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2020年4月の記事一覧

ルポ・地方は消滅しない 鹿児島県大崎町

地方自治ジャーナリストの葉上太郎さんが全国津々浦々を旅し、地元で力強く生きる人たちの姿をルポします。地方は決して消滅しない―― ルンルン気分でごみリサイクル率日本一 イラストレーション:溝川なつみ 菜の花の畑が見渡す限り続く。 鹿児島県大崎町は春爛漫(らんまん)だった。太平洋側の志布志(しぶし)湾に面した人口約13000人の町である。 畑の主、西﨑貞夫さん(87)が菜の花の栽培を始めたのは、7年前に妻を亡くしてからだ。それまでは夫婦でメロンを作っていたが、労力の要ら

連載小説「李王家の縁談」#5 |林真理子

【前号まで】 韓国併合から八年経った大正七年(一九一八)。佐賀藩主の鍋島家から嫁いだ梨本宮伊都子妃には、方子という娘がいた。伊都子妃は、迪宮(後の昭和天皇)の妃候補として、方子の従妹にあたる、良子女王の名前が挙がっていると知る。そこで伊都子は、韓国併合後に皇室に準ずる待遇を受けていた李王家の王世子、李垠に方子を嫁がせることを画策した。納采を終え、李垠と方子はぎこちないながらも婚約者として関係を育むのだった。 ★前回の話を読む。  一般の家庭でもそうであるが、婚約したとたん

「アンドロイド」はどこまで人に近づいたか|ロボット工学者の石黒浩・阪大教授に聞く

news zeroメインキャスターの有働さんが“時代を作った人たち”の本音に迫る対談企画「有働由美子のマイフェアパーソン」。今回のゲストは大阪大学大学院基礎工学研究科教授の石黒浩さんです。 有働ロイドの誕生はいつの日か⁉︎ロボット研究の第一人者が明かす「人間の不思議」有働 今日のゲストは石黒浩さん。先生はタレントのマツコ・デラックスさん、黒柳徹子さん、作家の夏目漱石など、人間そっくりの精巧なアンドロイドを作り続けているロボット研究の第一人者です。まず、ずっと気になっているこ

藤原正彦 どちらが恐い 古風堂々12

文・藤原正彦(作家・数学者) 私にとってコロナとは、小学校3年生の時に、父に連れられて行った東京天文台で見た、太陽の周りで輝く散乱光であった。父の旧制中学以来の友人である古畑正秋先生が、黒点やコロナを見せてくれたのである。コロナが100万度もあると聞いて驚いたのを覚えている。それが今や、コロナ、コロナと騒々しい。女房などはテレビがコロナと言い始めただけで辟易してチャンネルを回してしまう。 デマまでが飛びかっている。「武漢で働く日本人医師によると……」というデマメールが同級

家出したコトバ|サヘル・ローズ

文・サヘル・ローズ(女優・タレント) 言葉が一時停止している。こんな事は初めてに近い。私は小さい頃から声帯を使うよりも指先を動かし、大事な感情を心の心臓音として、文字の中へ宿していた。「書く」ということは「私そのもの」。それが出来なくなってきている。感情があるのにもかかわらず、それを生かすツールを失ってしまった。生まれ変わったら「コトバ」になりたいほどなのに、このままでは「コトバ」になれない。なんとか家出をしたコトバを探したい。 ある時、ふと鏡をみた瞬間に感じた。「あっ、

「黒川東京高検検事長“定年延長”の真実」安倍政権の思惑vs.検事総長の信念

何としてでも“政権の守護神”の異名をとる東京高検検事長の黒川弘務を「検事総長」の座に就かせたい首相と官房長官。人事案をめぐり、検察と官邸の熾烈な駆け引きは続いた。そして飛び出した“黒川定年延長”というウルトラC。圧力をかける官邸、検察としての信念を抱いてそれに抗う検事総長。果たして、この戦いはどうなるのか。/文・森功(ノンフィクション作家) 迷走する政府答弁宮内庁のホームページを開くと、「認証官任命式」という表示がある。こう説明している。 〈任免につき天皇の認証を必要とす

【現場医師からの報告】新型コロナ肺炎を好転させたある既存薬の「効果」

「新型コロナウイルス感染症」感染拡大にあたって、感染者の受け入れ施設として指定された病院のひとつが、神奈川県立足柄上病院である。ICD(インフェクションコントロールドクター)である岩渕敬介医師を中心に、急きょ感染症病棟担当のチームが編成され診療に当たることとなった。 神奈川県立足柄上病院は、20の診療科を持つ基幹病院。県内に8つある第2種感染症指定医療機関の1つでもあり、296床のうち6床が麻疹や結核など空気感染を起こす感染症に対応できる「陰圧病棟」内にあり、感染症病床とし

「韓国の秘密資金39憶ドルを『核開発』に使った」「金正恩には隠し子がいる」亡命北朝鮮幹部の爆弾証言!

