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2020年6月の記事一覧

”東大女子”のそれから|#1 中野信子さん(脳科学者)

日本の大学の最高峰「東京大学」に初めて女子が入学したのは1946年のこと。それから74年――。本連載では、時代と共に歩んできた「東大卒の女性たち」の生き様に迫ります。第1回は、脳科学者の中野信子さん(1998年、工学部応用化学科卒業)にお話を伺います。/聞き手・秋山千佳(ジャーナリスト) 中野信子さん ――中野さんが東大を選んでよかったと思うことはありますか。 中野 面白い人たちに出会えたのが財産ですね。どうあがいても勝てない天才とか。自分の性格はおかしいと思っていたけ

連載小説「李王家の縁談」#7 |林真理子

【前号まで】 韓国併合から十一年経った大正十年(一九二一)。佐賀藩主の鍋島家から嫁いだ梨本宮伊都子妃には、方子という娘がいた。伊都子妃は奔走の末、韓国併合後に皇室に準ずる待遇を受けていた李王家の王世子、李垠と方子の婚約にこぎつけた。そして、一年の結婚の延期を経て方子は懐妊する。 ★前回の話を読む。  大正十年は、伊都子(いつこ)にとって大きな不幸と大きな幸せが訪れた年であった。  六月十八日に、鍋島の父、直大(なおひろ)が七十六歳の生涯を終えたのである。  最後の藩主

コロナ「検査・追跡・待機」で国民の不安を解消。これが最大の景気対策だ!

日本経済の未来は「不安感の払拭」にかかっている。政府の「基本的対処方針等諮問委員会」メンバーの経済学者が明かす、日本経済復活への道程とは。/文・小林慶一郎(東京財団政策研究所研究主幹) 小林氏 財政で支えなければ5月25日、全国で緊急事態宣言が解除されました。私は5月中旬から、政府の「基本的対処方針等諮問委員会」の一員として、他の3人の経済学者と共に解除の是非について議論に加わっています。私たち経済学者に求められているのは、会長の尾身茂先生をはじめとした感染症の専門家十数

土井善晴×コウケンテツ|「簡単」「ラク」でいい。みんなで楽しい食卓のつくり方

何を食べるか、ということにとらわれないで、自由に考えて、今あるものを食べる。なかったらないで食べなくてもいい、くらい気楽に考えればいい。「一汁一菜」こそ日本人の生活スタイルに根ざした「武器」だ。/土井善晴(料理研究家)×コウケンテツ(料理研究家) 大変なときに見えてくるもの土井 コウさんとこうしてちゃんとお話しするのは初めてですね。飛行場で1回、お会いしたかな。 コウ あとはNHKの番組で一度、ご一緒させていただきました。 土井 ああ、そうやった。 コウ 今回はズーム

アフター・コロナの世界 「強い社会」が国々の興亡を決する|船橋洋一

コロナ後の世界秩序はダイナミックに変化する。 米中対立は激化し、戦後冷戦の第二幕ではないかと思えるほどだ。そんな中、日本はどのような道を進めばいいのか。キーワードは「国民の当事者意識」だ。今こそ「国民安全保障国家」を目指せ!/文・船橋洋一(アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長) 舟橋氏 戦後冷戦の第2幕 コロナ・ウイルスをめぐる戦いは、戦争ではない。敵はウイルスである。ドイツのシュタインマイヤー大統領が国民向けのテレビ演説で述べたように「感染症の世界的拡大は戦争では

マンガ『大地の子』 第5話「友情」|原作・山崎豊子

第5話 友情 関所を抜け、なんとか義兄の家にたどり着いた一心たち。だが、学校では「小日本鬼子」と呼ばれ、周囲の子どもたちからいじめられる日々を送っていた。そんな時、かつて列車の中で知り合った少年・袁力本が転校してくる。一心と力本は友情をはぐくみ、唯一無二の親友となる。 ★前回の話を読む。 ★次の話を読む。 ★最初から読む。

リモートワーク、コロナアプリ……「デジタル革命」で日本は甦る|中西宏明・経団連会長

トラブル続きのテレビ会議、上手くいかないオンライン申請……コロナで進んだ「デジタル化」は、政府が1番遅れている。これがラストチャンスだ。安倍政権よ、もっと本気を出せ!/文・中西宏明(経団連会長) 経営より家事が性に合う昨年の5月にリンパ腫だと診断され、抗がん剤治療を続けていました。今では寛解しましたが、検査のため月に2回は病院に通う日々です。担当の先生とはもう長い付き合いになるので、ざっくばらんに世間話が出来るようになりました。新型コロナは高齢者や基礎疾患者がかかると致死率

