいる政治家たちは、夜になると料亭が立ち並ぶ赤坂へと流れてくる。そこで垣間見えるのは、政治家たちの裏の顔だ。敏腕政治記者が表には出てこない政界裏情報を匿名で執筆する文藝春秋の名物コーナー。 被災地への対応に追われて思わぬ誤算。そして都内では不気味な蠢きが……「天皇陛下、バンザーイ!」  10月22日、天皇陛下が国の内外に即位を宣明する即位礼正殿の儀。180カ国を超える各国要人を前に、首相の安倍晋三はいつになく緊張した表情で、万

許永中の告白「イトマン事件の真実」〈過去の悪行から新ビジネスまで10時間語り尽くした〉

 今年夏、戦後最大の経済事件と呼ばれる「イトマン事件」で知られる許永中氏(72)が、自伝『海峡に立つ 泥と血の我が半生』を上梓した。許永中氏は現在、韓国のソウル在住。日韓関係が史上最悪といわれるタイミングでの出版となった。  実は、かねてから許永中氏は自伝出版の計画を『文藝春秋』のインタビューで明かしていた。日本と韓国という“2つの祖国”への想い、逮捕されるきっかけとなったあの事件の真相を10時間にわたって語った本誌独占インタビューを公開する。/聞き手・黒田勝弘(産経新聞ソウ

スターは楽し「ドウェイン・ジョンソン」――芝山幹郎

人外魔境を恐れぬ超人 あの姿を画面で見たときは、道頓堀名物〈かに道楽〉の看板が化けて、激しく動き出したのかと思った。 『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』(2001)の終盤、顔は人間で、肘から先と下半身が大きなサソリというスコーピオン・キングが、その奇怪きわまる姿で登場したときのことだ。サソリ男の迫力は、紅白歌合戦で巨大な電飾を身にまとった小林幸子の姿を超えていた。  私は仰天し、眼をみはった。サソリ男に扮していたのは、あのロック様ことザ・ロックだった。どうせ特撮だろう、

誤嚥性肺炎は「左向き寝」「歯磨き」「バナナ」で防げ!

肺炎は死亡数96,841人で5位、誤嚥性肺炎は35,788人で7位。「2つの肺炎」の死亡数を合計すると13万人を超える。どうやって防ぐか?/大谷義夫(池袋大谷クリニック院長) 取材・構成=長田昭二 約7割が自覚症状に乏しい  厚生労働省が発表した2017年の人口動態統計で明らかになったある変化が、医学界で話題になりました。11年の統計以降、日本人の死因は首位のがん、2位の心疾患に次ぐ第3位は「肺炎」でした。ところが、17年の統計では、1位と2位は変わらないものの、3位にはか

中曽根康弘の遺言「歴史認識、憲法改正……言い残しておきたいこと」【特別公開】

 11月29日朝、中曽根康弘元首相が亡くなりました。101歳でした。中曽根氏は1918年、群馬県生まれ。東大卒業後、旧内務省に入り、海軍主計少佐を経て、1947年に衆院に初当選。防衛大臣、通産大臣、自民党幹事長を歴任後、1982年に第71代内閣総理大臣に就任しました。中曽根政権は、戦後5番目に長い政権です。ロナルド・レーガン米大統領とは「ロン・ヤス」と呼び合う関係で、日米関係の良好化に貢献したことで知られています。  そんな中曽根氏が、『文藝春秋』(2015年9月号)で「大勲

細谷亮太さんのオヤジの話。

著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、細谷亮太さん(小児科医)です。 一番大切なのは 父(オヤジ)は明治が大正に変わって1月半ほど経った9月16日、山形県河北町で開業医の細谷喜三郎とゆきの長男として生まれる。明治17年生の祖父は医術開業試験に合格し20歳の若さで開業医になる。酒はだめだが女好きで花街に入りびたりだったようだ。祖母ゆきは2番目の妻だ。彼女は横浜の女学校を卒業した、田舎では珍らしい進歩的な女性だった。  2人の間に父、憲一が長男として誕生する。ぼ

おしっこの「色」と「出方」で分かる重大病のリスクとは?