今、北朝鮮内部で何が起きているのか。昨年2月、ベトナム・ハノイでの米ドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との直接会談が「ノーディール」に終わって以降、北朝鮮の非核化を巡る米朝間の実務協議の進展はない。この間、制裁は続き、昨年11月時点で、飢餓が深刻化しているという。また最近、金正恩の実妹、金与正第一副部長の存在感が増しており、韓国や米国への批判声明は彼女を通じて出されている。さらには新型コロナウイルスの蔓延を指摘する情報もある。 李正浩(リジョンホ)氏(

【新連載】マンガ「大地の子」|第1話|原作・山崎豊子

1987年5月号から1991年4月号まで月刊『文藝春秋』で連載された、作家・山崎豊子さんの小説「大地の子」が、ついにマンガ化します! 中国残留孤児として波乱万丈の人生を送る主人公・松本勝男の半生を通して終戦後の激動の時代を描いた名作が、2020年、コミックとして蘇ります。 2022年、日中国交正常化50周年を迎えます。両国の関係がさらなる成熟に向かうためにも、若い世代に過去の歴史を正確に知ってもらいたいと考え、この感動作をコミック化することにしました。「大地の子」は、中国

吉田類がコロナ自粛明けに絶対行きたい!東京「もつ焼き酒場」ベスト5

最強の酒のお供、もつ焼きはどんな時も〝大衆の味方〟です。コロナ禍が終息したら「まず酒場に行きたい」という吉田さん。自粛要請が明けたら必ず行きたいあの名店5つを特別に教えちゃいます。/文・吉田類(酒場詩人) 飲食店にエールを酒場詩人の吉田類です。新型コロナウイルスの影響で、酒場もまた大変な状況に陥っています。僕の馴染みの多くの店でも、客足が一段と途絶え、予約キャンセルが相次ぎました。夜の街は、どこも寂しくなってしまったようです。 吉田氏 2003年から続く、僕の冠番組「吉

徹底分析! 巣ごもり“消費パニック”の「勝ち組」「負け組」

スーパーで売れた商品はカップ麺、お米、日用紙製品。サービス業では旅行、宿泊、娯楽が大幅に売り上げを下げた一方、コンテンツ配信は急上昇。コロナ危機に日本人はどんな買い物をしたのか。消費行動・物価動向の専門家が徹底分析!/文・渡辺努(東京大学教授) 駆け込み需要の謎私は大学で経済学を教えていますが、そのかたわらでクレジットカードの購買記録やスーパー、ドラッグストアなどのPOSデータを集め、日々ウォッチしています。これらは、いわば「日本人のお買い物」のビッグデータ。その内容を分析

「むかわ竜」を発掘した気鋭の学者が見すえる日本の恐竜研究の未来

「恐竜研究の世界に『小林ブランド』がいつの間にか確立している」。日本の恐竜界のレジェンド“ダイナソー小林”はいかにしてつくられたのか?/文・安田峰俊(ルポライター) 世紀の大発見2013年9月、北海道勇払郡むかわ町では、北海道大学総合博物館准教授(肩書は当時)の小林快次(48)を中心とする大規模な化石発掘プロジェクトが開始されていた。 後にカムイサウルス・ジャポニクス(通称「むかわ竜」)と呼ばれる、全長約8m・体重約5tのハドロサウルス科の恐竜を掘り出すことになったのだ。

『全裸監督』原作者、「戒厳令下」の欲望の街を往く

コロナ禍でとりわけ打撃を受けたのは、ホテル業、飲食業、そして風俗業だ。感染が急速に拡大する中、こうした職業に就く人々はどうしているのだろうか。渋谷、池袋、新宿、上野……『全裸監督』原作者で作家の本橋信宏氏が、普段は賑わう東京の繁華街を訪ね歩いた。 コロナ禍にあえぐ繁華街 人妻はコロナを一気に飲み干した。 喉の蠕動(ぜんどう)とともにふくよかな胸の谷間にしっとり汗をかいている。 「今度の感染でイメージがわるくなって売上げががた落ちなんですって。少しでも助けてあげなくちゃ」

追悼・古井由吉「日本文学は精神的支柱を失った」|平野啓一郎

2月18日、古井由吉氏が肝細胞がんのため亡くなった。享年82。 古井氏は1937年、東京生まれ。7歳で東京大空襲を経験。60年、東京大学文学部ドイツ文学科卒。金沢大学、立教大学で教鞭をとる傍ら、ドイツ文学の翻訳に携わる。68年、30歳で処女作「木曜日に」を同人誌『白描』に発表。70年より作家業に専念し、翌年『杳子』で第64回芥川賞を受賞。社会的なイデオロギーから距離を置き、人間の内面を見つめた「内向の世代」の代表的な作家として確固たる地位を築く。86年、芥川賞の選考委員に就