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2020年8月の記事一覧

英エコノミスト誌記者「イラン幽囚記」

2019年7月、ニコラス・ペルハムは、記者としては珍しくイランへの入国ビザを取得することに成功した。ところが出張を終え帰国しようとしていた当日、当局に拘束された。本稿は、拘束時の貴重な記録である。ニコラス・ペルハムは、英エコノミスト誌の中東特派員で、『神聖なる地――新イスラム主義』などの著書もある。/文・ニコラス・ペルハム(英エコノミスト誌中東特派員) 訳:近藤奈香 ペルハム氏 48時間の拘束を告げられた彼等が現れた時、私はホテルの会計をしている最中だった。7人組の集団は

ルポ・地方は消滅しない【最終回】 東京都豊島区雑司ヶ谷

地方自治ジャーナリストの葉上太郎さんが全国津々浦々を旅し、地元で力強く生きる人たちの姿をルポします。地方は決して消滅しない―― イラストレーション:溝川なつみ ミミズクの棲む異世界このところの再開発で高層ビル化が進む東京都豊島区の池袋。地上に目を下ろせば、ごみごみとした繁華街が広がり、5月に人口1400万人を超えた東京都らしい街だ。区の人口密度は日本一で、7月1日時点では2万2233人だった。 だが、繁華街に面した法明寺(ほうみようじ)の墓地の角を折れ、細い路地を抜ける

高齢化社会の救世主! 日本初の「介護弁護士」は変人か、英雄か

時代を切り拓く“異能”の人びとの物語「令和の開拓者たち」。今回登場するのは、 弁護士・外岡潤氏です。/文・長田昭二(ジャーナリスト) 6畳ワンルームの弁護士事務所東京・西新宿。都庁をはじめ高層ビルが林立するこの地区は、日本屈指のビジネス街だろう。しかし青梅街道を挟んだ北側には、車1台がようやく通れる道幅の路地が続き、昭和然とした住宅地が広がる。その只中にあるマンションの郵便受けに小さく掲げられているのが、「法律事務所おかげさま」の表札だ。 法律事務所というと、官庁街やビジ

突然の辞意表明で総裁選へ “ポスト安倍候補”5人は何を語っていたか

“ポスト安倍候補”5人の「ことば」コロナ禍のさなか、突然の幕引きだった。 安倍晋三首相は、28日午後5時に開いた記者会見で、体調問題を理由に辞任する意向を明らかにした。24日には、首相としての連続在任期間が歴代最長となったばかりだった。 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、永田町では、激務で安倍首相の持病の潰瘍性大腸炎が再発したのではないかと囁かれてきたが、その推察は的中していた。 安倍首相は会見で、自身の体調問題について「8月上旬に潰瘍性大腸炎の再発が確認された」と

“江戸の名君”上杉鷹山の「生活・医療支援」|磯田道史「感染症の日本史」

国際日本文化研究センター准教授・磯田道史の「感染症の日本史」第5弾。江戸時代のの「自粛」や「隔離」も、多大な経済的負担を伴った。そんな中、為政者たちはどんな手を打ったのだろうか。今回、紹介するのは「名君」と呼ばれた米沢藩・上杉鷹山の患者支援策である。 磯田氏 強毒化の余地を与えるな収束に向かっているように見えた新型コロナの流行が、ぶり返し、感染者が再び、増える傾向にあります。本連載では、初回から、歴史の教訓として「第2波・第3波の可能性」を警告しましたが、現実となり、残念

保阪正康『日本の地下水脈』|無自覚的帝国主義からの出発

昭和史研究家の保阪正康が、日本の近現代が歩んだ150年を再検証。歴史のあらゆる場面で顔を出す「地下水脈」を辿ることで、何が見えてくるのか。今回のテーマは「無自覚的帝国主義からの出発」。明治政府はいかにして帝国主義国家としての主体的意思をもつようになったのか?/構成:栗原俊雄(毎日新聞記者) 保阪氏 欧米列強とは異なるプロセス幕末から明治維新、大日本帝国憲法の制定に至る20余年間、どのような国家を建設するのかをめぐって熾烈な主導権争いが行われた。前回見たように、この期間には

赤江珠緒「コロナは“衣ばっかりのエビ天”でした」

news zeroメインキャスターの有働さんが“時代を作った人たち”の本音に迫る対談企画「有働由美子のマイフェアパーソン」。今回のゲストはフリーアナウンサーの赤江珠緒さんです。