おしっこの元は全身を循環する血液です。そこには様々な情報が詰まっている。/文・近藤幸尋(日本医科大学付属病院泌尿器科部長) 取材・構成=緑慎也 白く濁ったおしっこは 普段何も意識せずに、おしっこをしている方も多いかもしれませんが、実は、おしっこには病気のサインがたくさん含まれています。注目すべきポイントは大きく2つ。1つは「見た目」、そしてもう1つは「出方」です。 「見た目」とは色、濃さ、濁りといったおしっこ自体の特徴。「出方」とは、すんなり出るか、それとも時間がかかるの

澤地久枝さんのおふくろの話。

著名人が母親との思い出を回顧します。今回の語り手は、澤地久枝さん(作家)です。 言わなかった悔い 母は手さきの器用なひとだった。  そりかえる指を「まむし指」というが10本の指すべて「まむし指」で、指紋はすべてきれいに渦を巻いていた。  母の縫ったきものや洋服でわたしは育ち、就職後の20代もそうだった。  声のいい人だった、と思う。  1943年頃、戦争末期とは知らないまま、当時の満州で主食が配給になり、物資欠乏という実感が子ども心にもしみこんだ。御飯茶碗1杯以上の

脱水の恐ろしさ……水のがぶ飲みは「水中毒」にご用心!

水分の大量摂取が危険なのは、心不全や腎不全の患者さんだけではありません。健康な人でも、飲み方によっては危険な場合があります。/木村雄弘(慶應義塾大学医学部循環器内科特任講師) 脱水は夏だけに起きるものではない 晩秋に入り、空気の乾燥が気になる季節に入りました。  夏場に限らず、よくメディアが警告するのが「脱水」です。「高齢者は脱水になりやすいので、水をこまめに飲むべし」「汗をかいていなくても、水分補給は忘れずに」……おおむねこれは正しい指摘です。  人体の重量のうち約6

気象病を知っていますか? めまい、腰痛……その症状「天気痛」です。

愛知医科大学病院・痛みセンターの佐藤純客員教授は、天気痛の研究を始めて23年になる。愛知医大に日本初の「気象病外来・天気痛外来」を開設し、『天気痛』(光文社新書)などの著書ももつ、この分野の第一人者だ。/佐藤 純(愛知医科大学客員教授) 怠けているわけではない 雨が降ったり、台風や低気圧が近づいてくると、古傷が痛む、頭痛やリウマチがひどくなる、という話は古くからありました。でも、原因がよく分からず、諦めていた人も多いのではないでしょうか。 「気象病」という医学用語もありま

佐久間文子さんの「今月の必読書」…『セロトニン』

耐えられるレベルに保たれた絶望 出る前からベストセラーとなることが約束されているが、衝撃的な内容で毎度毎度、物議を醸し、フランスのみならず世界中の読者を困惑させる作家、ミシェル・ウエルベックの、2019年初めに出た最新作の邦訳が早くも刊行された。  前作『服従』は、2022年のフランスで、極右政党を選挙で破ってイスラーム政権が誕生するという、現実のその先を描く予言的な内容だった。『服従』は、シャルリー・エブド襲撃事件と同じ日に出版され、自身がイスラームを揶揄する発言をしてい

梯久美子さんの「今月の必読書」…『熱源』

読み手の心に静かな熱を生む あのブロニスワフ・ピウスツキを描く小説があらわれたとは! 本書の刊行を知ったとき、驚きと期待、そして、正直に言えばいくばくかの不安が心の中でせめぎあった。ブロニスワフは実在の人物で、帝政ロシア末期の1887年に皇帝暗殺未遂事件に連座し、政治犯としてサハリンに送られたポーランド人である。1905年に日本が日露戦争に勝利し、島の南半分を領有するまで、ロシアはこの島を流刑地にしていた。  ロシアによる同化政策で母語を話すことさえ禁じられて育ったブロニス

慢性的な頭痛の原因……脳の「過剰な興奮」が痛みを起こしている

頭痛は、ポピュラーな病気であるにもかかわらず、自分の頭痛の原因が何なのか、どうすれば予防できるのか、しっかり理解できている人はほとんどいない/文・清水俊彦(東京女子医科大学病院脳神経センター頭痛外来客員教授) 取材・構成=大場真代 ガマンは美徳? 日本人、特に女性の多くが悩んでいるという頭痛。日本には正確な統計はないが、片頭痛では約840万人、緊張型頭痛は約3,000万人と、実に日本人の5人に1人は頭痛持ちだと推定されている。  このように慢性的な頭痛に悩んでいる人は多い