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第52回「大宅壮一ノンフィクション賞」発表&選評

第52回「大宅壮一ノンフィクション賞」発表&選評

〈受賞作〉『女帝 小池百合子』 文藝春秋刊 石井妙子(いしいたえこ)  正賞 百万円 副賞 日本航空提供の国際線往復航空券 公益財団法人 日本文学振興会 選考経過第52回大宅壮一ノンフィクション賞選考委員会は5月13日に都内で開催されました。梯久美子、後藤正治、佐藤優、森健の四選考委員が出席(出口治明委員は欠席)し、討議の末、頭書のとおり受賞作が決定いたしました。 なお、受賞作以外の候補は以下の4作です。 片山夏子『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の 記

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佐藤優のベストセラーで読む日本の近現代史 『なぜ必敗の戦争を始めたのか―陸軍エリート将校反省会議』半藤一利編・解説

佐藤優のベストセラーで読む日本の近現代史 『なぜ必敗の戦争を始めたのか―陸軍エリート将校反省会議』半藤一利編・解説

日米首脳会談を地政学から読み解く 米国を公式訪問した菅義偉首相がワシントンで4月16日(日本時間17日)、ジョセフ・バイデン大統領と会談した。同日発表された共同声明では、国際秩序を一方的に変更しようとする中国を牽制する以下の内容が含まれた。 〈日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する。日米両国は、中国との率直な対話の重要性を認識するとともに、直接懸念

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武田徹の新書時評|異形の怪物の歴史

武田徹の新書時評|異形の怪物の歴史

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。 異形の怪物の歴史 サブカルに疎い人でもシリーズ完結作となる新作『シン・エヴァンゲリオン劇場版 :||』が公開され、話題を呼んでいる程度は知っているだろう。1995年にTVアニメとして最初の“エヴァ”が始まった時、敵キャラの“分かりにくさ”が鮮烈な印象を残した。それまでの特撮やアニメに登場する敵は人間と似た姿で、宇宙から来たはずなのに日本語を話したりするが、エヴァでは意志の有無どころか生物かどうかも不明な、

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角幡唯介さんの「今月の必読書」…『WAYFINDING 道を見つける力 人類はナビゲーションで進化した』

角幡唯介さんの「今月の必読書」…『WAYFINDING 道を見つける力 人類はナビゲーションで進化した』

移動は生きるためでなく人間の存在そのもの人類は太古より自然のなかで暮らし経験と知恵を獲得し、現在の肉体と精神をもつにいたった。ではその自然との関わりの始原には一体どのような経験があったのだろう。25年ほど探検をつづけて私が個人的に始原的行為と感じるのは次の2つだ。一つは狩猟、もう一つはナビゲーションである。 狩猟はわかりやすい。狩りは生きるために動物を殺生する行為であり、そこから人類の感性は形成され、神話が語られ、世界観や自然観が作られた。しかしナビゲーションがなぜ始原なの

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『福田和也コレクション1 本を読む、乱世を生きる』著者・福田和也さんインタビュー

『福田和也コレクション1 本を読む、乱世を生きる』著者・福田和也さんインタビュー

〈我ながらムチャクチャだと思わざるをえないくらい、イロイロなことを書きまくっている〉〈今は亡き『マルコポーロ』で連載中、齢70の愛読者の方から編集部に「この雑誌で酒のことばかりのコラムを書いている福田とかいうふざけた若造は、まさか『諸君!』でご活躍の福田先生と同一人物であるまいな」というお尋ねを戴いた〉(『グロテスクな日本語』あとがき) かつて自嘲気味にこう記していた文芸批評家の福田和也さん。昨年還暦を迎えたが、この30年、パンク音楽から書画骨董、保田與重郎から村上春樹まで

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角田光代さんの「今月の必読書」…『悪の芽』

角田光代さんの「今月の必読書」…『悪の芽』

無差別テロが照射する格差と“正義”のおそろしさ小説は衝撃的な事件からはじまる。日本最大級のコンベンションセンターでアニメの一大イベントが行われる日。長蛇の列を作るアニメファンたちに向けて、カートを押してあらわれた男が火炎瓶を投げ続ける。たまたまそこに居合わせた大学生、壮弥は思わずそれをスマートフォンで記録する。男は最後、自身に火をつけて自殺する。やがて無差別大量殺人を犯した男の身元があきらかになる。斎木均、41歳、無職。小学生のときにいじめに遭い、不登校になったことも報道され

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本郷恵子さんの「今月の必読書」…『恋する日本史』

本郷恵子さんの「今月の必読書」…『恋する日本史』

内親王の「悩ましい恋」は昔から!?「日本史」に「恋する」を冠するとは穏やかでない。わくわくしたり、切なかったりするだけでなく、悩み、こじらせ、恨むなど、恋は複雑だ。「愛は地球を救う」かもしれないが、恋は歴史を変えるだろうか? 日本史分野の老舗学術誌である『日本歴史』は、2020年の1月号に「恋する日本史」という特集企画を掲載した。この成果を学界・会員だけでなく、ひろく社会に発信しようという趣旨で編まれたのが、本書『恋する日本史』である。書籍化にあたっては、新たに執筆者を加え

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本上まなみさんが今月買った10冊の本

本上まなみさんが今月買った10冊の本

大切な“日常” 『グレゴワールと老書店主』は老人介護施設で働く18歳の青年グレゴワールが主人公。入居者の元へ配膳をする仕事中、3000冊もの蔵書に囲まれて暮らす老書店主と出会います。 母子家庭育ち、読書の習慣などなかった青年は、視力の衰えで読書が叶わなくなったという店主の話を聞き、朗読役を買って出ることに。 著者は朗読家で、本書が作家デビュー作とのこと。朗読作品の選び方、聞き手との距離の置き方や、文学を声で表現する極意を、老書店主に豊かに語らせるのです。〈人前で本を読むの

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片山杜秀さんの「今月の必読書」…『デヴィッド・ボウイ 無(ナシング)を歌った男』

片山杜秀さんの「今月の必読書」…『デヴィッド・ボウイ 無(ナシング)を歌った男』

孤独な少年の、帰る先なき、上昇と下降の永劫の循環運動男の子は宇宙に飛翔する。1人乗りの屹立したロケットで。フロイト主義で簡単に解釈できる、男の子の欲望の1960年代的かたちだ。61年にガガーリンが1人乗りのボストーク1号で宇宙に行き、69年には3人乗りだけれどアポロ11号が月面に到達した。 日本ではその時代に『ぼくのクレヨン』という童謡も生まれたっけ。「おひさまはあか、そらはあお」。そんな日に鼠色のロケットが発射される。乗り組むのは「ぼく」ひとり。「てをふるママはたちまちま

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『その扉をたたく音』著者・瀬尾まいこさんインタビュー

『その扉をたたく音』著者・瀬尾まいこさんインタビュー

瀬尾まいこさん 写真:内藤貞保 29歳、無職、ミュージシャンを夢見る宮路くんが物語の主人公だ。親からの仕送りで生活をしながら、日々無為に過ごしている。その彼が老人ホームを慰問し、介護士の渡部くんが吹くサックスを耳にして物語が始まる。 瀬尾まいこさんは、打ち合わせてから約3カ月という短期間でこの長編をほぼ書き上げた。「2019年の本屋大賞を受賞した直後で、大勢の人から誉められて気持ちがよかったのかも」と笑う。 老人ホームを舞台にしたのは、自身が中学校で働いていた時にた

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