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平松洋子さんの「今月の必読書」…『小池一子の現場』

アートをつうじ社会を揺さぶり続ける開拓者の足跡 日本には小池一子がいる。 時代を切り拓いてきた女性を挙げるとき、まず小池一子の名前は外せない。一貫してクリエイティブの現場を歩みながら、ジェンダーを超え、仕事のジャンルを超え、アートや言葉をつうじて社会そのものに影響を与え続けてきた…

中島岳志さんの「今月の必読書」…『駒形丸事件 インド太平洋世界とイギリス帝国』

「つながる歴史」を紡ぐことで事件の全貌を解明 1914年4月、日本船籍の「駒形丸」が香港を出港した。この船をチャーターしたのはグルディット・シンというインド人ビジネスマンで、香港から北米への移民希望者を移送する事業を企てた。途中、上海と門司と横浜で乗客を増やし、合計376人のインド人がカ…

『大阪』著者・岸政彦さんインタビュー

社会学者、作家として活躍する岸政彦さんと、作家の柴崎友香さんが、大阪について書いたエッセイが6篇ずつ収められている共著だ。 「この本は編集者の提案で生まれたのですが、ひとりは大阪に来た人、ひとりは大阪を出た人の組み合わせなのです」 1973年に大阪で生まれた柴崎さんは2005年に東京へ移…

原田マハさんの「今月の必読書」…『ファン・ゴッホの手紙 (Ⅰ)・(Ⅱ)』

選ばれた265通から浮かび上がる人間像 もしもゴッホが現代に生きていたら? 家族や友人に秒速でメールを連打する。心の中に浮かぶ言葉のままにツイッターでつぶやく。描き上がったばかりの絵を速攻でインスタにアップ。「いいね!」を数えてひとりでにやけ、いつしか世界的なインフルエンサーになっ…

森絵都さんが今月買った10冊の本

語られない記憶 時々、飲み会の席などで「自分の人生は小説になる。ネタにしてもいいよ」みたいなことを言われることがあるけれど、今のところネタにさせてもらったことはない。真なる小説の種は、人々が秘して語らない記憶の中にこそ潜んでいる気がする。 長編小説『十の輪をくぐる』は、病を機に意…

佐藤優のベストセラーで読む日本の近現代史 『人新世の「資本論」』斎藤幸平

新たな左派の理論的リーダーの誕生 わが国でも環境問題に対する関心が高まっている。コンビニやスーパーでのレジ袋が有料化され、エコバッグを持つ人が増えている。菅義偉首相は2050年の脱炭素化を宣言し、2020年12月25日に政府も「グリーン成長戦略」を発表した。 〈政府は25日、2050年の脱炭素化に…

武田徹の新書時評|戦後民主主義と今日の民主主義

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。 戦後民主主義と今日の民主主義 次々に難題に見舞われる日本社会では過去が刻々と風化してゆく。たとえば安保関連法制反対デモが国会前で展開された2015年、学生集団SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)が注目された…

佐藤優のベストセラーで読む日本の近現代史 『政治家の覚悟』菅義偉

コロナ禍があぶり出す各国の政治文化 1月16日に毎日新聞と社会調査研究センターが行った全国世論調査によると、菅義偉内閣の支持率は33%に下落した。2020年12月12日に行った前回調査では40%だったので、7ポイント下落した。不支持率は57%(前回49%)だった。他社の世論調査でも菅内閣の支持率は40…

三沢光晴が今も台湾のプロレスファンの心を掴んで離さない理由

台湾人作家・林育徳氏の一風かわった小説が、日本に上陸した。タイトルは『リングサイド』、触れ込みは「中華圏初のプロレス小説」である。書店に積まれるや、さっそく反響をよんだのは表紙である。鬼の形相で対戦相手にエルボーを打ち込んでいるプロレスラーが描かれている。エメラルドグリーンのロン…

武田徹の新書時評|専門家に委ねてはならない「原子力」

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。 専門家に委ねてはならない「原子力」 菅義偉首相は就任後の所信表明演説で2050年までに脱炭素社会を目指すと述べた。気になるのは実現の方法だ。経済活動の規模を維持しつつ炭素排出量を大幅に減らすには原発の利用が現状では…