武漢ロックダウン「邦人救出」15日間全記録|現地指揮官の手記

コロナが発生した中国・武漢からの邦人退避はどのように行われたのか。チャーター機の手配など現地オペレーションの指揮官が、緊迫の15日間を振り返った。/文・植野篤志(外務省国際協力局長・前中国特命全権公使) 天安門事件とSARSの経験 日本政府は1月下旬以降、中国湖北省武漢に計5便のチャーター機を飛ばし、828名の湖北省在住邦人と中国人等ご家族の帰国を実現させた。私は第1便から第4便までの運航を支援する「現地チーム(通称:Aチーム)」の責任者を務めたが、本稿はその活動記録である

塩野七生 壊れものにつきとりあつかい注意 日本人へ207

文・塩野七生(作家・在イタリア) 民主政(デモクラシー)とは、民主主義者を自認する人々によって壊されるもの、という想いをかみしめている今日この頃である。 第1は、私が住んでいるイタリアの現政府の、2年にわたっての迷走を見ながら。 第2は、そのイタリアも一員のEU全体の無機能を眺めながら。 古代ギリシアを書いた『ギリシア人の物語』の第1巻のサブタイトルは「民主政のはじまり」で、2巻目は「民主政の成熟と崩壊」としたのは、デモクラシーは古代のギリシアのアテネで生れ成熟し、そ

読売巨人軍オーナー特別寄稿|プロ野球、コロナと戦う

史上初のウェブ・オーナー会議による「無観客開幕」の決断。坂本、大城のPCR検査陽性と入院。6月19日の開幕戦。はじめて約4000人の観客を動員した7月10日……プロ野球がコロナと戦った半年の記録を綴った。/文・山口寿一(読売巨人軍オーナー) 山口氏 順調なキャンプが遠い昔のよう早春の宮崎には、巨人、ソフトバンク、オリックス、広島、西武とプロ野球の1軍5球団が集う。今年のキャンプ初日は週末と重なり、例年以上のにぎわいとなった。 宮崎市と日南市のキャンプ地には県外からもファ

死者65名 熊本豪雨災害は「脱ダム」ブームの人災だ!

今回氾濫した球磨川は日本三大急流の一つ。豪雨に見舞われれば、“暴れ川”になるのは当然だ。もし今、川辺川ダムが建設されていたら、ここまでの被害にならなかった。「脱ダム」ブームの罪を問う。/文・藤井聡(京都大学大学院教授) 藤井氏 「一種の人災」 「(川辺川)ダムの工事を着工する直前になって、知事が代わってダムをやめた。(熊本豪雨災害は)一種人災の面がある」 経団連の山内隆司副会長は、7月16日の記者会見で、強い口調でこう述べました。熊本県の蒲島郁夫知事が2008年にダム建

マンガ『大地の子』 第9話百里香|原作・山崎豊子

第9話 百里香羊飼いの労働に従事する一心は、ある日、同房の陳という男が脱走しようとする現場に居合わせてしまい、脱走幇助の罪に問われてしまう。厳しい取り調べを受ける中、『毛主席語録』の裏に平仮名を書いていたことがバレてしまった。「日本語の練習をしていた」とは口が裂けてもいけない一心がとった行動は……。 ★前回の話を読む。 ★次の話を読む。 ★最初から読む。

菅義偉官房長官、すべての疑問に答える

小池都知事との攻防、GoToキャンペーン批判、安倍総理との関係……コロナ対応では「菅外し」も囁かれた。安倍政権の屋台骨を支え続けてきた官房長官・菅義偉は、この間、何をしていたのか──あらゆる疑問をぶつけた。 観光は「地方創生の切り札」7月22日から、旅行代金を最大で35%補助する「Go Toトラベル」キャンペーンが始まりました。正直申し上げて、批判は多いです。おそらく皆さん、まだ新型コロナウイルスへの恐怖感がすごく強いのでしょう。無理もありません。ただ、専門家の先生方も仰っ

東京五輪は「簡素化」で開催を実現し、歴史の1ページに記される

2021年夏の開催まで1年を切った延期五輪。コロナの終息の見通しは立っていない。コロナ対策、追加負担、会場……はたしてどうするつもりなのか。オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の武藤敏郎事務総長にすべての疑問を聞いた。/取材&構成・塩田潮(ノンフィクション作家) 五輪史上の汚点になりうる ――7月15日、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は、来年7月に開催が延期となった夏季五輪東京大会について、オンライン記者会見で、「安全に開催するための複数の