デジタル独裁 VS. 東洋的人間主義 コロナ後の世界を制するのは?|小林喜光×山極壽一

コロナ禍は世界中のIT化を加速させた。だが、デジタル一辺倒では行きづまる。「人間らしさ」はもう一度見直されるはずだ。/小林喜光(三菱ケミカルHD会長)×山極壽一(京都大学総長) パンツ一丁で寝転んで授業を受けてもいい 小林 山極先生とは、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議の場で、毎週のように顔を合わせる機会がありましたが、オンラインでお話しするのは初めてですね。ここ2カ月、私のほうはほとんど自宅での生活で、ウェブ会議ばかり増えてやたら忙しいんですけれど、自分が話す番で

ブラックマヨネーズ・吉田敬 コロナで得たもの|特別寄稿「私とコロナの日々」

新型コロナウイルスは、世界の景色を一変させてしまいました。文藝春秋にゆかりのある執筆陣が、コロナ禍の日々をどう過ごしてきたかを綴ります。今回の筆者は、ブラックマヨネーズの吉田敬氏です。 大泣きした日僕達ブラックマヨネーズは、2003年頃から関西で忙しくなりだし、2005年のM-1優勝をきっかけに、翌年からは東京でもたくさんお仕事をいただき、おかげ様で現在でも多くのお仕事を頂戴しております。 本当に、ありがたい話です。 しかし、ここ数年、特にここ2年程、僕は休む事ばかりを

発案者が明かす「コロナLINE調査で見えたこと」|宮田裕章×有働由美子

news zeroメインキャスターの有働さんが“時代を作った人たち”の本音に迫る対談企画「有働由美子のマイフェアパーソン」。今回のゲストは慶應大学医学部教授の宮田裕章さんです。 〝銀髪〟の発案者が語る日本のコロナ対策の陥穽有働 宮田先生、初めまして。直接お会いしたことのない方とオンラインで対談させていただくのは初体験です。 宮田 光栄です(笑)。 有働 宮田さんは、通信アプリのLINEを活用した新型コロナ対策の全国調査を発案し、人々の膨大な健康データを集めて、厚労省クラ

黒田勝弘 韓国・文在寅政権を救った挙国一致の“コロナ自慢”|特別寄稿「 #コロナと日本人 」

トイレ後も手を洗わない、挨拶は固い握手、食事は大勢で同じ皿をつつく……これまでの生活習慣を一変させた“文化革命”でコロナ禍を乗り切った韓国。国民の気分の高揚を巧みに政治利用した文政権は絶対絶命の危機を脱した!/文・黒田勝弘(産経新聞ソウル駐在客員論説委員) 「挙国的体制」と「国難キャンペーン」 世界に拡散した中国発の新型コロナウイルスはまず韓国を直撃した。韓国での初確認は1月20日で、当初の感染者数は2月段階までは韓国が中国に次いで2位を占めていた。その後、イタリアやイラン

阿川佐和子 慣れる力|特別寄稿「 #コロナと日本人 」

新型コロナウイルスは、世界の景色を一変させてしまいました。文藝春秋にゆかりのある執筆陣が、コロナ禍の日々をどう過ごしてきたかを綴ります。今回の筆者は、阿川佐和子氏(作家・エッセイスト)です。 シャカリキ時間がなくなった 緊急事態宣言が解除されるとともに少しずつ仕事も動き始めた。リモート方式で継続させていたテレビや雑誌の対談を、いつから通常の直接対面型に戻そうか。延期になっていた地方での仕事や講演の日程をどのように再調整するか。担当者と探り合いながら一歩ずつ前進しているところ

ドキュメント 感染症「専門家会議」 国家の命運を託された3人の研究者

尾身茂、押谷仁、西浦博。これは、未知のウイルス、そして国民と政府を相手に奮闘した3人の男の「闘い」の記録である。この4カ月、いったい何が起こっていたのか。/文・広野真嗣(ノンフィクション作家) 「科学と政治」の境界で その男は「速足」である。 この4カ月、日本の新型コロナウイルス感染症対策の中心で動き続けたその男、東北大学大学院教授の押谷仁(61)は、山岳部に所属した学生時代は年間100日、今も50日は山に登ると言われる。健脚なのだ。 ようやくつかまえたのは5月21日、

落合陽一 ウィズコロナの世界に失われつつある質感や匂いや触覚を探している|特別寄稿「#コロナと日本人」

新型コロナウイルスは、世界の景色を一変させてしまいました。文藝春秋にゆかりのある執筆陣が、コロナ禍の日々をどう過ごしてきたかを綴ります。今回の筆者は、落合陽一氏(メディアアーティスト・筑波大学准教授)です。 写真/蜷川実花 幼子の僕が2020年に思っていたものとは違う風景を生きながら自然について考えている。自然の匂いは変わらないはずなのに、ウィズコロナの風景の中で人の持つ情念が乾いている気がする。夜の散歩が減ったせいか空気を感じながら歩くことも減ってしまった。 6月初旬